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六月、季節は梅雨。
毎日のようにじめじめとした雨が降り続いていた。それに加えてテスト期間。二週間後に迫るテストに備え友達数人と図書館で勉強していた。
固まった筋肉を伸ばそうと伸びをしたらメールが届いた。
『今回は必修が四つもあるのだ。死にそう……』
『こっちは一つ、まあ余裕かな』
大学も三年目になるとテストと聞いてもそう焦らなくなる。過去問が出回っていたり、それぞれの教授のこれまでの傾向である程度は問題を予想できる。
皆で集まり勉強しているというよりは各々が持っているテストの情報を共有し合っているという感じだ。
『テスト終わったら遊びまくってやるー』
『その意気で乗りきれ。そうだ、どうせ近くにいるんだし一回会ってみる?』
何気なくそう返信した。
フェアレディの返信はいつも割と速く返ってきたが、最後のメールから一時間が経過した。
勉強に集中したのだろうと、そう思ってメールの事は頭から消えて行った。
そして、そのまま夜になり、寝る前に一回パラレルをプレイしようとしたときに、フェアレディに送ったメールのことを思い出した。
そういえばまだ返信がない。
気づいてないのだろうか。
最後に送ったメールを見返した。何気なく送ったが、そういえばまだ互いに顔も名前も知らない。それなのに会おうというのは少し急だっただろうか。
メールを繰り返すうちに、結構打ち解けてきたと自分では感じていたが、所詮はゲームで知り合っただけの関係。フェアレディはそれほど心を許していなかったのかもしれない。
それから、一日、二日とフェアレディからのメールは届かなかった。パラレルのランクでもフェアレディの名前は見かけなかった。
それから数日、メールはこない。パラレルでも相変わらずフェアレディの名前は見かけなかった。もしかしたら辞めてしまったのかもしれない。
残念に思いながらも、仕方ないと思い、少しずつフェアレディの存在が薄れて行った。
最後のメールから一週間と少し、忘れかけていたところにフェアレディからのメールが不意に届いた。
『返信遅くなってごめん。ちょっとテストに集中してた。というわけで……一回会いますか。折角だし』
あまりに急なメールに驚き、二度三度見返した。
テストに集中するにしても、一言メールくれてもいいだろうに。しかし、浮かんだのは怒りよりも安心だった。
『遅いぜまったく……。こっちはいつでもいいよー。都合悪い日とかある?』
それから、何度かメールを繰り返し、会う日程、時間、場所を決めた。
今週の日曜日、午後二時、駅に集合にきまった。
そして当日、たっぷりと惰眠をむさぼり目覚めたのは正午近くだった。まだ時間は余裕がある。のろのろと着替え、食事をとり、約束の時間まで無駄に時間を過ごした。
三十分前には家を出た。駅までは自転車で十五分程度、少し早めにつく算段だ。
いたって平常心、たいしてして緊張はしていなかった。
確かに会うのは初めてだが、メールでなら幾度となく言葉を交わした。ネットが風急した今の時代、ネットで知り合いリアルであるなんてことはそれほど珍しいことではないだろう。現にオフ会などと称される集まりもあるわけだし。
そういえば、これも一種のオフ会だろうか。
ゆっくりと自転車を漕ぎ、集合場所に着いたのは約十分前。それとなく周りを見回してみるが同年代で誰かを待っていると思われる人物はいない。
駅構内から少し出たその場所には喫煙所やベンチなどが設けられている。道路より高い場所にあり、面前に広がる繁華街を俯瞰できる。平日は背広姿のサラリーマンが溢れかえっているが。今日は休日だけあって若者が目立つ。
人の流れを眺めているうちに時刻は午後二時を少し過ぎていた。改めて周りを見回すが先ほどと変わり映えはない。
