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皆の笑顔




 ゲームセンターの音は未だに大きく、いつもより声も大きくなる。

「プリクラっていうのは、写真を撮って、それにデコレーションをしていく機械です。 友達とか、恋人とかと取るのが定番何ですけど、出来れば皆さんと撮りたいなぁと思いまして」

 少しでも黄道12宮の皆さんがいた証を残しておきたい私。


 恥ずかしさもあって、少し俯いてしまったが答えは案外と簡単で

「ああ、いいぞ」

 レオさんの言葉に呆気にとられてしまう。

「面白そうじゃん!ね、タリウス」

「ああ、俺もゲミニ達も楽しめそうだ」

 私が笑った所で、ようやくカンケル達が話を終えてこちらに尋ねてきた。

「なになに? 琴羽何話してたの?」

「この後、皆でここに来た証に写真を撮ろうっ話してたんだよ」

「しゃしん?」

 カンケルは、「いつも琴羽が撮ってるよね?」と首を傾げる。ゲミニやアクアも同じく首を傾げるのをみて、またもや笑った。


 ウルさんがカンケル達に説明をするのを微笑ましく見てた。

「琴羽、皆でなのだろう?だったら他のピスキス達を呼ばねばならないが……」

「ああ、それなら私がここに来る前に皆に会いましたよ」

 タリウスさんは既に探しに行ったのか、見当たらなかった。


 他の皆をどこで見かけたかをレオさんに話すと、レオさんは頭――耳の裏辺りに小指の先を当て、遠くを見だした。

「……レオさん?」

 どこを見ているのかとレオさんの視線を追ってみると、ゲームセンターの奥、バルゴ達が楽しんでいるであろう音ゲームコーナーの方だった。

「えっと?」

「今は話しかけても無駄だよ」

 私より背の高いウルさんが顔を覗き込んできた。

「ウルさん、レオさんは何してるんですか?」

「交信してるの」

 こうしん?

