変態な先輩をダウンロードしていました〜何やら後輩が好きになってしまったようです〜
なんて偶然だろう。
南華麗高校。俺が昨年から通っている高校に中学の頃に仲の良かった後輩が来てるようだった。
とても嬉しかった。
でも、向こうも俺のことに気づいてるみたいで、俺に合わないようにどうにかして逃げてたけど、やっぱり学校という狭い空間ではばったり会ってしまう日が来てくれるようで、俺とは入学式以来二週間で対面するのだった。
「佐藤じゃん、ひーさー!」
「人違いです。俺は佐藤って名前じゃありませんし、あなたのような人も知りませんね」
「思っきし上履きに佐藤って書いてんじゃん。しかも名前被りを防ぐために『佐藤 悠』ってフルネームだし」
「これは遠い親戚にもらったお下がりです、名前は消し忘れました」
「じゃあ、お前の名前なんなんだよ?山田か?当麻か?柴田か?」
「堤三姉妹(1*)かよ!」
「そのツッコミ!やっぱり佐藤だよ、いや最初から顔みてわかってたけどさ」
「ち、違います!えーっと、俺は……半沢です!」
「直樹かよ(2*)やられたらやり返すかよ!界雅人かよ!チミはいつから日曜ドラマに出れるほどの俳優になっちゃったんですかー?」
「なんでもいいでしょうが!もう俺にかまわないでください、あなたとは絶交です!」
そう言ってその時は半沢(佐藤)は初対面という体にもかかわらず、俺に絶交を言い渡して逃げてしまった。
「えー……なんで避けるんだよ」
その日以来半沢(佐藤)は俺から身を隠すことはなくなったが、知らぬ、存ぜぬ、関わるな、巴投げの一点張りで俺は事あるごとに投げ飛ばされた。
青春がこんなにも痛みを伴うとは……
「はぁ…はぁ…もう、こないで、ください!」
「いってぇ、お前よく俺をなげとばせるな…」
「『ストーカー撃退術100戦!〜京都の女将美智子流〜』を読みましたからね…バッチコイ!」
「いやいや、そういうことじゃなくて、俺は一応先輩なんだけどなぁ」
「……うざ絡みしてくる先輩に払うべき経緯なんてものは持ち合わせていません」
「俺のこと……嫌い?」
「はっきり言って、嫌いです」
「わお、ストレート。今のは人類最速169㎞(3*)を超えるほどの豪速球だぜ」
「お褒めに預かり光栄です」
「もうちょっと遅めにしてくれねえもんかね。俺が打てるのは100㎞までなんでさ」
「あなた野球部でしたっけ?」
「いんやぁ?文芸部兼アニ研部兼軍式格闘術部だったけど」
「最後の物騒な部活なんなんすか」
「俺ストーカー多いからさ」
「奇遇ですねー、俺も絶賛追われてますよ」
「誰に?」
「てめえにだよ、ビ×チ」
「やだなぁー、俺たち運命の赤い糸で結ばれてるんだからしょうがないだろ///」
「その糸であんたの首絞めてやろうか……」
「……なぁ、本当に俺のこと嫌い?」
「しつこいですね、嫌われますよ、てか嫌いです」
「ま、俺納豆系男子だからねー」
「何ですかその草食系やら肉食系に混じった腐食系ジャンルは」
「そんなら、佐藤……じゃなかった半沢は何系なんだ?」
「え、俺?」
「そう、チミ」
「そのチミってやつちょっとイラってきますね……何でしょう、あんたに襲われないようにしてきたので……ウニ系とか?」
「ユーも大概ネーミングセンス皆無だねえ、サハラ砂漠みたいだ」
「ユーやめろ、別に何系とかっていうのは他人から見たものでそもそも自分で決めるものじゃ……」
「オーケー、ウニねウニ……今度会う時はそんなトゲトゲのウニくんの中身をがっつり食わせてもらいますかな」
「は?意味がーー
「そろそろ俺帰りまーす、乙カレー、カツカレー、ヒレカツ華麗なる一族(4*)〜」
