番外1
少女は、物心ついた時から、壊れた扉のそばにいた。
誰もいない扉と少女だけの世界。
『僕が、君を幸せにしてあげる』
そこにいるのは、少女の幸せを願う壊れた扉。
どんな時だって二人は一緒だった。
扉は、ずっと少女を見ていた。
扉の世界は、少女だけだった。
『僕が、壊れた扉になったのは、悪い魔法使いに、呪いをかけられたから』
幼い王子さまだった扉は、呪いでその姿を変えられ、扉として生きていた。
少女に作られた牢に取り付けられ、少女が来た頃に、元あった扉から、壊れた扉に替えられた。
『僕は、その子を見た時に、一瞬で恋に落ちた。でも、ことは簡単じゃなかった』
唯一彼にわかっていたのは、彼女が外に出たいと思った時、自分がその呪いを解かれるということ。
しかし、彼女に自分の言葉を伝えることもできない。
できるのは、優しく少女を見守ることだけだった。
『だから、僕はずっと君のそばにいることにした。何があっても』
たまに大人がやってきて、少女に、足枷をつけたり、服を着替えさせたり、牢を掃除していく様子が見られたが、壊れた扉は、おとなしくしていた。
あくまでも業務を義務的にこなす人々。
どこかうんざりする光景。
しかし、そこに少女がいるなら、壊れた扉には、それだけで幸せだった。
自分にできるのは、少女のそばにいることだけだったから。




