募る想い
少年は、少女のために、いろいろな食べものをもってきた。
少女は、はじめて目にするものを喜んで食べてくれる。
少年には、そんな少女の様子が、ただ嬉しくて。
もっと、喜ばせてあげたいと思うようになるのは自然なことだった。
『無理して、もってこなくてもいいんだよ?』
少女は、こんなに毎日用意するのは、大変だろう、と不安そうな色を浮かべていたが、少年は、大丈夫だよ、と強がるようなふりもなく返した。
『俺の家、野菜とか、果物を作っててさ。形悪いやつとかもらってきてるだけだから』
手伝いのついでにもらってるんだ、とほこらしげにいう少年に、少女は、すごいね、と感嘆の声を漏らした。
とはいえ、少年も少女に会うまえは家の手伝いを進んでしたいとは思わなかった。
少女の笑顔のために、いいところを見せたいと思うようになっていたのだ。
『なあ、そろそろ外。出てみたくないか?』
そして、それに合わせて少女を外に連れだしたいという思いも日に日に大きくなっていた。
少年には、少女がここにとらわれ続けている理由がわからなかった。
『もう、出てもいいんじゃないか?』
しかし、少女からは、何も返ってこない。
少女は、ただ、寂しげな顔をして、壊れた扉をみるだけ。
『俺は、おまえと外に行きたい。おまえに外の世界を見せてあげたいんだ』
少女は、一瞬何かを言いたげに口を開こうとして、首を振った。
少年は、今日も無理かもしれない、とおとなしく帰ることにした。
あせることはない、きっといつかは自分と外に出てくれる。
少年はそう信じることにした。