十五分まで待つことにしよう、それで現れなかったらメールしてみよう。
そう決めて改めて人の流れに目を移した。
そろそろ十五分たったかと携帯を取り出して時刻を確認しようとすると、ちょうどメールが届いた。
『まだ?』
たった三文字のメールはフェアレディからだった。
急いで寄りかかっていた背を起こし周りに目を向けるが、それらしい人物は見当たらない。
『もういるよ。何処にいる?』
そう返信して、きょろきょろとあたりを窺うが……、やはりそれらしい人物は見当たらない。
『西口出たところだよね?』
『そうそう』
ここまで近づいて未だに出会えないとはどういうことなんだ。
『T駅だよな?』
『T駅だよ』
駅を間違えているということもなさそうだ。
『090******** 電話して』
しびれを切らし、メールじゃ埒が明かないと思い電話番号を送った。
しかし、五分、十分待てど、電話はこなければメールもこない。
来ない返信が後押しし、フェアレディに対する不信感が募ってきた。もしかして騙されているのではないか。からかわれただけではないのか。
時がたつにつれて疑いの色が濃くなっていく。
帰ろうか。
最後のメールから十五分後にそう決断しその場を離れようとしたが、
ポケットにしまいこんで久しい携帯電話が微かに震えた。取り出してみると見知らぬ番号からの着信。
おそるおそる通話ボタンを押した。
「もしもし?」
『……』
微かなノイズ、そして微かな息遣い。
確かに通話は繋がっている。しかし、応答はない。
「もしもし、……フェアレディ?」
『……うん、カタナ?』
しばしの沈黙の後、その声は僕の耳に届いた。
そして、次は僕が言葉を失う番だった。その声は紛れもない女性のものだったからだ。今までずっとフェアレディは同じ男性だと思っていた。
「あー、えー……、フェアレディだよね?」
『だから、そうだって』
「女、だったの?」
『そだよ』
しれっとした口調で彼女――フェアレディは言った。
会話は途切れ、微かなホワイトノイズだけが耳に響く。
『まあ、メールじゃ男っぽい文体だったかもね、男の子だと思ってた?』
彼女の口調に申し訳なさそうな様子はなく、どこか、してやったりとした風だった。
「そりゃあ男だって思うよ。名前だってフェアレディだし、車好きの男を想像したよ。自分のことを麗人だなんて普通言わないだろ」
『悪かったね、それにハンドルネームなんてただ適当にお父さんが昔のってた車の名前つけただけだし、意味なんて知らなかった……』
「へえ、同じだ。俺も父さんが昔のってたバイクの名前をなんとなくその時浮かんでハンドルネームにした」
『ふうん、カタナなんて名前のバイクあるんだ』
「他にもニンジャ、ハヤブサ、なんてのも――」
『へえ、バイクはスーパーカブしか知らないや。あと、ナナハン?』
それは排気量だ、と突っ込もうと思ったが、そんな場合ではない。フェアレディが女性ということで戸惑って忘れていたが、
「で、今何処にいるんだ? そして電話して来るにしても遅いぞ」
電話番号を教えたのはいつまでたっても会えないフェアレディと合流するためだ
『だから集合場所にいるって。電話が遅かったのは……、向こうは私のこと男だと思ってるだろうか、どうせなら直接会って驚かそうと思って探してた。でも見つかんないからしょうがなく』
メールの口調はわざとだったのか、まったく。
「集合場所って、T駅の西口だよな? どこにいるんだよ」
『そっちこそ、間違えてるんじゃないの?』
「間違えてないって、十五分前からついて三十分の間、周り見てたけどそれらしい奴は見なかったぞ」
『私だって、……五分前には着いてたし』
互いに譲らず、自らの非を認めない。認められない。
「本当に西口にいるよな」
『西口』
「周りに何がある?」
『灰皿、ベンチ、ぐらいしかないけど』
