第1話
こんなにも毎日の生活に活気が無くなったのは、いつからだろうか。今日も明日もまるで変わりない日々だ。
そして今日もいつもと同じようにこの道を進む。高校2年生の日常だ。少し雨が降っている。傘を持つのは何かと面倒なものだ。
「おーい。出席とるぞ。席に座れ。」
担任の藤沢誠先生がいつもと同じように出席を取る。先日、気がつくと自分は後輩ではなく先輩教師になっていたと言っていた40歳の女性教師だ。
40歳になって気がつくとは大人になると時間の進みが早いというのは本当なのかもしれない。
「紳路 蓮」
「はい。」
自分の名前が呼ばれた。返事をする時毎回思う事がある。生徒の名前を呼ぶ必要があるのだろうか。先生はどの生徒がいるかいないかわかるはずだ、という事だ。
こんな事を考えるのも何度目だろうか。
「さよなら」
クラス全員の声が混じり、いや少し語弊があるか。クラスの一部の人間の声を聞き今日もまたいつもと同じ帰り道を行く。
学校が終わると僕は毎日のように古本屋で小説を読む。最近読んでいる小説の題名は「手紙」
まだ雨は降り注いでいる。
その何ら変わらない今日、古本屋で小説を少し読み付箋を挟み、携帯で時間を確認した。19時。ここから家は5分もしない。
20才台の綺麗な女性と言ったところだ。
そんな女性が傘を持ち階段の上にいるのが目に入った。毎日同じ時間にこの道を通っているが此処で人に出会った事は1度もなかった。不思議に思えた。毎日の生活に少し変化があったのは久しぶりであった故に、少し興奮に近い新鮮な気持ちになった。そんな気持ちになりながら、階段の上にいる女性を後に家への道を進む。
気付くと目の前に女性が倒れていた。
携帯が示す時間は20時。
「え?」
不意に声が漏れる。
雨は更に強くなった。