まさかの展開は王道の至高と言っても過言
『校内探検はどうでしたか?』
「いやー、最高だったよ。特に、化学準備室とか職員室とか立ち入り禁止の四階とかに行ってさ。ガチで楽しかった。あと、天吸を試してみたり、魔力で遊んでたりしたよ。こんなこともできるようになったで!」
そういって僕は魔力の球体を何個か同時に作った。
『ほどほどにな。』
今は四時限目が終わり、昼休みに入った。廊下はガヤガヤ、教室はわいわい、どこ行ってもこの高校はうるさいな。
僕たちは、そんなカラオケボックスを通り抜けながら今は例の図書室に花と話しながら、赴いている。
高篠さんと一緒に行こうかなと思ったけど、声をかけに席にいったらもういなかった。
恥ずかしがっているのかな?アハ!アハハハハハ!
『高篠についてずっと考えていたんだが・・・一昨日の件と何か関係あるのか魔力感知で波長を調べたけど、あの怪物―――いや魔獣の波長と少し類似していたが、一致していない分おそらく関係ないと思われる。あと、彼女は君が目覚めた日まで二日間欠席していたことぐらいがあやしいな。』
「はい?魔獣?」
『ああ、かっこいいだろう。』
花がドヤ顔でこっちを見てくる。
しめしめ、そんなかっこよくはないけど愛想笑いアンドお世辞のダブルコンボで流してやろう。
「あー、かっこつけなんか。いいんじゃね。」
『興味ないみたいに言うな!』
うっわあー。図星☆でもここは平静を装って、話を変えていこう。ガハハ!
「というか、高篠さんについてはただの告白だろ?」
うわ。改めて言うとなんかめっちゃドキドキするー。あともうちょっとで図書室だし。
「心の準備できてる?」
『できてる以前に、俺も君も彼女に好かれるようなことしていないでしょ。しかも君を好く人なんてこの世に・・・』
「ああ?しばくぞ。」
なんか花が戯言を言おうとしたから、メンチ切っちゃった。テヘヘ。
『すまんすまん。だけど本当に告白ではないと思うのだが。』
「僕の学ぶ姿勢に惚れたとかあるかもしれないやん。まあ、その真偽も次期分かる!」
そして、僕たちは図書室の目の前に立っている。
図書室って意外といったことないんだよな。実は図書室は静かすぎて逆に中二病プレイのテンション下がるんだよね。
そもそも、図書室が中二病プレイをするのに適していると誰も人もとも言っていないがな。
いやー、胸もざわざわしてきたわ。まったく、心身ともに落ち着かないよ。
『じゃあ行きますよ。』
「おっけい!」
ドアは引き戸。いざ開門!
ガラガラガラ
壁一面を埋め尽くす、密集した書の群れが目の前に広がる、とかいう図書室のレビューはどっかに蹴っ飛ばしながら、足を踏み入れた。
「あっ!」
可愛らしい声が図書室に響いたかと思えば、その声の主は、「超解明!人間の心理!」という本のページをめくりながら、こっちを見て、「見つけた」といわんばかりの反応を見せる。
すまんみんな。恋愛系をキーワードにいれてなくて。そして、非リア卒業してしまって。
しゃおらあぁぁぁぁあ!
「こんにちは。」
「こんにちはです。」
「うひゃー!初心すぎてしぬう!」
花と高篠さんが照れくさそうに挨拶する、その後ろでがやを飛ばす僕。
意外と花もかわいらしいところあるじゃん!うしし。
「ここじゃ何ですから、向こうに行きません?」
「あ、いいですよ。」
「お熱いねえ。」
花だから平静?でいられるけど、僕だったら多分石になって何も話せないって。かわいすぎる。
行先は・・・多分図書室の端の本棚の裏側かな?足取りと進行方向を見るに
「ところで、お話って何ですか?」
「えーっとですねえ・・・ちょっとまっててください。」
歩きながら花が切り出すと、高篠さんは花の方を見て、本を胸元でぎゅっともち、笑顔を振りまきながら焦らしてくる。ずるい、ずるいぞ!花を許すなマジで!
「その本がどんな感じか聞けよお。」
「その本って面白いの?」
アハハハハ!また安価できるやん!おもろ!
「はい!とても勉強になります。」
「へえー。まじめだね。」
「そんなそんな。」
花ってめっちゃコミュニケーション能力高いな。でもさっき照れてたけどね。
こんなかわいい女子にまじめだねっていうワードがすぐに思いついて言えるか?
否だね。心臓爆散してぶっ倒れちまうよ。
「それで、どこまでいくんだい?」
「あともうちょっと。」
なんかさ、はなしぶりがもうカップルなんよ、多分。もう見てて邪魔できないムードなんよ。指くわえて待ってるのよ。本当にきついのよ。まじで花が羨ましいのよ。僕が高篠さんの隣に立ちたいんよ。
とこれで、そろそろ目標地点につくかな。さっさと終わってほしいよ、このイベント!