「前方の少し左にマックが見えるか?」
『見える』
「よし、もう仕方ない。そこの入口集合で」
『まったく、しょうがないなあ』
しょうがないのはどっちだ、と文句を言う前に電話はいったん切れた。
駅を離れマックに向かう。
目と鼻の先にあるので駅からはどんなに遅く歩いても五分とかからない。
数分で到着するがそこには誰もいない。
入り口で待ちながら待ちかまえているが一行にフェアレディらしき人物はやってこない。
やはり、騙され、からかわれているのではないかという思いが頭をよぎる。地元民ならば駅の前にマックがあることを知っていてもおかしくはないだろう。
入口前に立って五分が経過した。
今度こそ帰ろうと思った。しかし再び電話がそれを阻止する。
『ねえ、いつまで待たせる気?』
「……もう五分以上前からいるぞ」
『うそ』
「嘘じゃねえ。何処にいるんだよ。入口が二つあるわけじゃないよな。○○店で間違いないな?」
店の窓に書いてある店名を確認してそう問う。
『そうだよ、その店だよ』
ここまでしても出会えない。
彼女に対する疑いはますます深くなる。
「なあ、もしかして――」
からかって遊んでいるのか? そう訊こうとしたとき、目の前の道路に赤色灯を輝かせ、サイレンを鳴り響かせながら走るパトカーが通過した。そのサイレンの音は同時に携帯電話からも流れ、そして、同じように遠ざかっていった。
近くにいる!
そう確信し、周りに目を光らせた。マックの店の周りを探す、いない。もしかして店の中か? 店員の訝しむ視線を無視し店内に入り、客席を見渡すが携帯を耳にしている人物はいない。が、若い女性客ならたくさんいるのでその中の一人かもしれない。
「聴こえるか?」
『聴こえるよ。ねえ、何処にいるの?』
今、携帯を耳に当てた人はいない。これで隠していたという線はなくなった。いや、ハンズフリーの電話なら……。しかし、一人一人を見張ることは出来なさそうだ。
諦めて店を出て、あまり言いたくはなかったが、先ほどの台詞の続きを言った。
「なあ、もしかして俺をからかって遊んでいるのか?」
『なっ……』
彼女は声を詰まらせて沈黙した。そして、
『そんなわけないでしょ! そっちこそ遠くから観察して遊んでいるんじゃないの!』
あまりの大声に思わず耳から携帯を離した。
この激昂ぶりは、演技ではないと願いたい。
「ごめん」
『何? 認めるの!』
「違うって、疑って悪かったって。こっちも騙してなんかない」
『……ふうん』
完全に疑いが晴れたわけではなさそうだ。
今、互いが互いに疑っている状況。いくら言葉で自分は潔白だと言っても証拠は何もない。ならば、言葉だけでも証明できる方法を二人で考えることにした。
「じゃあ……、あのでかい鳥居の神社わかる?」
『街中にある?』
「そう」
駅からまっすぐ行ったところにいきなり大きな鳥居が現れる。周りにはビルやショッピングモールなごが立ち並ぶ中、いきなり現われる大きな鳥居が異彩な雰囲気を放っている。
左右、正面にごつごつとした建物があっては静謐さの欠片もない。しかしながら、長い階段を登った先の境内は割と静かだ。
『ちょっと遠くない?』
「歩いても十五分ぐらいだろ? それに人が少ない所の方がいいし」
『……わかった』
というわけで、再び集合場所を変えることになった。
自転車で行ってもよかったのだが、混乱した頭を落ち着かせるために歩いて神社に向かうことにした。
近くにいるのに出会えない、この現状はどうなっているのか、考えれば考えるほど彼女が用意周到に準備し、自分を騙しているとしか考えられなかった。
彼女の口ぶりからは、とても騙しているなんて考えられないが、断言は出来ない。なんにせよ、もうすぐ分かるさ。
ほどなくして神社の前に着いた。鳥居をくぐり階段を登り始める。確か以前数えた時、百段以上数えたことを覚えている。