「そうやって、いつもあんたはマイペースで、人の話を聞かなくて……」
「あららん?半沢くんいじけてんの?」
「帰れ!この生臭坊主!」
「ツンデレだなあ、そこがまたいい……俺はいつまでもお前のことが好きだよー、アイラブユー、恋のダンスサイト」
「変態!猿!クソ金髪!」
「ヘイヘーイ。あー、そうそう知ってる佐藤?」
「なんすか、いきなり」
「ウニのあの黄色い身ってね」
「?はい」
「精巣なんだって〜、じゃまたね!」
「いらん知識寄越すなぁぁあ!淫乱ドアホ!」
「ね?俺の気苦労分かる?」
「一方的に追っかけてただけじゃないですか」
「いやいや、毎回毎回、教室で廊下で食堂で、俺は背中から投げられて痛いのなんのよ」
「痛いならその変態性を少しは自重する努力をして下さい」
「俺から変態を抜いたら、天才と神が与えしルックスしか残らんよ」
「空っぽの頭とナルシズムしか残らないの間違いですね……そういえば、あの後どうやって仲直りしたんでしたっけ?」
「してないよ、毎日投げられつつ会話して、距離感を元に戻してっただけ……あとは最後の一押しにこのイベントに一緒に参加してもらうことだったかな」
「え……まさか、これも先輩の作戦のうちですか!?」
「そうだよ、結局万々歳の大団円。無事俺は宣言通りウニの中身をがっつり食えた訳だしね」
「ウニの中身?なんの話ですか?」
「あ、忘れちゃった?」
「そういえば、そんな話があったような……」
「あー!忘れてるならいいの、いいの!むしろ忘れて!」
「…………!」
「げっ……」
「あはは★センパーイ……俺ちょっと先離れてても大丈夫ですかぁ?」
「どうしたんだい、佐藤ちゃん……?」
「さっき気になるものがあったので、買ってこようかと思ったんですよね〜」
「そ、それは一体?」
「『SM調教術100戦〜京都の二代目女将真知子流〜』です」
「……佐藤ちゃん、奇遇だなぁ。俺もそういうのには熟知してんだぁ」
「え?」
「そんなに知りたいなら、今夜教えてあげるけど?」
「え?いや、遠慮しときます…」
「今夜が楽しみだなぁ!何しよっかなぁ!」
「やめ、やめろ!」
「え?聞こえないなぁ!あーちょっと、夜に向けて下準備しないとなあー!」
「引っ張るな!何を、なにをする気だこの性欲ウサギ!」
「はいはーい、10分だけトイレ休憩入りますー、すいませんねー」
「いや!おろせ!」
「そんなハードなものから始めないから、まずはこのピンクの丸いの入れてみようねぇ」
「ひえっ!準備がよすぎるぞお前!」
「もちのろん、アランドロン。どんなタイミングでもやれることはやれるようにしてるからね。24時間営業〜」
「嫌すぎるセブン○レブンか!」
「711と言うよりは801なんだけどね」
「昨日は俺が攻めだったろが!」
「俺リバいけるから。後視聴者サービス」
「配信するなんて聞いてない!」
夏コミではウニとインド人とのイチャコラをテーマにしたblが初参加にして大盛況。中身もさながら、並んでる間に見れる若い二人組の痴話喧嘩が貴腐人らの心を痛めたらしく、ツブヤイターでは写真付きの尊いコールが盛んに行われていた。
翌日の朝、佐藤は腰を痛め、手首に絞め痕が付いているところを同級生に目撃されたが……どうやら寝違えたのと、ミサンガの痕だったらしい。
信ぴょう性はない。
ネタ解説
1*)trick、SPEC、ケイゾクの主人公3人の総称。映画化までしている。
2*)やられたらやり返す……100倍返しだ!のフレーズで有名な日曜ドラマ、【半沢直樹】。
3*)人類最速はアルディス・チャップマン