バルゴさんの乙女心
「いいじゃない!少しぐらい!」
「俺はバルゴの事を考えて言ってるんだ」
「私の事考えてるなら少しは止めてくれないかしら!?」
「気付いてからじゃ遅いから、こうやって前もって言っているんだぞ!分かってるのか!?」
「分かってるわよ!私は大丈夫!何で毎回毎回私の後を着いてくるの?!止めてよ!私は私のしたい事をしてるだけよ!」
仕事から帰って来ると、獅子座のレオさんと乙女座のバルゴが言い争っていた。
「どうしたの?」
ベットに座って見ていた双子座のゲミニさんと牡羊座のアリエスさんに話を聞いた。
「琴羽ちゃん、バルゴがまた一人で出掛けてる所をレオに見つかったんです。後をつけてたみたいですけど、バルゴすぐに気付いて逃げたらしいんです」
「こんなに怒るバルゴもレオも初めてで、怖くて。琴羽ちゃん、どうしよう?」
アリエスさんが詳しく説明してくれた。聞く限りではバルゴもレオさんも悪いと思うけど、レオさんは心配で言ってる事だから、どちらかと言うとバルゴが悪いのかな?
レオさんは前々から言っていた。「一人で出掛けるのは駄目」って。それを無視してバルゴは一人で出掛けた。しかも今回3回目でレオさんもとうとう本気で怒った。見る限りそんな感じだろう。
そんな怒っている二人にゲミニさんは泣いてしまっている。“男の娘”とはゲミニさんの為にあるのか、怖くて泣いているゲミニさんに私の心はキュンキュンしてる。
私は小さく息を吐く。
「バルゴもレオさんもいい加減にしてください!近所迷惑です!」
私の突然の言葉に見ていたアリエスさんとゲミニさんはもちろん、言い争っていたバルゴとレオさんま目を丸くして私を見る。
「バルゴ、レオさんはバルゴの事を心配して言ってるんだよ?レオさん言ってたよ?一人で歩いてる所を狙われて連れ去られるかも、って。バルゴが一人で出掛けるのは私も心配、出来ればもう一人連れて出掛けたら?どうしても一人で出掛けたいのなら誰かに出掛ける事を伝えるとか、帰って来る時間を言っとくとか、ね?」
優しい声でバルゴに話しかける。すると、バルゴは俯いてしまい、返事を聞くことは出来なかった。
「琴羽、これは私達の問題だ。琴羽が口を挟むな」
「だったら何でここで言い争っていたんですか?この言い争いがどんな原因でも、レオさん達の問題って言うなら、わざわざここでやらないですよね?普通だったレオさん達の家に帰りますよね?」
レオさんが言った言葉に私は食いぎみに問い質した。
「家に戻ると、バルゴはすぐに逃げ出す。だから、今回は帰らずにここで説教しようとしたんだ。家に戻って説教すると、カンケルが泣き出すしな」
ここで説教してた理由を聞く。
「説教っていうより言い争いにしか見えないんですけど?」
「そんな事はない!」
「――っ、何よー!結局、レオは私の事なんて少しも心配してなかったの?!心配してないなら、後つけて来ないでよ!」
「違う!!俺はバルゴが心配で――バルゴッ!」
玄関からバルゴが駆けて出ていってしまった。外は小降りだが、雨が降っていた。ワンピース姿のバルゴはすぐに風邪を引いてしまう。
バルゴの後を追い掛けようとしたレオさんの腕を掴んで引き留める。
「放せ、バルゴが風邪引いてしまう」
「バルゴを追い掛けて行くとレオさんも引いてしまいますよ?」
「俺の事はどうだっていいんだ!」
「私が行きますから、レオさんはベランダで頭でも冷やしていたらどうですか?アリエスとゲミニさん、レオさんを絶対家から出さないで下さいね?」
それだけ言うと、玄関を飛び出した。