紅葉
「楽しみね、琴羽!」
「そうだね、ピスキスさん」
今日は皆と一緒に紅葉を見に行きます。電車の乗り換えを何回かして、目的地に向かう途中。電車に揺られながら会話する皆の様子をどうぞ。
「まだかなー?」
「もう少し待とう、カンケル」
「僕もう疲れた~」
「あれ?ゲミニ、子供なの?」
「僕子供じゃないもん!スコルの馬鹿!」
「ごめんごめん、でも子供じゃないなら、まだ大丈夫だよね」
「うん!僕まだ大丈夫!」
「おいアリエス!あれ見ろよ!すげぇ!」
「ホントだ!アクア、あれ何?」
「知らない!」
楽しみそうに到着するのを待つカンケルさんと会話しているウルさん。私の上げたお菓子を一緒に分けて食べている光景は親子にしか見えない。
座っているだけで疲れてしまったゲミニさんとあやしているスコルさん。これまた親子にしか見えない。
何か珍しい物を見つけたのか、はしゃぎだしたアクアとアリエス。アクアの指差す先には電柱だけだった。電柱の何を見てそんなにはしゃげる?
他の皆も外の景色を見てはしゃいだり、お菓子を食べたりしている。
「お前ら、静かにしろ。俺達の他にも乗っているんだぞ」
「「「はーい!」」」
レオさんの言葉にタリウスさん以外の皆が潔く返事する。
少しすると、見えてくる赤色。
「琴羽!あそこ?!」
「うん、そうだよカンケルさん」
「早く見たい!こうよー楽しみー!」
――うん、紅葉って言えてない所が可愛い
電車が止まると開いた扉から駆け足で外に出る。
「あそこだよ!皆!早く早くー!」
「分かっているからちゃんと前見て歩きなさい!転ぶぞ!」
「カンケル!転ばないようにね!」
凄くはしゃいでいるカンケルを注意するレオさんとピスキスさん。
「よーしっ!カンケル!あそこまで競争だ!」
「あ、あたしもー!」
「俺も俺もー♪」
「僕もやりたい!」
「じゃあ、僕も」
小さく見える寺の門を指差しながら提案するリコルさん。それに対してバルゴさんとアクアとゲミニさんとアリエスが手を挙げる。
「スコルもやりましょ!」
「え、あたしはいい!」
「えーなんでよー?」
「リブラもやろうぜー」
「い、いい!」
「ほらほらー、はいスコルもー」
後ろで見ていたスコルさんとリブラさんが無理矢理連れていかれる。
スタート地点とされる線をピスキスさんが書いてそこに並ぶリコルさん達6人。無理矢理連れていかれたスコルさんとリブラさんもしぶしぶ並ぶ。
「準備はいい?行くわよ?よーい、スタートっ!」
ピスキスさんの腕が天に上がる。それと同時に走っていくリコルさん達8人。それをちゃっかりスマホで撮っている私。
「やっと来たー、遅いよ琴羽ぁ」
「ごめんね、誰が勝ったの?」
寺の門までを歩いて来た私達にアクアが言った。それに対して謝ると、勝負の結果を聞く。
「勝者は挙手!」
アクアの言葉に反応して手を挙げたのはゲミニさんだった。ドヤ顔のゲミニさんは凄く可愛い。
お寺の階段を登って行くと少しずつ赤色が見えてきた。
「一旦休憩しない?」
息を荒くしながらリブラさんが言う。
「そ、そうだね、休憩…」
「駄目!早く見たいもん!」
リブラさんの言葉に賛成しようとすると、カンケルさんが制してきた。
「だ、だよねー」
「ふ、情けない、な」
息を荒げながら長い階段を登っていると、不意に聞こえてきた声。下を向いていた顔を上げるとレオさんが苦笑いしていた。
「体力が、ないなら、何故、ここを選ん、だ」
「人の事、言えるんですか、レオさん」
数段上に居たレオさんが、私に対して嫌みを言ってきた。そんなレオさんも息が荒い。
「俺は、琴羽より先にいる、琴羽には、負けてない」
「そんな事言って、レオさん私より、息が荒い、ですよ」
私の言葉に「そんな事は、ない」と主張してくるレオさん。
――そんな事言って、私より汗が凄いけどね
「どっちもどっち」
不意に下から聞こえてきた声にキョトンとする私。レオさんも聞こえたのか足を止めている。
リブラさんの言葉は少し怒ってるような声に聞こえた。
「ごめんね、リブラさん」
私の言葉に何の反応もしないリブラさんは黙々と足を小さく動かす。
――五十歩百歩ってこういうことなのか
「っあー疲れた~」
なんとか全階段を登り切ると、視界の全てが紅葉でいっぱいになる。
「綺麗…」
綺麗な紅葉に見とれていると後ろから声が聞こえた。登り切ったリブラさんが言った言葉にレオさんが反応する。
「だな、赤くなった葉を見た事がないから驚いた、これが紅葉か」
「初めて見てどうですか?」
私達より先に着いていた皆に聞いてみた。
「すごーい!琴羽っ、ありがとっ!」
「ホントね、凄く綺麗だわ」
最初に言ったのはカンケルさんだった。それに続くようにピスキスさんが感想を述べる。
「紅葉って凄いなー」
「だね!紅葉ってこんなに綺麗なんだね」
アクアとアリエスは紅葉に感心している。
「きれーい」
「綺麗よねー、紅葉って次はいつ見れるのかしら」
リコルさんとバルゴさんは次の紅葉も見たがっている。
「ゲミニ、肩車するか?」
「するー!」
タリウスさんはゲミニさんを肩車すると、より近くに寄ってゲミニさんに見せている。
「……」
「……」
スコルさんとウルさんは何も言わずに紅葉を眺めている。
「……」
リブラさんも同様に何も言わず紅葉を眺めている。
「今日はありがとう、琴羽」
皆に習って私も紅葉を見ていると、不意に隣から声を掛けてきたレオさん。
「…いえ、私が見たくて皆を誘っただけなので」
「それでも琴羽は、俺達の事を思って計画したんだろ?お礼を言うべきだ。本当にありがとう、琴羽」
いつもは口喧嘩ばかりやっているレオさんから感謝の言葉を2回も聞いた。
「…何か違和感」
私の言葉に、紅葉を見ていた顔をこちらに向けて反論してくるレオさん。
「俺がこんなに真剣に感謝を伝えたのに何だ!」
「すっ、すいませんっ!でも!私からもお礼を言わせて下さい。私の我が儘に付き合ってくれてありがとうございます!」
慌てたように言うと、お辞儀をする。
「ここを少し歩いた所にお食事処があるんです、行きません?」
私の言葉に皆が賛成すると、皆と話しながら歩き出す。
「タリウスさん、ゲミニさんをずっと肩車してますけど重くないんですか?」
「全然重くないぞ」
――力持ちなんだな。
その後、お食事処に着いた私達は丁度紅葉が綺麗に見える席でお昼ご飯を食べた。
帰りの電車では、レオさんとタリウスさん以外寝てしまった。
――楽しめたようで良かった。