8/18
戸惑い
少女は、扉に問いかける。
『あの男の子は、私を外の世界に連れていってくれる。でも、そうしたら君のそばにいられなくなるの?』
壊れた扉が今の少女には、冷たく感じられた。
いつもはあたたかいのに。
まるで、何かを失ってしまったみたいだと思えて、急に怖くなった。
『お別れ?』
扉から、声が聞こえた。
少女は、首を必死で振った。
なきじゃくりながら、扉にすがりつくようにして、自分の中の感情を押しだした。
『大丈夫。僕は君が好きだよ』
壊れた扉は、温かく少女を包もうとしている。
少女は、その温かさに身を寄せた。
壊れた扉は、少年が来てから徐々にぼろぼろになっていっているのは一目瞭然だった。
少女は、どうしてこうなってしまっているんだろう、と考えると怖くて。
意識をしないように頭の隅に追いやって、涙をこぼし、扉にありがとうとつぶやいた。
『君だけは、失いたくないよ』
少女の声に、扉は、嬉しそうに笑ってくれているような気がして。
少女は、安堵の息をもらしながら、大好きだよ、と返した。




