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10月


 10月になって少しずつ寒くなってきた。この間のバルゴ心と秋の空事件以降、私の部屋にはこたつが登場した。

「ぁー、ぬくい。ほんっとに、あんたは私を駄目にするね」

 部屋に1人、誰もいない空間でこたつに対してのぼやきは儚げに消えていく。


 今日は10月に入って初めての休み、土曜日。近くのショッピングモールで秋服でも買おう、そう思っていた私を引き留めたのがこのこたつだ。見事に罠に掛かった。


――ヤバい、早く行かないとショッピングモール混んじゃう。

 そう思う反面、こたつから出ない私の身体。

――寒いし、今日は出掛けなくてもいいかな

「琴羽っ!皆の服買いに出掛けよう!」

――オーマイガー、何故このタイミングでピスキスさん来る?!

 そんな私の思いを知らないピスキスさんは物凄い笑顔で私を見てくる。私が以前ピスキスさんに買った服を来ている。


「…ちょっとだけ待ってて下さい」

「ええ、待ってるわ」

「……」

「……」

「…」

「まだ?琴羽」

「…はい、用意します」

 ピスキスさんに言われた私は、こたつから出てメイクをする。


 用意を終えた私とピスキスさんはショッピングモールに向かう。

 今日の天気は曇り。最近の天気は曇りが続いていて、平均気温が少しずつ下がってきている。そんな中、ピスキスさんの来てきた服装は半袖のワンピースだ。見ているだけでも寒くなってくる為、私の上着を貸した。

「何でいきなり皆の服を買いに?」

 ショッピングモールに着いてからそんな疑問が浮かんだ。

「タリウスから聞いたの!今の季節を秋って言うんでしょ?秋に皆で楽しめる事ないかしらって聞いたら、紅葉?が綺麗らしいって聞いて、綺麗な紅葉を皆で見てみたいなぁって思ったの!」

「そっか、だからか、じゃぁ1人2着買う事にして、ピスキスさんの服も買おうか」

「え、そんなの悪いわ!琴羽のお金がなくなっちゃうわよ?」

「心配しないで!この間給料入ったから!」

 私の言葉に首を傾げるピスキスさん。

「…あ、仕事でお金が入ったから大丈夫だよ!心配しないで」

「そっか、なら琴羽に甘えちゃおうかな」

「まっかせといてぇ!」



「ピスキスさん、どんなのがいい?」

「ん~、私ね?ピッタリした服があまり好きじゃないの」

「そっか~、ちょっと待ってて?」

 ピスキスさんの言葉を聞いて店員さんを探す。

「あ、すいません」

 服を畳んで整頓している店員さんに声を掛ける。

「はい、どうなさいました?」

「あの、この人に合う服を探しているんですけど、ピッタリした服じゃないやつで、似合う服ありますか?」

 ピスキスさんを示しながら店員さんに聞く。私の話を聞いた店員さんは話をしながらピスキスさんを鏡の前に誘導させる。


「ピッタリした服が苦手なんですね?それでしたら、こういった服はどうでしょうか?」

 店員さんは話をしながらピスキスさんに似合うだろう服を提案して見せる。

「七分丈のワンピースになっていて、今お姉さんが着ているワンピースよりは下が少し短いんです。でも見る限り、お姉さんの足物凄く綺麗ですし、出さないと損ですよ」

「え、そうですか?」

「はい!綺麗ですよ」

 今まで足綺麗だなんて言われた事がないのか、ピスキスさんは戸惑いながらも嬉しそうに笑って私を見てくる。

「ピスキスさん、それでいい?」

「でもこれ、高いみたいよ?」

「大丈夫だよ」

「じゃあ、これがいい!」


――思いの外高かった。

「本当にお金大丈夫?」

「大丈夫!多分…」


「さて、皆の服も買おうか!」

 気を取り直して皆の服を買っていく。

 メンズの服はいまいち分からず、ピスキスさんと一緒に右往左往しながら買った。以前、撮っておいた写真を店員さんに見せて「似合う服をお願いします」と言うと、少し考えてから服を提案してくる。提案してきてもよく分からない私は、店員さんが提案した服を全て会計所に持っていく。