境内に辿り着いた時には汗ばみ、呼吸がかなり乱れていた。日ごろの運動不足を実感した。
息を整うのを待ち、フェアレディにコールする。
「もしもし?」
『……はあ……、もしもし』
電話越しに荒い息遣いが聴こえる。
「……階段登ってる?」
『そうだよ! ……まさか下で待ってるとか言わないよね』
「いや、もう境内」
『そ、……はあ、何段あるのよ、まったく』
「じゃ、登りきったらまた」
そう言って通話を切った。
階段を見下ろす。が、登ってくる人影は見当たらない。やはり、そう簡単に解決させてはくれないようだ。
誰も登ってくる様子はない。が、フェアレディが登ってくるまでパラレルをプレイして時間を潰す。
あまり集中できず、戦果は芳しくなかった。
デイリーステージを一回終えたところで電話がかかってきた。
『もしもし、着いたよ』
「おつかれ……」
階段の一番上に腰かけていたが、もちろん誰も通っていないし、再度下を見下ろしてみても誰もいない。
『で……、何処に隠れてるの?』
フェアレディの声は猜疑心に溢れていた。
「階段の一番上に座ってるけど」
『いないけど』
「本殿じゃないぞ、百段ぐらいあったあの階段だぞ」
『わかってる! で、何処にいるの?』
「だから、階段のところだって」
『いないから言ってるの!』
フェアレディの声と共に、ザッザッといった音が聴こえた。
「そっちこそ何処にいるんだよ」
『境内、あんたを探しまわってる』
あの音は石砂利の上を歩きまわってる音だったようだ。
もちろん、境内を見回しても誰もいないし、携帯電話以外からは石砂利をふみならす音は聞こえない。嫌な汗が背を伝った
「よし、じゃあ次はそっちが条件を出せ」
『条件?』
「ここに誘導したのは俺だ。ここなら人も少ないし大丈夫だと思ったが……ダメみたいだし、次また俺が何処かに誘導すると疑うだろ? だから次はそっちが条件、というか出会えるように誘導してくれ」
『……わかった。ちょっと待って考える』
フェアレディが考えている間、境内の中を歩き回った。フェアレディが自分より先に着いていて何処かで隠れているという可能性もまだ僅かにある。いやしかし、あの砂利の音はどう考える。似たような音を作って誤魔化した? 別の神社にいる? この辺に他に神社なんてあっただろうか。
『決まった』
ぐるぐると、まとまらない思考が彼女の声によって遮られた。
「よし、どうする?」
『おみくじの横にある、おみくじを結ぶ木、あるでしょ?』
「あるな」
そこで何かするのだろうと、その場所に歩き始めた。
『まあ、何処にも大抵あるもんね』
まるで他の神社に俺がいるような物言いだった。
「そうだな」
『ついた?』
「ああ」
『……私一人だけだけど』
「こっちもな」
会話から相手が自分のことを疑っている、また蔑んでいるのが容易にわかるのも珍しい。
『まあ、いいや。じゃあ一番上の一番右のおみくじ、それがなにか言ってみて』
「……人のおみくじあけるのかよ」
さすがに少し気が引けた。
『そうやって逃げるの?』
「……わかったよ」
周りに誰もいないことを確認して結んであったおみくじを外し、中身を確認する。一瞥してすぐに木に結び直した。
「中吉」
『……ふふっ、知ってた? 中吉って一番確率低いんだよ』
「知らねえよ、合ってたのか?」
『思えば、おみくじなんてあてずっぽうの可能性もあるし……、そう! 絵馬、絵馬あるでしょ!』
「あるね」
おみくじが結んである木に並んで、数は少ないが絵馬が掲げられていた。
『それの、じゃあ、一番下の右から十番目!』
カラカラ、と絵馬を数える音が電話から、目の前からの両方から聞こえた。
「志望校に合格しますように」
『……そんな願いありきたりすぎるからね。大方予想できるしね。ちょっとまって!』
そして勢いよく絵馬をめくるカラカラとした音が電話から聞こえた。
