16/18
番外2
とはいえ、そこにいるのは、そういった人だけではなく。
宿となった上の階には、いろいろなお客さんが来ていた。
『僕には、どうでもいいけどね』
しかし、少女は、そんなにぎやかな声に憧れを抱いていた。
いつか、外の世界に行きたいと願う彼女。
僕も、そうだ、と強く言いたかった。
できるなら、君と、どこまでも行きたいと。
けれど、壊れた扉の声は届かない。
君には、届かない。
そんなある日、少女の眠れない夜。
壊れた扉の声が、初めて少女に届いた。
壊れた扉には、それが嬉しくてしょうがなかった。
見守る幸せ以上のものを手に入れることができたのだから。
壊れた扉は、少女に外の世界の話をした。
空の話、海の話。
昔は王子さまだった壊れた扉にとって、見ていた世界は小さなころのものだったけれど。
それを喜んで聞いてくれる少女の姿は、愛おしいものだった。
『君とした約束。僕は絶対に忘れたりなんかしないよ』
君と外に行く。
君がそう望んでいるなら、僕も、そうしたい。
君の笑顔と幸せのために。




