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皆で楽しく




 子供体型組の次は大人体型組。

「次は私達ね!」

「俺が勝つ!」

「私だって負けないよ!」

「私だって沢山力をつけたのよ!」

「僕負けそう…」

「リブラ、やってみないと分からないぞ?」

 大人体型組はリブラさん以外勝つ気満々のようだ。 

 水上君は子供体型組に混ざって観戦していくようだ。水上君はアリエスとゲミニと手を繋いでいて、友達になれたようで満面の笑みを私に向けていた。



「準備運動はもう大丈夫ですか?」

 怠そうに準備運動していたリブラさんを待って大人体型組に尋ねる。

「私は大丈夫よ!」

「いつでも行ける!」

「カンケル~っ、頑張るよ~!」

「私もバッチリ!」

「負ける気しかしない…」

「勝つ気で行けば勝てるかもしれないぞ?」

 最後のリブラさんとタリウスさんのやり取りを見ながら、土俵を整える。



 第1試合――レオさん対タリウスさん。

「はっけよーいっのこった!」

 子供体型組とは違い、ぶつかり合う音が大きい。お互いの大きい手が服を掴みあっていて、土俵の真ん中で押し合いを始める。

 レオさんもタリウスさんも力は五分五分で、どちらが勝つか分からない。

 同じ態勢のまま30秒程経った頃にタリウスさんが仕掛け始める。服を握っていた手を強く握り治してレオさんの体を持ち上げようと踏ん張る。タリウスさんの作戦に気付いたレオさんは足に力を入れてそれを阻止する。

