秋の食べ物
――石焼~き芋~、お芋ー、美味しい美味しいーお芋だよー――
――こんなんだっけ?
石焼き芋が美味しい季節になりました。
某国民的アニメで、昔は石焼き芋をトラックで移動しながら売っていたのを思い出す。最近見てないなぁ、と思いながら支度を済ませていく。
「こーんにーちはー!」
近くのスーパーでお買い物をする為、髪を整えていた時にその人はやってきた。
「アクア!」
水瓶座のアクア、いつもは午前中に来る筈なのに、今日は午後に来た。
「琴羽!何処か行くの?」
「うん、近くのスーパーで買い物。ついでに石焼き芋買おうと思ってる」
笑いながら説明すると、アクアさんの頭にハテナマークが見えた気がした。
石焼き芋の説明をしながら支度を終えると、アクアも行く!ということになり、アクアの着替えが終わるのを待つ。
「大丈夫ー?ちゃんと着替えられるー?」
「大丈夫だよー、ありがとー」
お風呂場で着替えるアクアに声を掛けると、返事をしてくるアクア。
「ちゃんとチャック閉めてよー?」
「チャックって?」
「ズボン!ジーって閉めるやつ!」
「えっと、あ!うん大丈夫!」
つい最近、皆で紅葉を見に言った時にアクアとタリウスさんがズボンのチャックを閉め忘れていた事が発覚した。丁度お昼ご飯を食べ終えた後だった。
もう2度と恥ずかしい思いはしたくない為、チャックを閉めるように催促する。
「出発しんこー!」
「はいはい、行こっかー」
「子供扱いしてる?」
アクアとの買い物は初めてだ。今までは家の中で会話やゲームのみだったので、アクアとの買い物は新鮮だ。
「スーパーって何処?」
珍しそうに周りを見ているアクアが私に質問してきた。
「ん、あそこだよ」
指差した先を見たアクアは、早足でそこに向かう。私もその後を着いていく。
「あーアクア!ストップストップ!止まって?!」
アクアの服を引っ張って足を止める。
「えー?早く行こーよー」
「うん、私もそうしたいけど、信号赤だから、ね?」
歩行者用信号機を指差しながらアクアに説明する。
「あのね?あれは信号機って言って、赤と青で私達に歩いちゃ駄目だよーとか歩いていいよーって知らせてくれる機械なの」
前にピスキスさんに言った時と同じように分かりやすく説明する。
「へぇー」
「この白黒は歩きの人が唯一横断、えっと、横切る?事が出来る所なの。あっちの高い位置にあるのが車用で、その少し下にあるのが歩きの人用。歩行者用信号機って言うの」
最後に「分かった?」と問うと、元気の良い声が返ってきた。
色々説明しながら歩くと、やっとスーパーに着いた。
「おぉー、スゲー!あ、これこの間食べたやつだ!」
着いて早々、アクアは周りの果物に目を輝かせている。
「アクアー、こっちー」
籠を持った私は、アクアとはぐれないように手を繋ぎながら目当ての物を籠に入れていく。
「あ!ねぇ琴羽!あれ!俺あれ食べたい!」
野菜を見ていると、突然アクアが声を上げた。
アクアの指先を辿ると、ある果物に目が行った。
「あれミカンだよね?!」
「うん、そうだよ、でもまだあるし、買わないよ」
「あーそっかー」
私が買わない事を言うと、アクアは少ししょんぼりしながらも私の後を着いてくる。チラッと見るアクアの顔は、お菓子を買ってもらえない子供のようで可愛かった。
「あ!これサカナってやつでしょ!」
魚コーナーに入ってすぐにアクアが声を上げた。魚を知っていることに驚きながらも魚を見ていく。
「知ってるんだ?」
「うん!タリウスに教えてもらった!」
ドヤ顔で私を見てくるアクアに、丁度見ていた魚の名前を質問する。
「じゃぁ、これは何と言う魚でしょーか?」
突然の私からの質問に戸惑いだすアクア。残念ながら、魚の名前は漢字で書かれている為、読む事は出来ない。
「…分かんない…」
しょんぼりしながら出した声は小さくて周りの音に掻き消されてしまいそうだった。
「秋刀魚って言うんだよ」
「さんま?」
笑いながら行った言葉にアクアが聞き返してきた。