「ここで、話しましょう!」
「ここまで来て、どんなことを話すのかな?」
「告白!告白!告白!告白!こく・・・」
『うるさい。』
「すまん。」
僕のがやが一蹴されてしまった。それほどムードは最高潮に達しようとしていた。
この十七年間、彼女いない歴=年齢だった僕は今彼女いない歴=十七年と決めつけられるようになりました。
高校一年生、首席の特待生をもらい、定期テストでは常に一位を死守してきたのにもかかわらず、勉強教えてという声は僕ではなく、仲のいい友達やイケメン、かわいい女子に向かっている。
そして、女子とは関われず、男子とも群れることができず終わってしまったあの雪辱の一年。いや、学力やみんなからの信頼を積み立ててきた一年を今ここに発揮するのだ。当事者は花だけど・・・
「実は私!」
ファン―――!
その刹那、目の前が暗くなった。
停電にしては部屋にいる生徒たちが悲鳴一つもあげていないし、外が曇りなくせに明るい。
スキルの魔力感知は、波長などを調べる場合は任意発動だが、魔力をみる分には常時発動だ。
そして、目の前は魔力で満ち溢れていた。
これは前にも見たことがある。
結界だ・・・!
一瞬パニックになった僕は警戒態勢を敷こうと花の方を見ると・・・だ、だ、だだだだだだ!
「抱き合ってる――――――!?」
高篠さんが花に体に顔をうずめるように体を寄せていた。
これは・・・見ていいのか?なんで今のタイミング?急に、どうして!?
いや、というかこの結界の形状は・・・まさか!
「ぶふっ。」
吐血の音、花の顔の方を見ると口から血を出している。
制服がだんだんと血に染まっていく。
そして、高篠さんを突き放して本棚に寄り掛かった。
花の腹にはナイフが刺さっており、高篠さんの手は真っ赤に染まっている。
「おい!花!」
僕は花の方へ駆け寄り、傷口を見る。
ナイフが刺さっているからそんなに出血はしていないが内臓とかに到達してそうなのだが・・・かなりまずいんじゃないか?
『平気だ!高篠がヤバイ!気をつけろ!』
花の言葉を聞いたのち、高篠さんの方をみると、彼女の魔力は禍禍しいものになり、彼女の顔は狂気の笑みであふれ、“僕”をみていた。
「次はお前。」
高篠さんは人が出していけないどす黒い声色をまとい、喋ると血の付いた右手の人差し指をこちらに向けると、魔力弾が即座に頭に飛んできた。
「クソが!」
とっさに着弾点を見極め、そこに魔力を集中させて攻撃を防いだ。危なかった。
ちょっと反応が遅れれば確実に頭を抜かれてたし、遊んでた時に魔力を高速で出す練習やっていなかったら防御できていなかった!
というか、この魔力の禍禍しさといい、威圧感。イライラしてきた!なんで生きていんだよ。
「あのときの魔獣がよぉ!」
僕は左手に魔力を鈍器のようなものに形作り、即座に右足から魔力を放出して魔獣との間合いを一気に詰め、殺そうとした。
『まて!』
頭を潰そうとした僕に花は制止した。僕は即座に動きをピタッと止めて高篠さんの目の前に立ち止まった。
「気づいたか。」
突然、高篠さんが僕にしゃべりかけてきた。
高篠さんの顔が目の前にきてこの距離は興奮しちゃうけど、そんな空気じゃないって。
「どういうことだよ!」
僕は惜しみながらも、高篠さんとの距離をとって話しかけた。
「満身創痍で勝ち目のないお前らには特別に教えてやろう。」
高篠さんは手を広げながら僕たちのことをガンギマリながら見た。
高篠さんをそんな顔にするな!この性悪魔獣が!
「この体の主導権は私にあるのだよ。私は、魂が壊れ、薄れゆく意識の中で偶然見かけたこの娘の魂を魔力で封じ込めたのだ。」
「そうなのか?花。」
僕はそばに横たわっている花に話しかけた。信じられない。
人の魂すらも魔力で封じ込めるだなんて。そんなのありえるのか。
『残念ながら本当だ。刺されるまでは奴の魔力が高篠の魔力に交じっていて気づかなかったが今は波長が完全にあの魔獣になっている。』
「うそ、だろ。」
まるで少年漫画の定番のようなセリフがこぼれてしまった。
「クフフフッ。愚かだなあ。お馬鹿君が一緒にここに来なければ、そこの少年がこんな傷つくことはなかったのに。」
くっそー!僕の姿見えていたからまた、殺しに来たってことか・・・
ん?いや、そもそも風凪鳳花が出席していたら少なからず殺していたのではないのか?
「いや、責任転嫁すんなよ。お前が全部悪いだろ。僕の姿があろうとなかろうと風凪を殺そうとするのはかわらないでしょ。だって、現にお前が僕たちを狙っているわけだからさ。ほんで、お前が高篠さんの姿をのっとってなかったらこんな状況になってないやろ。」
静寂がこの三人の間に流れた。
だけど僕はまだ言い続ける。言いたいことは言っておかないとずっと気に障って気持ち悪い。
「なんなら、お前が僕たちを襲わなかったらこんなことになってないんだよなあ。だから、愚かって言っている自分が愚かなんじゃね。」
僕は吐き捨てるかのように魔獣をあざけ笑った。
「クフッ!おもしろいことをいうねえ。君は私に何もできないというのに。お前に価値はあるのかな?」
魔獣は僕のレスに間髪入れずに言い返してきた。うーん、なんでそんなひどいことを言うのよ!
