ゲミニとスコル
「え?」
ゲミニとスコルは戸惑っている私の手を取ってグリーンストーンの近くに歩み寄る。すると、瞬く間に光が私の体を包んだ。あまりの光に目を瞑ってしまう。
光がなくなったのを感じた私は、恐る恐る目を開ける。そこには――
「琴羽ー!誕生日おめでとー!!」
ゲミニとスコル以外の皆が揃って立っていた。ピスキスさんとタリウスさんの手には何かの箱。部屋の所々には星の形をした物が浮かんでいたり置いていたりしている。その全ては色んな色に光っている。
「琴羽ー!こっちー!」
いつの間にか遠くにいたゲミニとスコル。呼ばれた私は駆け足で向かう。
「琴羽!これ私達で作ったの!」
ピスキスさんが持っていた箱を私に渡してくる。星模様のドット柄を纏っている箱は私が手にすると光だして中身が見えるようになる。中に入っていたのは水色のマフラーのようだ。
「え、なんで」
恐る恐る手にした私は、そこで一番の疑問が浮かぶ。
「なんで私の誕生日知ってるの?」
「カレンダーの今日の日付に◯が着いてるのをスコルが見つけたのよ」
でもだからって誕生日だと知るには難しいんじゃ?
「偶々お風呂入ってる時に着たスコルが鞄から手帳見つけたらしくて、その時に知ったの」
え、いつの間に。
「琴羽、ごめんね」
スコルさんが謝ってきた。勝手に手帳を読んだ事を謝ってるのだろう。
「大丈夫だよ、嬉しい」
私の笑顔に安心したように微笑むスコルだった。
「すまないな、琴羽。本当はレオから渡すつもりだったのだが」
そういって渡してきたタリウスさん。これまた私が手にすると星模様のドット柄が消えて中身が見えるようになる。タリウスさんが渡してきた箱にはモコモコ靴下が入っていた。
「最近寝るときにしているだろう?それを真似てみたんだ」
モコモコ靴下は全部で12足。一人一人の特徴を捉えている顔は可愛い。
「冷え性という体の悩みがあると言っていたのを思い出して考えたんだ」
確かに言った事を覚えている。
「ありがとうタリウスさん、ピスキスさん達もありがとう!」
その後は、ピスキスさん達が作った料理を堪能した。カンケルが混ぜたらしいサラダはとても美味しかった。絶妙な塩加減。
「今日が誕生日ってことはー、琴羽は私だねー!」
と言いながら抱き着いてきたのは、リコルだった。持っていたお皿を落とさないようにしっかりと持ち直してからリコルに聞き返す。
「私はー、山羊座のリコルだよー?1月1日が誕生日ってことは、私と同じでしょ?」
そこまで言われて私も気付いた。
「そうだねー、リコルと同じだー」
私とリコルが笑いあってると、後ろから誰かの腕が回ってきた。
「リコルズルーい!カンケルも琴羽とお揃いしたーい!」
私がカンケルをおんぶする形になる。カンケルを支える手が熱を捉える。
「カンケルー?何か熱いよー?熱あるんじゃない?」
「んんぅ…」
カンケルは言葉にならない声を出す。マジで熱が出たんじゃないかと焦って寝かせようとする私にリコルが手で静止してきた。
「大丈夫だよー、またアクアがカンケルにお酒飲ませたんだと思う!」
リコル曰く、子供体型組もお酒は普通に飲めるらしい。しかし、中にはお酒が弱いカンケルや、スコルさんなどがいるらしい。カンケルはコップ半分くらいで顔が赤くなるらしい。
同じ子供体型組であるリコルもさっきからお酒を飲んでいるが、少し顔が赤いくらいだ。カンケルに比べれば強い方らしい。
「ピスキスなんか凄い強いよ、勝負とかしたらタリウスには勝つんじゃないかな?」
マジか。イメージが、私の中のおしとやかなピスキスさんのイメージが音をたてて崩れていく。
「まぁ、一番強いのはやっぱりレオかな~」
「うん、そんなイメージが強い」
思わず思っていたことを口に出してしまう。私の言葉に笑うリコルは、そのままピスキスさんの所に歩いていく。
「あっ!時間!」
バルゴがコップを持ちながら時計をみている。バルゴの声に皆して時計に顔を向ける。反射的に私も時計を見つめる。
「…5・4・3・2・1!明けましておめでとー!」
カンケルが皆に向かって新年の挨拶をすると、皆も新年の挨拶を交わす。私も一緒になって挨拶を交わす。
「改めて!」
一頻り新年の挨拶を交わし終えると、ピスキスさんが大声で言う。
「「「「誕生日おめでとー!!」」」」
「「「「「誕生日おめでとー!!」」」」」
「「琴羽!おめでとう!」」
「誕生日おめでとー!琴羽!!」
掛け声はバラバラだった。
「ちょっと?!掛け声教えたでしょ?!」
「っ!ぁ、ありがとう!」
最高の1年にしよう!
「琴羽ー!琴羽も飲みましょ!」
少しして戻ってきたと思ったら、ピスキスさんが私にお酒を勧めてきた。
「私お酒弱くって、眠くなっちゃうよ?」
やんわりと断るようにピスキスさんを見ると、笑顔のままでお酒を差し出してきた。
「大丈夫よ。今日は琴羽の誕生日なんだから、好きなだけお酒飲みましょ!寝ちゃっても誰かと一緒の布団で寝るから大丈夫よ」
そこまで言われて、進めてくるコップを両手で受け取る。
「じゃあ、飲んじゃおっかな!」
そういって一口、二口とお酒を飲む。
何時間経つのかな?
「ことは………たいだ……るか」
誰かに呼ばれてる。この声は――。
「……あれ?」
気付いたらいつものベッドの上だった。