「こうしんって……」

「通信みたいなやつだよー」

 ウルさんは普段のユルユルとした雰囲気のままに答えた。

「私達はね、大体の居場所が分ければああやって交信出来るんだぁ~」

 ファンタジー要素が凄いな。

「……さすが黄道12宮ですね」

「んふ、琴羽に褒められちゃった~」

 ウルさんはカンケル達に羨ましがられた。

 レオさんの交信してる姿を見てカッコいいと思ってしまった。私もやってみたい。



 10分後、キッズコーナーの前に皆で集まる。

「琴羽、面白そうなのあるならもっと先に教えてちょうだいよ」

 何故かバルゴさんがソワソワしていた。

「そうソワソワするなバルゴ」

 苦笑いで謝ると、タリウスさんがバルゴを注意する。

 今日初めて2人が隣に並んだ気がした。バルゴとタリウスさんが羽織っている革ジャンがカップルを醸し出す。

「ちょっと歩いた所にプリクラコーナーがあるんで行ってみましょう」

 私を先頭にプリクラコーナーへ向かう。他の客にぶつからないように歩きながら、周りのゲーム機に目を丸くして見ている。


 プリクラコーナーには、殆ど女子しかおらず、何台もあるプリクラ機が作動しているようだ。

「……どうします?プリクラコーナーにある機種か、すぐそこにあるプリクラ機か」

 プリクラコーナーには入っていないプリクラ機も何台かあり、プリクラコーナーの手前に設置されている。

「広さ的にはプリクラコーナーにある機種より、そっちに置かれてるプリクラ機の方が少し広いですけど」

「広さがあった方が皆も入りやすいだろう」

 タリウスさんの意見に反対する人は居なかった。


 プリクラコーナーの前だからか、人通りは激しいが、皆が無事入り込めた。

「おい、何だこの緑色は!」

「以外と狭いわね」

「カンケル、大丈夫?」

「ダイジョブ~」

「あれ、ゲミニどこ?」

「ここだよー、リブラ~」

「ちょっ、と!」

「ごめんっ、変なとこ触ったっ」

「おい、アクア大丈夫か」

「うん、なんとかギリギリー」

「スコルー、髪の毛少し解けてるわよ」

「えっ。あ、ありがとうバルゴ」

 なんだかんだありそうだが、大丈夫だろう。

「美肌モードでいいですよね?」

 百円玉を4枚入れて、カメラの下にある画面をタッチする。



 皆を宥めながら、別々のポーズで6枚の写真を撮った。隣に設けてある落書きコーナーには、私とバルゴがペンをもってデコレーションを施していく。

 後ろにはカンケルを抱き抱えるウルさんと、リコルを抱き抱えるピスキスさんが画面を覗き込んでいる。

「琴羽、これなんてどうかしら?」

「あははっ、バルゴいいじゃん! レオさん可愛い」

「でしょ~?」

「レオ、猫ちゃんだ~!可愛いね、ウル!」

「そうだね~。きっとレオが見たら恥ずかしがりそう」

 たった今、レオさんに猫耳と猫顔スタンプを押され、可愛らしく変身した。

 私は、カテゴリーからペンを選び、ネオンカラーで1人1人に名前を書いていく。

「名前とかも書けるのね」

「そうですよ~、ピスキスさんは青で、リコルはオレンジかな?」

「そうね、リコルはオレンジ色好きだものね」

「うん、琴羽ありがと!」

 いえいえ~。と言いながら、私は撮った日付を忘れないようにスタンプを押した。



 ゲームセンターを後にし、4人分のプリントシールを見ながら皆でワイワイする。

「おい、俺の顔が猫みたいになってるじゃないか!」

「可愛いわよ、レオ」

「そうだぞ、俺よりいいじゃないか」

「タリウス、カッコいい~!」

「タリウス、サングラスなんて掛けてたっけ?」

「アクア、落書きだよ」

「ひげ……?」

「これも落書きだね」

 猫顔スタンプと猫耳スタンプに興奮してるレオさんや、サングラスと髭のスタンプでよりダンディになってるタリウスさん。

 はっきり言って、超楽しい。


 