 タリウスさんがバランスを崩したのをチャンスにレオさんが背負い投げでタリウスさんの体を地面に押し付けた。

「勝負あり!」

 ドンッと大きな音で地面に落ちたタリウスさんは土を払う。レオさんもタリウスさんの服に付いた土を叩き落とすと、タリウスさんに手を差し出した。

 握手をする2人の息は少し荒れていた。


「レオすごーいっ!おっきいタリウスの体をダァンってやったーっ!」

 土俵の外ではカンケルがレオさんの事を尊敬の眼差しで見つめる。ゲミニと水上君もレオさんがやった技を見様見まねでやっている。

「大丈夫ー?タリウス、服に土いっぱい」

「あぁ問題ない、土が付いてるだけで怪我してないから安心しろ」

 タリウスさんの側に駆け寄ったピスキスさんが心配そうに服の土を落とす。

「タリウスー痛くないのー?ダァンってなったよ?」

「心配ないぞアクア、ちゃんと受け身も取ったし、レオも加減してくれたからな」

 そんな風には見えませんでしたけど。



 第2試合――バルゴ対ピスキスさん。

「負けないよ!」

「私もよ!」

 土俵に手を付けたのを確認した私が土俵に上がる。

「行きますっ!はっけよーいっのこったっ!」

 パァンという音が響いたと思ったらバルゴが土俵にうつ伏せに倒れた。

「え」

「琴羽!審判!」

「しょ、勝負あり!」

 私も何がどうなったのか分からなかった。

「ピスキスさん、何したの?」

 バルゴ自身も分からないようで頭にハテナを浮かべてピスキスさんを見つめる。

「体をぶつけてすぐに後ろに引いたのよ」

「…ダァァッ、悔しーっ」

 納得した私とバルゴだったが、土俵の外では皆がポカーンとしていた。

「凄い作戦思い付いたね、ピスキスさん」

「ふふっ、凄いでしょ」

 ピスキスさんはピースサインを私に向けると、バルゴといっしょに土俵を出た。


「パァンってなっただけなのに、いつの間にかバルゴが寝てたよ!凄いね!」

「ね!始まったと思ったらすぐにピスキスが勝った!」

「あんな事も出来るんだ!相撲楽しいっ!」

「騙し討ちってやつ?」

 カンケルとゲミニ、アクアと水上君の4人は興奮している。相撲の楽しさを分かってもらえて嬉しい反面、無邪気な皆には騙し討ちという技を覚えてほしくないと思った。


「ごめんなさいねバルゴ、怪我ないかしら?」

「大丈夫よ、土が少し付いただけね」

「ピスキスも凄い技を思い付いたな」

「ふふっ、それ琴羽にも言われたわ」

「騙し討ちか、次の試合で生かせるといいな」

 試合で戦ったピスキスさんとバルゴは気まずくなってないかと心配したが、問題はなさそうだった。呆気にとられたタリウスさんとレオさんも、ピスキスさんの作戦に絶賛する。


「お~いっ、連れてきたぞー」

 声の主は花形のおじいちゃんだった。花形のおじいちゃんの後ろには見知らぬ人が4人。

「うちの四天王呼んできよった」

 ワハハと笑う花形のおじいちゃん。四天王と呼ばれた人達を見る。私が会釈すると、四天王と人達も返してくれた。

「朝日川のみっちゃんと、錦のあっくんと、八幡のひっちゃんと、相模原のりょっちゃん」

 花形のおじいちゃんがワハハと笑いながら1人1人を紹介していく。四天王とは言っていたが、中でも1番強いのは誰なのだろう。

「よろしく~っ」

「楽しそうだなぁ」

「久しぶりだね~」

「今回も俺が1番だな」

 四天王の人達は土俵に上がり始めていたリブラさんとウルさんの見ながら楽しそうに笑っていた。



 第3試合――リブラさん対ウルさん。

「なんか、緊張する…」

「ねーっ!あの人達って相撲強い人達なんでしょ?緊張するーっ!」

 顔面蒼白なリブラさんに対して、凄く楽しそうに笑うウルさん。対照的だ。

「行きますよっ!はっけよーいっのこった!」

 ウルさんがリブラさんの服を掴む。顔をぶつけないように横を向きながらリブラさんも腕を伸ばす。慌ててるのか、リブラさんの手は一向に服を掴む事が出来ない。服を掴めた時にはウルさんの力によって土俵際まで押し寄せられる。

「足で踏ん張れーっ!」

「足に力を入れろ!」

 このまま押し出しでウルさんの勝ちかと思ったら、土俵の外から四天王の2人がリブラさんにアドバイスを出す。

 リブラさんは足に力を入れてるのか、土俵際の勝負は続く。少しするとウルさんの押す力が弱まったのか、取り組んでいる2人の位置が真ん中に戻る。

「にいちゃんっ!騙すんだ!」

 四天王の――確か、錦のあっくんて人が大きく叫んだ。錦のあっくんの声に先に動いたのはリブラさんだった。リブラさんが後ろに大きく引いたと思ったら、ウルさんが前のめりに倒れた。

