その11 アイスと宝石(Part. L)
「わあ!宝石ソフトクリームだって(。☌ᴗ☌。)!」
「お前さん…夕飯前じゃろ(-ω-;)」
ハーミアの自由行動に同行すると、早速宝飾店が兼営する出店に引っ掛かった。
瞳の奥を宝石のように輝かせ、うずうずしている。
それからどの種類を注文するか、長い時間が過ぎる。
やっと1つ購入し、カップルに交ざってベンチに座って、一口ぺろり。
わっちも隣でおこぼれに預かる。
「ルビーアイス、おいしいね♪」
宝石の色だけ象った、ただのアイスにしか思えないが…まあ、暑い中ではうまい。
そういえば、いつか王都の宝石店の前でも、こんな風にしたことがあったか。
「…うむ、それより次は、どうするんじゃ?」
「まだ考えてないけど…」
「なら、地球儀石か天球儀石でも探さんか?」
「あ!いいね♪」
良案だと微笑む少女は、ペロッとアイスを食べきって、わっちを抱えて歩き出す。
地球儀石はこの星の海と陸を映したような青と緑が美しい。
天球儀石は夜空と星々を映したような深い青と金が美しい。
転送術士が好んで用いる石が、この街にあるかもしれない。
「どのお店が良いのかな…どこも綺麗だけど、全然分かんないや。でも―」
「…?」
「ライ君が一緒でよかったよ♪…二人だと、楽しいね!」
一瞬、彼女の腕にきゅっと小さく力が入るのが感ぜられた。
「…リンデ通りにもあったあの店はどうかや?系列店なら、ここで買ったとしても、王都の店でもメンテナンスを請け負ってくれるかもしれないじゃろ?」
「確かにっ!ライ君頭いいねっ♪」
途中ルーシェとすれ違ったりしながら、二人で宝石通りを巡って行けば、リンデ通りにも支店が存在する“ジェローム・フランツ”という店に辿り着いた。
店内には入荷したての天球儀石がいくつかあって、それらを見せてくれる。
主人はとても上客とは思えない小娘と犬一匹にも丁寧な対応だったのが印象的で、本人は気づいていないようだったが、彼女の魔力の質と相性の良い品も置いてあった。
「品質の割には良心的な価格じゃったな。」
「あはは;でも私には手が届かないよ;」
店から出ると、口々に石談義をしながら、残りの時間を過ごした。
その11 終
ひとこと事項
・宝石ソフトクリーム
宝石通りで売られているアイスクリーム。苺味のルビーやブルーベリー味のサファイヤ、バニラ味のダイヤモンド等、宝石の色を模したラインナップを揃えている。
・宝飾店ジェローム・フランツ
王都に本店を持つ、宝石商の一店舗。現当主はジェローム・フランツIV世。当商会では、この街の鉱山や工房から多くの商品を買い付け、王都に供給を行っている。
・いつかの王都での出来事
転送術士候補生 その11(前作) の場面です。
・天球儀石
ある来訪者の手記によれば、地球儀石は自身の故郷の世界では、クリソコーラやアズライトという名の宝石に類似しており、天球儀石はラピスラズリやソーダライトという宝石に似ているという。




