第2話
夢でも見ていたのかと、僕は有りがちにも頬っぺたをつねった。痛かった。
どうしよう。110番、119番通報しなければ、そう思った。しかしながら僕は怖くなってその場を立ち去り家へと帰った。
「ただいま。」
小さな声で母親にそう言い直ぐに二階へ上がりベットに横になった。
忘れよう。忘れよう。そう自分に言い聞かせ、目を閉じた。
雨は少し弱くなっていた
翌日の6月15日。僕は何事もなかったかのように起きて顔を洗いうがいをし、お風呂に入った。シャワーを浴びていると昨日の雨の音を思い出す。体がぞっとした。直ぐにお風呂を出て支度をした。
「蓮、昨日何かあった?直ぐ寝ちゃったけど体調でも悪いの?」
そう母は言った
母は昨日、僕がどんな目にあったのかは何も知らない。
「昨日、近くの坂の下で人が死んだみたいよ。」
僕と何か関与してるなんて知らずにそんな事を言っているのは分かるが何かを突きつけられたようだった。
「ふーん。最近は物騒だね。」
どうやって返事を返せばわからず咄嗟にそんな言葉を発した。
「いや、事故みたいよ。階段から転げ落ちたんだってさ。その人、近くの古本屋の人みたい」
どっから、そんな情報を手に入れたのかと思った。古本屋といえば僕はまだ「手紙」を読み終えていない。近くの本屋には売っておらず、閉まってしまうのは困る。
いやそれ以前に気にするべきところがあった。『転落死』どういう事だろうか、転落死ならば僕は昨日何故あそこで死人を目の前に何分もいたのだろうか。
「いてっ」
頭が痛む。昨日ぶつけたのだろうか。
「母さんごめん。朝ごはんいいや。行ってきます。」
早く昨日の場所を見に行きたかったので早めに学校に行く事にした。
どんよりとした天気だ
警察の人が何人かその場所を囲んでる。
母の言うことが本当ならば亡くなった人は古本屋の旦那の娘だ。
「すみません。亡くなったのは古本屋の娘さんですか?」
警察官にそう聞いてみた。
「あぁ。そうだ。昨夜な。」
特に変なことは無いように答えた。
僕は気になって古本屋を寄った。
早く家を出たおかげでまだ時間はある。
開いていた。
「すみません。娘さん亡くなったそうですね。大丈夫ですか?」
唐突に、こんなことを聞くのはダメだと思いながらも気になり聞いてしまった。
「あ、あぁ…」
うまく泣けない蝉のような声で、足が生えてない蟻のような容姿になっていた。
いつここが閉まるかわからないので、棚から「手紙」を取ると旦那の前に行って
「これ下さい」と言った。すると、
「これな娘が好きだったんだよ。しっかりと読んでやってくれよな」
少し笑顔になったのかなにか、少し気が晴れたような声でそう返事をされた。
古本屋を、出ると雲は少なくなっていた。
毎日がつまらなかったが急に不謹慎ながらも生活に張り合いのようなものができた。
小さい頃毎日が新しい出来事ばったかたったように。
学校に着くと、ちらほら昨日の転落死の話が聞こえた。僕の唯一の友達の清野佳奈もそんな話をしていた。
佳奈は小さい頃からの付き合いだが僕とは反対のやつだ。毎日が楽しそうだ。
周りがそんな話をしている中、僕は席について「手紙」を開いた。