十五夜
今日は十五夜。天気は曇り。
仕事帰りに100円ショップで花瓶と食器を買う。
お供えする食べ物はもう決まっている。近所の人が育てていたゴボウとニンジンと白菜と大根を貰い、けんちん汁を作る。うどんは買った。それから栗。近所の人が拾ったのを少しだけお裾分けしてもらった。これは既に料理されているから、食器に盛り付けするだけ。それから梨。家から少し歩いた所に小さく店を開いている人から無料で貰った。
帰り道にススキがあるのを見つけた。そこから2、3本取る。近所の人もいて、ススキを取る最中だった。
「こんばんは、山口さん」
「あら、こんばんは~、琴羽ちゃんもお月見のススキ取りに来たの?」
「無断で取っても良いんですか?」
「良いのよ~、その為にあるようなもんだから」
笑いながら言う山口さんは取り終えたのか戻ろうとしている。
「あ、琴羽ちゃんの分も取る?」
「あ、大丈夫です。早く帰ってあげないとお孫さん泣いちゃいますよ」
私がそういうと、山口さんは慌てたように帰っていった。私も早く帰る為、急いでススキを取る。
「ただいま~」
「お帰りなさ~い!」
「お帰りー、?」
私が帰ると牡牛座のウルさんと天秤座のリブラさんがいた。ウルさんはゲームをしてるのかテレビを見ているのか、出迎えには来なかったが、リブラさんは出迎えに来てくれた。そんなリブラさんは、私が持っているススキを凝視しながら頭にハテナマークを浮かしている。
「琴羽、それ、何?」
「これはススキっていう植物ですよ」
「何で、そんなの持ってんの?」
「今日使うからです」
リブラさんと話していると、ウルさんが覗いてきた。
「なぁに?それ」
「ススキっていう植物です」
私が教えると、ウルさんは「ふ~ん」と言って、ススキを凝視しだした。それを無視しながら買ってきた花瓶に水を半分まで入れてススキを立てる。それをベランダの手前に置く。
網戸のすると、涼しい風が入ってくる。
「今日はお月見っていう行事なんです。えっと、お月さまに今年取れた作物の感謝をしたり、豊作の祈願をするんです。こうやって満月の見える所に置いてありがとー、ってやるんです」
身ぶり手振りで黄道12宮の皆に行事の事を話す。皆は、私の話に口を挟むことなく最後まで聞いてくれた。
「へぇ~、素敵な行事ね」
「フン、そんな行事を知った所で何だ。別に普通だろ」
「コラ、駄目でしょ!琴羽が折角、私達の為に教えてくれたのよ?せめてお礼言わなきゃ!」
「ふふ、そうだな、感謝する琴羽」
「ありがとー琴羽ちゃん!」
「ありがとー琴羽」
「ありがとう、琴羽」
「ありがとうございます!琴羽ちゃん!」
「ありがと~」
「琴羽、ありがとー!」
「琴羽ちゃん!ありがとう!」
「ありがとうございます、琴羽」
「ありがとう、琴羽ちゃん」
タリウスさんから感謝の言葉を受け取る。それが火種になり、他の皆が一斉に感謝の言葉を言う。
「ありがとうね、琴羽」
ピスキスさんが言う。
「ほら、レオも!」
「…感謝する」
「聞こえたー?」
「いーや?レオ!」
「~っ、感謝する!」
皆に弄られているレオさんを見るのは楽しい。本人の前では言えないだろうけど。
「いえ!私がしたかったので!」
レオさんを弄っている皆に、私は笑顔で言った。
その後、皆でうどんを食べた。うどんの事は知っていたけど、けんちん汁は知らなかった。皆、美味しいと言いながら完食してくれたのが、凄く嬉しい。
タリウスさんは、「お月見について詳しく教えてくれ」と言ってきたので、ばあちゃんから聞いた事、知っている限りの事を教えてあげた。タリウスさんは、それを聞きながらメモを取っていた。