 結果、3万以上のお買い上げとなった。


「沢山買ったね、大丈夫?重くない?」

「大丈夫よ!凄く楽しかったわ!」

 お昼を少し過ぎてしまった為、ショッピングモール内のフードコートに立ち寄った。お昼過ぎでも沢山の人がいて、少し歩いただけで人とぶつかりそうになる。

「ピスキスさん、何食べたい?」

「食べ物が沢山あるのね、凄いわ」

 周りを見渡しているピスキスさんは、目を輝かせて1店舗ずつ見ていく。


「これは何?」

 ピスキスさんが足を止めたのはたこ焼き屋の前。

「作った生地をあの鉄板に流して、タコとか揚げ玉とか具材を入れて焼くんです。ああやってクルッと回してまん丸の形にして完成。食べる?」

「食べる!」

 たこ焼き屋の店員さんが作業しているのを見せながら説明する。即決するほど美味しそうに見えたのだろう。


「あふっ!あっ、あっ」

「あはは!ピスキスさん、フーフーしないと熱くて食べられないよ」

 たこ焼きを買った私達は近くのテーブルに座って食べ始めた。ピスキスさんは熱いのが分からなかったのか、買ったばかりのそれを何の迷いもなく、口に放り込んだ。

「熱いわ、んふふ、もう!琴羽早く言って欲しいわ」

「あはは、ごめんね。半分に切って少し冷ましとくといいよ」

「んふふ、そうね」

 たこ焼きを半分に切っていくピスキスさん。

「このタコ美味しいわね」

「そうだね!」

「皆の分も買いたかったかも」

「…買おっか!」

「いいの?」

「いいよ!色んな種類があるから全種類買おう!」

 たこ焼きを食べ終えた私達は、もう一度たこ焼きを買った。

 ソース、マヨネーズソース、からしマヨネーズ、マヨネーズしょうゆ、塩だれ、しょうゆ、全6種類。



「ただいまー」

「ただいま~」

「おっかえりー!」

「お帰りなさい!」

「おかえり」

 家に帰ると、水瓶座のアクアと牡羊座のアリエスと天秤座のリブラさんが居た。


「わぁー、何何?これ大きい袋だね」

「こんなに沢山何を買ったんですか?」

 アクアとアリエスが私の持っていた大きい袋と、その中に沢山入っていた小さめの袋を見て聞いてくる。

「ピスキス、何持ってるの?」

 それに対して、リブラさんはピスキスさんの持っている袋を指差しながら聞いている。


「じゃーん!皆の服を買ってきたよ!」

 アクアの服を広げながら見せると、アクアとアリエスとリブラさんが目を輝かせながら私を見てくる。

「これがアクアの!でえっと、これがアリエスのかな!リブラさんのが、これ!3人共どーぞ!」

 私が渡した袋の中身を見ると、3人共笑顔で「ありがとう!」と言った。


「リブラ、私皆で一緒に食べようと思って、琴羽に買って貰ったの。呼んでもいいかな?」

「んー、僕は別にいいよ」

「私呼んでくるわね」

 ピスキスさんが一度戻って皆を呼んでくる事になった。その間に皆の分の飲み物を用意する。


 少しすると、ピスキスさんが皆を呼んできた。

「何なんだ、ピスキス」

「たこ焼きとは、小麦粉の生地の中にタコと薬味を入れて5センチ程の球形に焼き上げる料理、大阪という地が発祥のようだ」

「食べ物なら早く食べたい!」

「ピスキス、私達さっきお昼食べたばかりなんだけど」

「たこやき、おいしいの?」

 来てすぐに獅子座のレオさん、射手座のタリウスさん、双子座のゲミニさん、乙女座のバルゴさん、蟹座のカンケルさんが次々に言う。

「皆さん!たこ焼き食べませんか!?」

 私の言った言葉に反応したのはカンケルさんとピスキスさんだけだった。

「「食べるー!」」


 皆にたこ焼きが美味しいものだと教えると少しずつ食べ始めた。

「あつっ、美味しいっ!」

「ホントだ!美味しい!」

「うん、美味しい」

「うまーっ!」

「うまーっ!」

「カンケルがマネするからやめなさい」

「うまーっ!」

「マネしちゃったかー」

「美味しい」

「美味しいねー」

「ね?美味しいでしょ?」

「ふん、普通だな」

 皆の反応を見るのは楽しい。

 美味しい美味しい言いながら食べる皆を見ていると、私も食べたくなってくる。皆で食べると、沢山あったたこ焼きがあっという間になくなった。


「っあー美味しかったー」

「なー美味しかった」

「また買ってきて欲しいね!」

「我が儘は駄目だぞ、琴羽のお金で買ったんだ。なくなったら、琴羽を可哀想だろ」

「大丈夫ですよ、タリウスさん」

「すまない琴羽、実は俺ももう少し食べたいんだ」

 タリウスさんが私に我が儘を言ったみたいで嬉しかった。

「また今度買ってきますよ」


 その後、皆の為に買ってきた服の見せあいっこが始まった。

 気付いたらカンケルさんが寝てしまっていて、皆で帰っていった。出来ればもう少し皆と居たかったけど、しょうがない。カンケルさんの寝顔が可愛かったので良しとしよう。




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