『はい、真ん中の一番左!』
「……love the life yoT live, Live the yoT love」
『……ってどういう意味?』
「自分の生きる人生を愛せ、自分の愛する人生を生きろ、って感じかな。ボブ・マーリーだっけ」
『ははっ』
乾いた笑いから始まり、この徐の言葉は怒涛に続いた。
『ねえ、事前に全部覚えてたんでしょ! おみくじも、絵馬も、そうでなきゃわかるはずない! それとも何処から見てるの? さっきくまなく探したけど、どこかでみてるんでしょ? いい加減出て来てよ! それとも衛星カメラか、監視カメラかそこにハッキングしてみてるんでしょ!』
フェアレディを否定する材料は僅かながらある。たとえばこのヒステリックも全て演技だとか、だけど、きっと違うだろう。
おみくじも、絵馬も言及こそしなかったがフェアレディが目にしたものと一緒だったのだろう。そして自分がこう思っている時点で彼女の存在を認めている。
そう、彼女は、フェアレディはこの場所にいる。
だけど、いない。
異世界、またはパラレルワールドと考えればいいのだろうか。ともかく違う次元に彼女は存在している。違う世界といったほうがいいだろうか。
「じゃあ、次はこっちの番だな」
『ちゃんと答えてよ!』
彼女の言葉は無視して言葉を続けた。
「入口、一組のカップルが入ってきたな?」
『え……、あ、うん』
これで、おみくじ、絵馬を全て記憶していたなんて可能性は消えた。
「男の方が青いキャップに、一眼レフカメラを首にぶら下げている。女の方は?」
『ジーンズに服は白、赤いスニーカー……っ、そうだ、グルなんでしょ! その二人も』
おっと、そうきたか。確かにカップルの年齢は同じぐらい、友達に頼めばできないこともない。
「なら、その二人に問い詰めたらどうだ?」
『そんなの、知らないって言われたらそれっきりじゃない』
彼女の声に力はなく、今にも消え入りそうだった
「……まあ、そうだな。あ、あの二人おみくじ引いたな、それを見てみよう。さすがに引いてないおみくじまでは――」
『もういいよ』
フェアレディのか細い声が言葉を遮った。
『君はココにいるけど、此処にいないんだね』
「ああ、そうだ」
『本当はとっくに気づいてた。けど認めたくなかった、認められなかった。おみくじの中身なんて全部覚えられるわけないし、絵馬も同じ。さっきの人達関西弁しゃべってたし、まったく可能性がないってわけじゃないけど、仲間とも考えられない。……今、何処にいる?』
「脇のベンチンに座ってる」
『私も……、左の方?』
「ああ、右側はなんか湿ってた」
『え、……ほんとだ』
それから二人とも通話中のまま、だけど言葉を発さず、ただ呆けて座っていた。
結局、フェアレディと出会えなかったあの日から数日、どちらとも連絡を取ろうとしなかった。パラレルを立ち上げることさえもしなかった。
彼女の名前を、彼女の存在を確認することが怖かった。
全て、なにもかも自分の勘違いだったんじゃないのか。
そうやって未知なるものを否定しようとした。そして時がたって、十年後ぐらいに、ああそんなこともあったなあって、気軽に思いだせるぐらいになるまで、全力で忘れよう。そうだパラレルのアプリも消してしまおう。それが一番だ。
分かってはいるがそれができないのは、彼女、フェアレディにまだ未練があるからだろうか。考えないようにしても頭に浮かんでくるのは彼女の存在だ。顔も本名も知らないくせに。
ただ声と、パラレルのサムネイル画像にある彼女の赤い機体だけが浮かんでくる。
くすぶった思いを抱えたまま、何もアクションを起こすことができずいたずらに時だけが過ぎて行く。
一週間、二週間、気づけばもうすぐ夏休みだ。まだ研究室にも配属されてない三年生にとって夏休みという期間は空白だった。この長い期間はあれば気持ちに整理もつくだろう。