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転送術士候補生II  作者: よのもり せいう
16/24

その16 実戦(Part. D)


「シャアアッ!!!」


数百年の恨みを晴らさんと、ガイア級の大ムカデが龍となった私に飛び掛かった。

轟音と激震が周囲に走り、周囲の草原が土色に削り取られる。

勇者の方は状況についてこられずに、土埃の中で佇んでいる。


「ルーシェ、これで私に向かって来なさいっ!傷はいくらでも治りますから―!」


「!?…はっ…はいっ!!」


ダウゼンの体を蘇生した際に理解した毒の成分。

これをエンチャントとして、ルーシェの剣に付与する。

旅の目的が1つ果たされた瞬間である。


対龍特別装備となった剣を取ると、彼も戦う理由を思い出す。


今回、ダウゼンに出会えたことは幸運だった。

当初は、この辺りに眠るガイアスタンピードの遺骸の回収のみを想定していた。

それができれば、彼の武器に対龍用のエンチャントができるし、私がこのように龍となって修行をつけてやれば、万々歳といった予定だったのだ。


しかし彼は数百年、ここでブロセルニルへの復讐の火を灯し続けていた。

その甲斐あってか、蘇生した体に意識を戻すことにも成功した。

ルーシェにとっては、彼の存在は大きな助力となるだろう。


…あとは目の前で腰を抜かしている教え子ですね。


「ハーミアさんは転移で避け続けなさい!ライトは援護をっ!!」


「ひいっ(>_<;)!!」


「聞いてないぞこんな修行っ-(ʘωʘ)!!」


私の声に、ムカデが首を振ると毒液が教え子たちの方にも飛び散る。

ライトを抱いて、慌ててその場から転移するハーミア。

散々追い回したせいか、回避が上手になりましたね。


「グワァアアアア!!」


「うおおおおおおっ!!―何っ!?」


「えいっ―!!」


ムカデの体を伝って隙を突き、こちらの懐へと武器を振るうルーシェ。

が、固い鱗に剣は弾かれ、そこへこちらからの追撃を受けそうになったところを、間一髪、転送術で助けられる。


「…本番にはハーミアさんはいませんよっ―!」


「は、はいっ―!!」


こうして猛特訓が始まった。

蘇生や治療を伴う休憩をはさんで、それは七晩行われた。



その16 終



ひとこと事項


・夜間警備のごまかし

 修行の間、ディアスは彼とルーシェに似せた精巧な2体のアンデッドを作成し、この夜間警備を行わせた。





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