猫の名前は?
次の日、有給を取って動物病院に行った。
昨晩、猫に詳しい友達に聞いたが、詳しく知りたいなら動物病院行ってみたら?と返ってきたので行くことにした。
友達曰く、去勢や避妊手術してもいい頃、らしい。
私1人では心細いので、リブラさんとリコルにも着いてきてもらった。
獣医さんから教えてもらったのは、性別や病気の有無、生後何ヵ月なのかを教えてもらった。性別は女で、病気はなく、生後8ヶ月で避妊手術は済んでいるらしい。
獣医さんに拾った当時の事を聞かれた私は昨日の事を思い出す。段ボールに居た事、自分のマフラーで暖を取った事、牛乳を上げようと思ったら無くて水を上げた事。
全部を聞いた獣医さんは安心したかのように息を吐き出す。獣医さん曰く、子猫に牛乳を与えてはいけないらしい。子猫の体では消化できない糖が牛乳には入っているらしく、下痢を起こすらしい。
獣医さんは、私達が帰るときに言った。
「こうなったのも何かの縁ですから、出来れば飼ってあげて下さいね」
そう言った獣医さんはとても優しく笑った。
家への帰り道を、私はスマホを操作しながらリブラさんの隣を歩く。
「っん、ごめんねリブラさん」
「…歩きスマホ、危ないよ」
猫を抱きながら前を歩いていたリコルが振り返って短く聞き返す。
「…この前テレビで見た。琴羽が持ってるのスマホでしょ?今の若者は歩きスマホばっかだ、ってテレビの人が言ってた」
思い出すように話すリブラさんに苦笑いして誤魔化す。
「僕がいたから良かったけど、いなかったら壁に当たってたよ、琴羽」
1人の時は気を付けてよ、と言うリブラさんは、止めてた足を再び動かした。
帰ってくると、カンケルがはしゃぎながら出迎えた。昨晩と同じように驚く子猫ちゃんを見てカンケルに注意する。
「カンケル、子猫ちゃんビックリしてるから静かめでお願いね」
私の言葉を聞いたカンケルは、理解したようで挙手しながらいつもより小さめに返事をする。
「その子猫、飼うのか?」
部屋には黄道12宮の皆がいて、炬燵やベッドに腰掛けると、レオさんが私に聞いてきた。
「獣医さんに飼ってあげてって言われちゃいましたんで」
それに、と話を続ける。
「昔からずっと、憧れだったんです。飼いたくても、じいちゃんが猫アレルギーだったんで無理だったんですよ。だから、飼えるんだと思うと嬉しいです」
ニヤニヤしながら話す私は、周りの空気を変えてしまった事に気が付かなかった。
不意に頭に何かが乗った感覚がして周りの見渡すと、それはレオさんの手だった。不思議に思いながらレオさんの顔を見ると、その手が私の頭で動かされる。
――不意のナデナデ止めて!心臓に悪いから!
「子猫ちゃーん」
「子猫ちゃーん!」
「…そういえばこの子猫の名前はなんなんだ?子猫ちゃんって名前なのか?」
まだ火照っている顔を上げると、タリウスさんがこちらを見ていた。
「そういえばそうね」
「子猫ちゃんじゃないの?」
「…あたし子猫ちゃんの名前考えるー!」
タリウスさんが疑問を上げると、皆も釣られて考える。
「白いから、シロとか?」
私が1つ提案すると、皆がハッとした顔をしてこちらを向く。
「琴羽!天才か!」
いや、これが普通だと思うんだが?
「いや、白いからマシュマロでもいいだろう」
皆でシロにしようと騒いでいると、レオさんがもう1つ提案しだす。
レオさんに言われてマシュマロを思い出す。
「…マシュマロ?」
カンケルが子猫ちゃんを見ながら首を傾げる。
「確かにマシュマロみたいに白いけど、名前を食べ物にしちゃうのは、ちょっと可哀想じゃない?」
ピスキスさんがレオさんに反論する。レオさんは眉間に皺を寄せながら考える。
「しかし、シロじゃシンプルすぎるだろ」
他に良い案はないのか、と言いながら眉間に皺を寄せる。レオさんの真似をして、皆も眉間に皺を寄せて考える。
「白といえば雲」
私が小さく呟くと、皆してこちらに顔を向ける。
「どうしたの?」
バルゴが怪訝そうに聞いてきた。
「白といえば何かなーって」
私がそう言うと、皆も白い物を上げていく。
「白といえばー、あ!紙!」
「ティッシュ!ティッシュ白いよ!」
「白、白…塩!」
「砂糖もそうだね!」
「綿!」
「白ー、白ー?あ、お米!」
「牛乳も白いわよ!」
「もう少ししたら降る雪も白だぞ」
「うどん!食べたい!」
「琴羽が時々飲むのも白いよ」
「カリピスウォーターね」
「だからマシュマロだと言っているだろう」
皆して白い物を上げていく。
皆が言った物をリストアップして、話し合いを始める。
「これから、子猫の名前を決める!リストアップした物で名前に出来そうなのはあるか?」
レオさんの仕切りに挙手したタリウスさん。
「俺が出した雪は、そのままでも良いだろう?」
タリウスさんがレオさんに提案する。レオさんは少し考えて頷く。それを見た私は、タリウスさんが出した案の隣に矢印と名前の候補を書く。
「はーい!」
次に挙手したのはゲミニだった。
「僕が出した綿もそのままで!」
ゲミニの言葉にレオさんが「良いだろう」と頷く。さっきと同じように、ゲミニが出した案の隣に矢印と名前の候補を書く。
「はーい!」
私良い事思い付いたー!というピスキスさんが挙手する。
「私が出した牛乳を、ミルクに変えるの!ミルクって名前、あまり無いと思うわ!」
レオさんの他にも、感心したように顔を輝かせる。そんな皆を見た私は、レオさんの有無を聞く前に名前の候補を書く。
その後も、英語にしたり、2文字だけ取って名前にしたりと皆で話し合った。
皆の名前候補を最終的にどれにするかを決める為、スマホアプリで決める事にした。
あみだくじアプリをインストールして、名前の候補を入れていく。当たりが1人になるように設定して、あみだくじスタート!
「シューちゃん!シューちゃん!」
「ソルちゃん、こーい!」
「シュガー!シュガー!」
「ワタ!ワタに!来て!」
「ライスの所!ライス!」
「ミルクに来てー!」
「ユキ!ユキだ!ユキ!」
「どんちゃんの所ー!」
「ピスにこい、ピスにこい!」
「ピス!ピス!」
「マシュマロだ!こい!」
皆が声を上げるのに対して、私はじっとスマホ画面を見詰める。
「…」
「「「……」」」
「「…」」
「…」
えーっと、当たりの所に辿り着いたのは、5番のワタ。
「やったー!ワタの所に来たー!」
ゲミニが跳び跳ねながら喜ぶ。
ゲミニ以外は少し元気がない。特に子供体型組。
「…しょうがないわね、あみだくじだものね」
「…だな、公平にあみだくじで決めたんだ。しょうがないが子猫の名前はワタだ」
一番早く立ち直ったピスキスさんとレオさんが皆に声を掛ける。
「ワター、今日からワタって名前だからねー?」
泣いてしまったカンケルをあやしながら、ワタに声を掛ける。
不意にこちらを向いたワタは、少し長く鳴く。気に入ったかな?




