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エレクトリック・ファイターズ  作者: くろくまくん


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カッちゃんとサトシと僕

商品研修の際に、よくわからん偉そうなオッサンに言われたひと言で、僕は自分が、もしかしたら接客業に向いているのかもしれない、と思うようになった。


それまでは自信などひとつもなかったからだ。


今回は少し仲良しの同期の話をする。

 でまぁ、なんやかんやでそれなりに働いていたんだけど、入社してから1年半かな?2年くらいかな?そのあたりはアバウトなんだけども、その頃には家を出て、僕は一人暮らしをしていたんだけども、凄く大事なことが起こってしまった。


 給料が安すぎて生活できなかったのだ。


 あ、このことを話す前に少しだけほっこり青春エピソードでも書こうかな。


 僕の新入社員の同期の15人くらいの中で、同じ店に配属のやつは仲悪かったんだけど、なんばCITYというとこに配属になった大卒のカッちゃんとメンテナンス配送工事のほうに配属になった専門学校卒のサトシ、僕の4つ上、2つ上、という年齢違いだったんだけど、同期の中では一番仲がよかった。


 仲良し3人組の1人サトシは、めちゃくちゃブルーハーツが大好きで、カラオケに行っても延々とブルーハーツとハイロウズを歌う。しかも声は良く通るええ声。


「サトシのブルーハーツって、いつも独特やんな〜。ちょいクセになるわ」


 2人で笑いながら言っていた。今は全く連絡もしていないし、何をしているかもわからないが、どこかで元気にブルーハーツを熱唱していたらいいな。


 そうそう、そのブルーハーツサトシの誕生日を2人で祝ってやろうとカッちゃんと計画をしたんだ。サプライズという言葉も当時あまりなかった時代。


「何したら喜ぶと思う〜?なんかびっくりするやつにしようや」


 まぁ、その時はスマホもなかった時代だから、検索とかをするツールもない。パソコンも高すぎて買えない。雑誌で調べるか、頭で考えるか、その場に行くかだった。


 結局カッちゃんと僕で頭ひねって考えついたサプライズ誕生日計画は…


『レンタカーでいきなり登場!そしてそのまま旅行にいっちゃうぞ!』


 というものだった。サトシが仕事終わりに自宅に帰ったのを見計らって(サトシの実家はお好み焼き屋さんをしていた。よく食べに行ったっけ)レンタカーを路上に停めて連絡する。


「サトシ!ちょっと家の外出てきてや」


 家の外に出てびっくりするサトシ。みんな車持ってなかったから、車に乗ってお出迎えなんて思わないだろう。


「今から旅行いくで!早く乗りや」


「ちょっと風呂だけはいらせてや」


 こういう時も、冷静なサトシだった…まぁそんな感じで車に乗り込もうとした時。


「後ろのトランク開けてみてや」


 トランクにはあらかじめ仕込んでいた、サトシへの誕生日プレゼントが入れてあった。何を贈ったかは忘れた。


 まぁサプライズ感満載の誕生日…のはずだったんだけども。結局旅行と言っても行き先を決めていない。お金ない。情報もあまりない。え、どうすんの?


 とにかくサトシの実家の大阪北摂から、ずーっと南のほうに車を走らせた。ETCも当時あったのかなかったのかわからないけど、クレジットカードも持ってないから高速は乗らない。下道で延々と南へ。着いた先は、和歌山県の黒潮市場というところだった。そして夜中。


 暗い、寒い、何もない。その時ってあまりコンビニとか24時間開いてるお店とかファミレスとかもなかったんじゃないかな。


「寒いし…帰ろうや」


 結局和歌山までただただ、テンション高めでドライブをしただけだった。でも、なんかそんなのが思い出には残るんだろうな。


 という感じで、まずお金がなかった。お金ないのになんで一人暮らしを始めたのか?それは自由が欲しかったからだ。というのはカッコつけの建て前で、親がうるさかったからだ。


 このあたりはうろ覚えなんだけど、散々飲んだあげくの帰り道で、家の近所のハンバーガー屋さんで大量にエビバーガーを嫌がらせのように買って帰ったら、激怒りされたことがあった。いや、エビバーガー好きだったんだよ。ただ度を超えただけなんだ。


 連日の付き合いの飲みで、帰るのもほぼ終電。たまに帰れない時もある。僕にしたら付き合いも仕事のうちと思ってたのでこれは仕事だと言う。まぁ実際は仕事じゃないもんね。たぶん就職して半年もしないうちに家を出たと思う。


 給料安いのに、一人暮らしして、そのうえ付き合いの飲み。あ、飲みは出してもらうこともあったけどね。たぶんこの頃はまともにご飯もちゃんと食べれてなかったような気はする。


 入社してから1年半〜2年くらいのうちに僕は、はじめの炊飯器担当から、照明器具担当、理美容器具、健康器具マッサージ機、FAX電話機、ビデオカメラ、と色々な担当を持った。家電量販店にはメーカーの販売員の人が立っていることもある。それは大抵が派遣社員みたいな立場になるのだが、メーカーが金を出して、派遣会社に人を紹介してもらい、店舗に出向みたいな感じで入れて、自社の商品を販売してもらう、というやつだ。


 僕が配属された真ん中店でも、色々なメーカーの人が立っていた。というかその時はあまりわかってなかったのは、メーカーの名前を書いている名札とか印を当時は付けていなかったのだ。


 後々これは色々と問題になり、今はメーカーの人間は必ずメーカーバッジというメーカー名が大きく書かれた札を首からぶら下げることになっている。していないと多額の罰金がメーカーに課される。


 そうそう、僕のこの新入社員時代はそれがなかったので、なんか普通に先輩みたいなイメージだったのだ。僕がムービー(ビデオカメラ)担当になった時にそのコーナーにいたおっちゃんもその1人だった。


「給料安すぎて、もう生活全然できないんすよ〜!」


 僕はそのおっちゃんに愚痴をよくこぼしていた。


「ヘルパーになったらええやんか。給料いいで〜」


 ヘルパー…その時に初めて聞いた言葉だったが、ようはメーカーの販売員のことである。実はその頃には、元々入社したときのメンバーも色々変わっていたり、辞めていたり、店長もマクドナルド店長からカマキリみたいな店長に変わっていたり、なんかあまり楽しくなかったのだ。


 僕はそういう時は割と行動が早い。


 おっちゃんに派遣会社を紹介してもらって、ヘルパーになることにした。2年でその会社を辞めることにしたのだ。


 その時の直属の上司、主任だったが、その主任は僕に言った。


「お前は逃げるんやな」


 その言葉を僕は忘れないと思った。逃げではない、僕は前に進むのだ、と。直接は言わなかったが僕の心の中で火がついたのだ。

入社してから2年ほど。


月日はあっという間に過ぎていった。


店舗で働いていた、メーカー販売員のおっちゃんのひと言で、僕は会社を辞める決意をした。

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― 新着の感想 ―
 若い頃は、お金と目的がなくても、友だちと一緒に出掛けるという、それだけでも楽しいですよね。  主任だった方には「社員を逃がしたくないのだったら、繋ぎ留められるだけのお給料をください」と言いたくなりま…
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