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転送術士候補生II  作者: よのもり せいう
14/24

その14 復讐者(Part. D)


「おはようございます。」


「…どうも;」


ゴルトシュタットは西から日が昇るのか、目が覚めると夕方だった。

部屋を出ると、帰りがけのハーミアとライトに会った。

今日一日の彼女の行動を聞いて、頭が下がる。


「先生達は、ガイアスタンピードの居場所は分かったんですか?」


「ええ、それは。」


ちらりと横を向くと、肩に一匹の小鳥が止まる。

その愛らしさに一瞬ハーミアは心を開きそうになるものの…


「こやつらには正体を明かしても良いのか?」


「ええ、どうぞどうぞ。」


「えっ…( ºΔº 〣)」


突然言葉を発した様を見て、あっけにとられた後、すぐ身構えてしまう。

代わりに抱かれたライトが喋る。


「お前さん…何者じゃ?」


「お前さんとそう変わらんもんだと思うがね?」


にらみ合う喋るイヌウサギと、喋るトリ。

確かに喋れるようにしてあるあたりも、二人の存在は似ている。


「彼はダウゼン。数百年前、邪龍に敗れたガイアスタンピードの霊です。」


昨日、私達は坑道の警備をする傍ら、ガイアスタンピードの亡骸を探した。

とはいっても、闇雲に探したわけではなく、古い歴史書の記述に従った。

学園の誇る図書館、リブラ・リンデ様々の情報である。


そこには数百年前、若き邪龍ブロセルニルが突如ガイアスタンピード達を襲い、彼らのコロニーを壊滅させたという記述があった。

その地を辿ったことで、亡骸だけでなく、未だこの地に留まる彼を見つけたのだ。


「彼は死後、残された強い意志によって何物にも変ずることを拒み、自身をここに縛り付けていた霊です。とはいえ大分風化が進んでいますが、数百年が過ぎていますので、これだけでも残っていることは、すごいことです。」


「…前に戦ったブラウテューベンのアンデッドとは違うってことじゃな。」


フィーンの兵士達は、抜け殻となった遺骸を利用され、そこに僅かに残った生前の記憶のうち、戦闘に関する知識を買われて“戦え”と命令されていたにすぎない。

子犬の合いの手に、補足が捗る。


「…しかして早かれ遅かれ、魂もまた流転する。我が完全に消え去る前に、望みを果す機を得たことに感謝する。」


ダウゼンが難しく締めたので、始終難しそうな顔をしていた彼女はまた息を飲む。

これは死霊術基礎講義の補習が必要そうですね。

まあ、本人はそんなの不要だと嫌がりそうですが。


「まあ、そういうわけですから、ハーミアさんも今夜から修行をしましょうね!」


ひとまずは肩を叩いて、名目上の出張の理由を果たそうと考えた。



その14 終


 

ひとこと事項

 

・リブラ・リンデ(月沈む書庫)

スコラ・リンデに敷設されている学園図書館。学園の歴史に比例し、その蔵書量は凄まじく、貴重な魔術書や歴史書も多く所蔵されている。ただし、呪いがかかっていたり、本自身が魔物化しているような魔書も多く、それらは地下深くに納められているため、希望の書棚に辿り着くことがクエスト案件となることも珍しくない。


・ブラウテューベンのアンデッド

前作:転送術候補生 その16~19辺りをご参照ください。



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