あと、高篠さんの顔でそんなこと言うなよカス!ゴミ!クズ!
「お前さ。初撃で仕留められなかったからって、レスバで倒そうとしてる?無理やでバカが。」
またもや僕の鋭い指摘によって高篠さんの頭に青筋が浮き出てきた。
「美しい顔にきたねえ面浮かばせてんじゃねえよ、けだものが!」
こいつからレスバしかけてきたのに返り討ちにされてるって、そうとう雑魚いな。
「クフフフ。もうよいわ。こうなったら強行手段!私を殺すことができない、お前らは何もできなかろう。」
「あらあら、もうレスはおわりかい?お前の負けやな。アハ、アハ、アハハハハハ!」
僕が魔獣を見下しながら高笑いすると、結界が光りだした。
なんだ?おこらせすぎたか?何が起こるんだ?早く逃げないと!
「いったあ!」
結界から出ようと、結界の壁に触れようとしたら電流のようなものが体を流れた。
魔力を込めて、殴るもびくともしなくただしびれるだけだった。
「この結界は強固に作ってある。もう逃げられまい。道連れだ!」
魔獣がそういうと、何かぶつぶつ言い始めた、というより唱え始めた。
「――全能なる神よ。これは幻と偽る殺意。」
へ?これは・・・詠唱???????がち?なにこれ?
あと道連れって高篠さんも死んじゃうし僕らも死んじゃうかもやん!えぐいてえ!
『どうしよう!』
『俺は今止血しているから動けないのだが・・・詠唱って、やばくないかい?』
『やばいだろ!なんか結界がだんだん光ってきているし!』
『ねじ伏せるのは・・・無理か。』
「世界を騙し、理を誤認させ、御物を刃へと堕とす罪を。」
辺りが赤黒く光りはじめ、おどろおどろしい雰囲気になってきた。何か呪術廻戦の領域展開っぽい。
『高篠さんの魔力はまだあるんだよな?』
『ああ、確認している。』
『ほんで、魂ごと封じ込めてるってことはまだ、高篠さんは生きているってことだよな?』
『そうなるな。』
「今この一瞬、我に許したまえ。」
結界がしわくちゃになっていってグロテスクな模様が出てきた。
あれは・・・真実の口?みたいなもんか?とにかく人の顔の口が開かれてきて何かを発車しようとしてきた。これは相当まずいのでは?
『なら、魔獣の魔力さえなくなればいいんだよな?』
『はい?』
あいつが話しているときにずっと思っていた。これだったら倒せるのではないかと。
だから遅かれ早かれやるつもりだったが、こんなにも短気だったとは。危なかった。
いやー、相変わらず僕たちのことをなめてたよね?本当にバカだねえ君は。
「サイキック・ハイジャック!」
「天吸!」
真実の口のような穴から、真っ黒い魔力の粒子が降ってきたが、その瞬間にスキル天吸を発動した。
九州魔力を意識下で高篠さんを支配している魔力に絞って発動した。
これも校内探検中に遊んでいた成果だ。なかなかに役立ってるな。
案の定、高篠さんの体から真っ黒い魔力が飛び出し、僕の体の中に入ってきた。
すると、結界が崩れ、口からでてきた真っ黒い魔力の粒子はフェードアウトした。
あいつは自分の魔力で高篠さんの意識を乗っ取ったといっているが、わざわざ“魔力で”といっているのと、魂が壊されたという二つのヒントから、高篠さんを封じている魂のない魔力を天吸で吸い取って、強制的に依り代をなくして自分の魔力で封じ込めればいいという策が容易に思いつけた。
本当にきれいに墓穴を掘ったな。それとも、僕の頭がよかったってところかな?アハハハハ!
魔獣を完全に倒した悦に浸っている中、高篠さんが倒れそうになると、花が力を振り絞って受け止め、優しく寝かせた。
「これで、本当に終わった・・・のか?」
「おぞらぐ。ぶふっ。」
花がまた口から吐血し、今にも死にそうな雰囲気だった。
「おい、あんましゃべんなよ。」
『止血はほとんど完了したから大丈夫だ。』
「あっ、そうすか。」
なんでこんな短期間で止血できるんだよ。結構深くにナイフ刺さっているよな?
ギーンゴーンガーンゴーン
昼休みが終わるチャイムが鳴り、図書室にいた生徒はゴトゴトと椅子から立って本を方付けたり借りたりして、そそくさと図書室を出て行った。
僕の目の前にはナイフが腹に刺さっている血だらけの風凪鳳花。そして、手が血だらけな倒れている高篠さん。
幸い床に血がついてないけどさあ。
まだまだ授業があるのですがねえ。これ・・・いったいどうしましょう?