「勝負あり!」

 砂埃が舞う中、リブラさんの顔は汗を滴ながらも笑顔だった。


「あ~ん、負けたぁ~」

 砂埃に咳をしながら立ち上がったウルさんは少し話涙目だった。悔しさからなのか、砂埃のせいなのか、どちらかは分からない。

「惜しかったわね」

「うん、もう少し力があれば勝てたと思うんだけど…」

「でも凄いじゃない!私なんかすぐに負けたのよ?」

「アハハッ、そうだね!負けちゃったのは嫌だったけど、」

 負けたウルさんを励ますように話すピスキスさんとバルゴ。バルゴの自虐的な言葉に笑って吹っ切れるウルさん。

「でも楽しかったからっ!」

 ウルさんの笑顔に、気になっていた私もホッと一息吐いた。


「汗をそのままにしておくと風邪引くぞ」

「あ、レオありがと」

「いやーっ、よく頑張ったよにいちゃん!」

「あそこで足踏ん張ってなかったら負けてたぜ?」

「有難い御言葉感謝します」

「デカイにいちゃんは堅いねー、いいっていいって」

 勝利したリブラさんにはレオさん、タリウスさん、それから四天王の人達が集まって話していた。隙間から見えたリブラさんの顔は少し困り顔のように見えた。


「レオさーん!ピスキスさーん!次やりますよーっ!」

「あ、はーい!」


 大人体型組、2回戦――レオさん対ピスキスさん。

「少し加減した方がいいのだろうか?」

「あら、余裕な態度取ってると痛い目見るわよ?」

 あ、ピスキスさん本気だ。

「ねえちゃーんっ、やったれー!」

「にいちゃんやったれーっ!男の威厳見せろー!」

 土俵の外では四天王の人達がガヤを入れる。それに答えるように笑顔を見せる2人。でも目が笑っていない。

「じゃっ、いきましょう。はっけよーいっのこった!」

 レオさんはピスキスさんの胸ぐらを掴む。そのままピスキスさんの土俵の外に出そうとしたが、ピスキスさんも反論をする。レオさんの頭を掴み、手に力の込める。

 何これ、相撲じゃないよ。

「レオー!頑張れー!」

「レオー!いけー!」

「頑張れ頑張れレーオッ!」

「右に払えレオ!」

「ピスキスー!頑張ってー!」

「ピスキスー!負けないでーっ!」

「いけいけピスキス!頑張れ頑張れピスキス!」

「ピスキス!避けて!レオなんか負かしちゃえー!」

 水上君や花形のおじいちゃん、四天王の人達や、他にもいるギャラリーがポカーンとしている。そんな中で応援しているのは黄道12宮だけ。


 相撲とは、相手を土俵の外に出すか、相手の体の一部を土俵につけるかで勝敗が決まる日本を代表する競技である。

 確かにまだ土俵の外には出てないし、体の一部を土俵にはつけてないが、幾らなんでもやり過ぎだ。

「ストップ!ストップストップ!」

 何度言っても止まってくれない2人。

「邪魔しないで!」

「止めるな!」

 2人が同時に反論してくる。それでも尚、取り組みの手は抜かないで、本気の勝負をしている。

「いや、止めますよ!こんなの相撲じゃないですって!」

「相撲じゃなくても、今回の勝負でこれからの地位が変わるのよ!」

「俺の位置は渡せない!!これからもお前らを守るんだ!」

「私だって!守られてばかりじゃ嫌よ!私だって、皆を守る事くらい、出来るん、だから!」

「ちょっと?!取り組みながら喋らないで!舌噛むよ?!」


 ほぼ力の押し付けあいだった。程無くして、先に力がなくなったのはピスキスさんだった。それまで真ん中に位置していた2人だったが、ピスキスさんの力がなくなった事で、ピスキスさんが土俵際まで押し寄せられた。レオさんも残りの力の使ってピスキスさんの腕を抱える。あっと思った時には、ピスキスさんの体は仰向けに倒れていた。

「しょ、勝負あり…」

 レオさんは第1試合でもやった背負い投げでピスキスさんに勝利した。


 レオさんの勝利に黄道12宮の男性陣側が盛り上がっている。唯一困った表情をしているのはリブラさんだけだ。

「流石レオー!」

「すごーい!またダァンってやったー」

「おいレオ、加減はしたのか?」

「ハッ、しまった…」

「ハァ、熱くなりすぎだレオ」

 タリウスさんの問いにドヤっていたレオさんは顔を歪ませた。タリウスさんが頭を抱えていた。苦労人だ。


 一方の女性陣では

「イタタ、負けちゃったぁ」

「そんなことより大丈夫?レオのやつ、加減してないように見えたんだけど」

「えぇ、一応受け身は取ったのだけど、打ち付けた所がちょっとね」

「琴羽ー!湿布使っていい?」

「いいよ!何処?」

「背中にお願い」

 ピスキスを皆で労っていた。


「いやぁ~凄かったな~」

 声をあげたのは四天王のひっちゃんだった。隣にいるりょっちゃんも頷いて同意している。

「相撲っていうか、柔道のようやったな」

 同意を求めるようにあっくんも口を開く。

「しっかし、あのねえちゃん凄い力があったんだな」

 びっくりだぜ、とみっちゃん。

 今までレオさんが中心になって事件解決などしたが、それが当たり前だと思っていた私はびっくりした。まさか勝敗で地位が変わるなんて。そして、ピスキスさんもレオさんもそれほどの思いがあった事を。



 大人体型組、決勝戦――レオさん対リブラさん。

「レオさん大丈夫ですか?」

「大丈夫だ」

「リブラさんも大丈夫?」

「あ、うん…」

 レオさんは連続の取り組みで消耗が激しい。その点ではリブラさんが有利だが、リブラさん自身は先程の試合で怖じ気づいてしまっている。

「では決勝戦始めます。はっけよーいっのこったっ!」

 リブラさんは少し受け身を取りながらも、レオさんの服をギュッと掴む。レオさんも気付いているようで、服を掴もうと腕を伸ばす。レオさんがリブラさんの服を掴むと同時にリブラさんがレオさんの体に飛び付く。私やレオさんは戸惑いながらも、取り組みを止めない。リブラさんの足はレオさんの腰に回っていて、離れようとしない。レオさんはリブラさんの服を引っ張るが、まるで降りたくない子供のようにしがみついている。

 飛び付いてとうするのかと思ったら、レオさんの体が前のめりに倒れ始める。どう思ったのか、咄嗟に手をついてしまうレオさん。

「勝負あり!」


 レオさんがリブラさんの頭を支えながら立ち上がると、リブラさんもレオさんから離れる。

「大人体型組、優勝者、リブラさんでーす!」

 黄道12宮の皆の他に、水上君に花形のおじいちゃん、四天王の人達にいつの間にか集まったギャラリー。皆が皆、リブラさんに拍手を送る。


「四天王さん達もやりますか?」

 私の言葉に四天王さん達はソワソワしだす。

「いいのかい?」

「いやー、やりたがってるの分かっちゃった?」

 四天王のみっちゃんとあっくんが土俵に上がると、集まっていたギャラリーが拍手や口笛を送る。


「いやぁしかし、琴羽ちゃんも面白い事考えたね~」

「アハハッ、はい!面白い事好きですからね!」

「琴羽ちゃん自身はやらなくていいのかい?」

「はい、見てるだけで十分です!」

「…そうか!」

 それに、『皆で楽しく』がモットーだからね。


 四天王さん達によるエキシビションマッチは盛大に盛り上がった。花形のおじいちゃんはリブラさんと取り組んで、ギリギリでリブラさんが勝った。

 皆が笑顔で終われて良かったと思う反面、ずっと皆と居たいという思いが出てきてしまった。このままずっと、時間が止まればいいのに――





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