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AYUMI:2016 『かぐや姫』  作者: -Natsu- ウサギ様 狼零 黒月 ちや
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第一話

今夜は天気が良くて月がクッキリと見える。

部屋の窓から見える月は真ん丸より少し欠けていて、綺麗な丸になるにはまだ2、3日掛かりそう。


歩はジっと月を見ながら考える。


かぐや姫は本当はどんな気持ちで月を見ていたのかな?


月に帰りたかった?

帰りたくなかった?


私なら・・・・・・どうしただろう?



歩はもうすぐ11才になる、読書が大好きな小学5年生。

月を見ると、もっともっと小さな頃に聞いた日本の童話『かぐや姫』が頭を締めて離れない。


謎が沢山あるからである。


どーして、好きと言ってくれた5人に難しい事ばかりお願いしたのかな?

他に好きな人が居たから?


月を眺めて泣いていたのは、帰りたくなかったからなはずなのに、どうして帰ってしまったのだろう?


子供向けの本は『かぐや姫』だが、もっと難しい本は『竹取物語』といって、かぐや姫は罪を犯した罰として人間の世界に落とされ、罰の期間が終わったから月から迎えが来たと書いてあるみたいだけど、どんな悪いことをしたのかな?


疑問はたくさんあるけれど、『かぐや姫』なんて、子供っぽいと思われそうな本の話は学校の友達にしたことがないから、1人で悶々とするしかない。






昨夜は『かぐや姫』が頭から離れなくて、なかなか寝付けそうにないと思っていた歩だが、いざ布団に入ったらぐっすりと眠っていた。


それでも、目が覚めてすぐ部屋の本棚にある『かぐや姫』をとってついつい読みふけってしまった。


「歩ー、早く起きなさい・・・って起きてるじゃないの。朝ご飯できてるから早く顔洗ってきて食べなさい。」


いつもアラームで自分で起きて1階に降りてくる歩がなかなか降りてこないので、まだ寝ていると思った母親が歩を起こしに来た。


歩はハッとして慌てて読みふけっていた本を本棚に戻そうとした手を止めて、『かぐや姫』のタイトルが見えないようにカバーを掛け、カバンにしまった。







「おはようございまーす。」

「おはよー。」

「おっはよー。」


多数の朝の挨拶が飛び交う小学校。

いつもとなんら変わらない、日常の景色。


歩も朝の挨拶を済ませて自分の席へ着く。

一番窓側の後ろから二番目。

カバンから教科書やノートを出して机へしまい、カバーを掛けられた本を机に置いた。


「歩ちゃん、おはよう!」


後ろの席の涼介が今日も歩に声を掛けてくれる。


「おはよう。」


しかし、歩は涼介の事が少し苦手だと感じている。


理由は、涼介が自分とは違ってクラスの中心的人物であるからだ。

運動が出来て足が速いし、勉強も出来て、とても明るくいつも周りに人が絶えない。

女の子にも人気者で歩の席を羨ましがる子は少なくない。


そんな涼介は今の席になる前からあまり目立つ方では無い歩にも気兼ねなく声を掛けてくる人で、席が前後になってからは声を掛けられる事や、グループ授業などの時に誘われる事も増えた。


歩は運動が苦手ではないが、得意でもなく、どちらかといえば大人しく目立たず、1人本を読んで居る事が多いため、涼介とは正反対である。


だからなぜこんなに親しくしてくるのかと戸惑っている。

仲良くなりたいと、同じグループになりたいと思っている女の子は沢山いるのに・・・。


「涼介ー!!」


廊下側の席に座る、もう一人の人気者に呼ばれて涼介はそちらへ移動していった。

それを確認した歩は、そっと『がぐや姫』を開いた。


『あわくゆらめく様に光り輝くお姫さま』と言う意味の『かぐや姫』


そんな綺麗なお姫様が月を見て光の玉のような涙を流している挿絵があるページだった。


3年間お世話になったお爺さんとお婆さんに、自分が人間の世界の者ではなく次の十五夜には月の都へ帰らなくてはならないと告白するかぐや姫。


パラパラっとページをめくると、かぐや姫が月の夜空へ向かって行く挿絵がある。


かぐや姫は自ら庭へ出て天女の羽衣を身に付け帰っていくが、その時に帝へ渡して欲しいと、手紙と不老不死の薬を預ける。


歩はかぐや姫は帝が好きだったのではないかとも思っている。

不老不死の薬をあげるくらい長生きして欲しかったっということなのだから。


ではなぜ、自ら天女の羽衣を身に付けたのだろう?

好きだったら人間の世界に残りたかったはずなのに。


そうは思うが、歩はまだ初恋もしたことがなくその気持はよく分からない。

好きな人より生まれた月の都に帰りたい気持ちが強いのかな?と考えを巡らせていた。


「ねぇ、それって『竹取物語』だよね?」


本の世界に完全に入り込んでいた歩は、予鈴が鳴り、後ろの席の涼介が席に戻っていることに気づいていなかったので、ハッとした。


せっかくバレないようにカバーをしてきたのに、挿絵があるページを開いていたので何を読んでいたかバレてしまった。

歩はとっさに反応する事ができずに固まっていたが、別の驚きも混ざっていた。


学校で本を読んでいる事を見たことがない、どちらかと言えば体を動かす事が好きなハズである、しかも男の子である涼介が、挿絵を見ただけで『かぐや姫』・・・いや『竹取物語』だと言った事に。


-Natsu-


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