「うん、実はここに答え書いてあったんだけど、漢字だから分かんなかったでしょ?」
秋刀魚の字を指しながら説明する。説明しながら秋刀魚を袋の中に2匹入れて、籠に収める。
秋が旬の食べ物は沢山あるわけで、サツマイモや秋刀魚は勿論、松茸、栗、米、柿、葡萄、梨、他にも沢山ある。その為、この季節になると食べ物が沢山ありすぎて逆に何食べよう?と悩んでしまう。
「アクアも石焼き芋食べる?」
目当ての品物を会計し終えて、店の出入口に向かいながらアクアに質問する。
「ぉ、美味しいの?」
石焼き芋について説明はしたが、あまり聞き慣れない言葉に少し不安があるようだ。
「大丈夫だよ、焼きたては熱いけど」
石焼き芋を手にすると少し熱い。これは絶対美味しいぞ。
「少し食べてみる?」
買ったばかりの石焼き芋を軽く剥いてアクアに渡す。熱いから気を付けるように言うと、アクアはこの間学んだ事を生かしてサツマイモに息を吹き掛ける。
「…あふっ、ふっ、甘い、美味しいよ!琴羽!」
熱がりながらも美味しいと言ったアクアは予想外の甘さに驚いている。
「琴羽、これ、美味しいんだけど、甘さもあるよ」
「うん、サツマイモは美味しいんだけじゃないの。美味しさもあって、甘さも!あるんだよ」
私の言葉を最後まで聞くと、石焼き芋を眺めるアクア。
「俺これ食べたい!」
片腕にエコバッグを掛けて両手で石焼き芋を1つ手にしながら帰り道を歩く。
「ねぇ琴羽、何で僕達にこんな良い事ばかりしてくれるの?」
「ん?ん~、何でって…だって皆、こっちの事殆ど知らないんでしょ?だったら教えるし、知ってほしいから?と言っても殆ど自分のやりたい事なんだけどね。逆に迷惑じゃない?」
皆が来るようになってもうすぐ2ヶ月。
「全然!全然迷惑じゃないよ!だって俺、お月見って行事を琴羽に初めて教えて貰って、夜の外は寒いだけだと思ってたけど全然そんな事ないって知ったし、星が凄く綺麗なんだ!自分で自分の星見るのは可笑しいけど、何か楽しくて!だから琴羽には凄く感謝してる!ありがとう!」
お月見の時の事を楽しそうに話すアクア。
アクアと話ながら歩いていると家に着いた。
「「ただいまー!」」
「「「おかえりー!」」」
こたつには、蟹座のカンケルさんと双子座のゲミニさん、山羊座のリコルさんと蠍座のスコルさんの4人がいた。
「おかえり、何持ってるの?」
私達の手元を見てスコルさんが質問してきた。
「石焼き芋だよ」
私の言葉に4人が首を傾げる。相変わらずピッタリの動き。
「石焼き芋、甘くて美味しいよ!食べてみてよ!」
持っていた石焼き芋をスコルさん達に差し出す。スコルさんはいきなりの石焼き芋にビックリして首を引っ込めてしまった。
「食べたーい!」
スコルさんの隣にいたカンケルさんが手を出してそれを手にする。
「…甘ーい!甘いけど、美味しー!」
カンケルさんの食べた反応を見て、リコルさんとゲミニさんも食べたそうに私を見てきた。食べるかどうか聞いて差し出すと、恐る恐る手にして口に含む。
「甘い!」
「ホントだー、甘ーい!美味しい!」
リコルさんとゲミニさんの反応を見てスコルさんもそれを手にする。
「…甘い?」
「甘いよ!」
リコルさんに聞いたスコルさんは、それをジッと見つめて私を見てきた。
「甘いし、美味しいですよ」
私の言葉を聞くと、小さく口に含む。と同時に顔を上げて言った。
「甘いっ!」
よく見ると、スコルさんの目がキラキラしてる。甘い食べ物が好きなのだろうか。
その後、皆で石焼き芋を完食して何時間か話し込んだ。
「そろそろ帰るね。カンケルが眠そう」
リコルさんがカンケルさんを見ながら笑って言った。
「カンケルは子供だなぁー」
「そんな事言って、さっき欠伸しながら目ぇ擦ってたのは誰?」
ゲミニさんがカンケルさんを見て言う言葉に、スコルさんが嫌味そうに言う。
「ゲミニも眠いみたいだから今日はもう帰るね、バイバイ琴羽」
アクアの言葉に「うん」と言うと、アクア達は私に手を振って帰っていった。