 約1時間ゲームセンターにいた私達は、その後ワタのお土産として、おもちゃやおやつを買ったり、私に合う服を皆で見定めたりととても充実した買い物を楽しんだ。



 家に帰る頃には、日も傾き始めていて、薄暗いなか帰路に着いた。

「ワター、お土産だよー」

 寂しかったのか、玄関先にちょこんと座っていたワタ。玄関を開けた瞬間に歩み寄ってきたワタに買ったばかりのおもちゃを与える。

 部屋に入ると、黄道12宮の皆はベッドに腰掛けたり、ベッドに寄り掛かるように座っている。

「ワタ? おもちゃだよー、遊んでいいんだよー」

 鞄と上着をベッドに置いた私は、買ったばかりのワタのおもちゃが床に転がっているのを発見する。

「んふふ、ワタは少し怖がってるのかも」

「ワター、こうやって遊ぶんだよー」

 バルゴとリコルが見本としておもちゃで遊び始める。ビクッとしたワタだったが、それでもバルゴとリコルを見つめるワタ。

 少しして、おもちゃに手を伸ばすワタ。見守っていた私達は、見合わせて笑う。


 夜は簡単に済まそうと、冷凍食品を温める。

「あら、今日は質素ね」

「うん。疲れたし、作りおきもないしね」

 ピスキスさんが苦笑する。

「ごめんなさいね、疲れさせちゃったかしら」

「疲れたけど、楽しかったから大丈夫ですよ」

 今日の買い物は大満足だった。

 ショッピングモールを出る前に、休憩と称してフードコートにてアイスを手に談笑もしたし、本当に楽しかった。


 私が食べてる間に、子供体型組が今日ゲームセンターで手にいれた物を手に取る。

「見てー琴羽! このウサギ可愛いでしょー!」

 最初に見せてきたのはリコルとカンケルだった。

「ホントだー。ウサギさん可愛いねー」

 リコルとカンケルは見合わせて笑うと、ウサギのぬいぐるみを差し出してきた。

「琴羽にはこれね! カンケルがピンクで、リコルが白!」

 お揃いなんだよー。と話すカンケルとリコル。渡されたのは茶色のウサギだった。

 一瞬だけポカンとしてしまったが、カンケルの持ってるピンクのウサギと、リコルの持ってる白のウサギを見ていると嬉しさが後から出てきた。

「んふふ。ありがとうカンケル、リコル」

「うん!!」

 カンケルとリコルの声が重なり、大きな返事が帰ってきた。



 その後も、「お揃いだ」と言って子供体型組からぬいぐるみやらキーホルダーやらを貰った。

 いつもより早くに食べ終えた私は、食器を水に浸したまま、プリクラを切る。

「これ、本当にシールになってるの?」

「なってるよー」

「どこにでも貼れるの?」

「貼れるよー」

「本当に貰っていいの?」

「いいんだよー」

 ピスキスさん、バルゴ、ウルさんからの質問に簡単に答えながら、丁寧に1枚1枚を切っていく。

「ンフフ、楽しかったね~」

「そうだね」

「リブラ、目ぇデカッ!」

「アクアも目デカいよ」

「なんか、レオとかタリウスは目が大きくて違和感しかないね」

「それを言うな」

 アリエスさん、スコルさん、アクア、リブラさん、ゲミニ、タリウスさんの会話を聞きながら最後の1枚まで切り終わる。


 レオさんがまだ一言も喋らずに他の皆を微笑ましそうに見守っている。

「1人1枚づつ好きなの手にとってください」

 皆に見やすいように並べていると、カンケルやゲミニなどの子供体型組が手を伸ばしてきた。

 黄道12宮の皆が1枚づつ手にしてもテーブルの上には残り半分が残っている。

「えっと、もう1枚づつ好きな取っていいですよ」

「それだと琴羽の分が無くなるだろう」

 馬鹿か。とレオさんが呆れる。帰ってきてようやくレオさんの声を聞いた気がする。

「残りは琴羽が持っていればいいだろう。俺達は1枚持っていればそれでいい」

 レオさんは周りの皆に同意を求めるように見合せる。

「そうね。レオの言うとおり、琴羽が残りを持っておきなさい」

 バルゴがテーブルに置かれた残りのプリクラを差し出してきた。

 手にしたプリクラを見る視界の隅で、レオさんの笑顔が見えた気がした。



 お風呂に入ると同時に、黄道12宮の皆は帰っていき、部屋には私とおもちゃで遊んでいるワタだけになる。

「ワタ、もうご飯はいいの?」

 本の少しばかり残っていたワタのご飯を片してから、お風呂場に向かう。ワタの短い鳴き声が聞こえた。



 髪を乾かしながら、残ったプリクラを手帳に貼っていく。

「ホントだ、レオさんとタリウスさんの目が……」

 違和感しかない大きな目。思わず笑ってしまうと、ワタが寄ってきた。ジャンプしてテーブルに乗ってきたと思ったら、私の手元に顔をスリスリと擦り付けてきた。

「擽ったいよ~」

 そのまま頭を撫でてあげると大人しくその場に座る。

 再び作業に戻りながら皆の笑顔を見ていく。

「……楽しかったなぁ」

 ワタが短く鳴く。

「ほら見てー、レオさんとタリウスさんの大きな目。面白いでしょ~」

 ワタに見せるが、ワタにとっては“なんのこっちゃ”と思うだろう。


 全てを貼り終えると、今日の思い出が蘇る。

 何故だか、涙に目が溜まる。泣くような思い出ではないはずなのに、涙目になってしまった私。

 寝間着の袖で濡れた目を拭いて手帳を閉じる。

「ワター、寝ますよー」

 ベッドに横になると、ワタも乗ってきて枕元で丸くなる。

「あはっ、ワタ、もー。またこっちで寝るのー?」

 ワタと目が合うと、んにゃ~と鳴く。

「はいはい、寝ましょうね」

 横になった私は、ワタの頭を撫でながら目を閉じる。

 また、皆で買い物できるかな。




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