表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Door  作者: りくとん
1/27

プロローグ Door0

2017年6月 (金曜日)


ごくごく平和な世界でそれは突然起きた。

日本各地のあらゆる場所のドアが異世界に繋がった。

それは本当にあらゆる場所で家の玄関のドアやコンビニのトイレのドアなど至る所で、様々な人々が異世界の光景を目にすることとなった。

そして1人の高校生もまた異世界の景色を眺めていた。


ー異世界のドアが開く少し前ー


高校1年の芦屋蓮(あしやれん)は高校での授業を終え帰宅していた。

蓮には今家族の事で悩みがあった。蓮の家族は妹が2人と母親の4人で暮らしており、父親は2年前に亡くなっていた。

それ以来2年間母親は、朝から夜中まで働き続けそれでも家族の前では明るく振る舞っていて、蓮にはそれが2年間辛かった。

自分がもっと母親と妹達を支えなければと強く思い続けていた。

その思いはいつしか強くなりたい、大切な人を守る力が欲しいという願いになっていた。

そしていつもの様に家のドアを開けたが直ぐにその異変に気付いた。ドアの向こうにはいつもの玄関ではなく、濃い霧がかかった異様な場所があった。


「何だ、これ…どうなってんだ。」


家の中が全く見えない。自分には2人の妹がいるがこんなことするとはあまり思えないが、


「おい!凜どうなってんだこれは?」


妹の名前を呼びながら中に入った時、謎の違和感と共に自分は突如全く見知らぬ草原に立っていた。


「なん だ、何処だよ...ここ。」


いつもの家のドアを開いただけなのに何でこんなトコにいるんだ。

周りを見ても草原と山だけで家も無い、車も道路すらない。


そしてここの空を見た時に自分のいた世界ではないとすぐに気付いた。空には月の様な惑星が3つ、地球ではあり得ない大きさで見えていた。

空の異様な光景に圧倒されていて、自分の周りで起きている事に気づくのに遅れてしまった。

何かが歩く音に気づき振り向くとソレは6~7m程離れた所にいた。


身体の大きさは3m位で全身が毛で覆われており、まるでクマの様な感じで二本足で立ちこちらを睨んでいた。

見た目はほとんどクマなのだが1番違う所は爪だった。爪が異常な程伸びていて40~50cm位はあった。

恐怖と混乱が頭の中で入り混じり咄嗟に逃げる事しか出来なかった。

すぐさま後ろを向き全速力で走り出し、距離を開けていくが向こうもすぐに四つん這いになりながら追いかけてきた。

巨体ながらクマの様な生物はもの凄い速さで、軽く振り返りながらこのままでは追いつかれると思っていたが、ただひたすら全速力で走るしか出来なかった。


死にたくない!15年の短い人生で終わってしまいたくなかった。まだやりたい事は沢山ある。こんなところで死んだら母さんや妹はどうするんだ。


「くそ!何でだよ!何で!」


叫びながら前を見ると微かに人影が見えた。人に会えたという嬉しさもあったが今はそれどころではなかった。


「危ない!早く逃げて!」


それぐらいしか言えなかった。向こうは自分の言葉が聞き取れなかったのかこっちに近づいてきた。紅い鎧のようなものを着ていたが長い銀髪と体つきで女性だと分かった。


それは一瞬の出来事だった。声を掛ける前に自分とすれ違いながらとてつもない大きさの剣でクマの様な生物の首を跳ね飛ばしていた。足を止め振り返ると、クマは絶命していて女性は剣に着いた血を振り払っていた。



「怪我はないか?キミ。」


それが彼女との出会いと、この世界で初めて人と交わした言葉だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