日常パートを入れたっていい。それも王道と人は言うかも。
ギーンゴーンガーンゴーン
「・・・気を付け、礼。」
先生が礼を言い終わる前に、教室はまるでスイッチが入ったみたいに騒がしくなる。何かずっとデジャブ感じるな。そんななか、僕たちは窓際の席で梅雨の訪れを知らせるかのように空一面を覆い尽くしている空を見る。本当なら校庭の様子を太陽に照らされながら眺める不思議っ子プレイをしたいけど、これはこれで良きかな良きかな。
欲を言えばなんだけど、雷とか強風とか豪雨とかが吹き荒れてる日がベストオブベストなんだけど、いいのですよ。ガハハ!
そうそう、僕たちがここに来る間までに気づいたことが二つある。
一つ目は、僕の姿、つまり、体から抜け出ている魂と魔力?だけの姿は他の人に見えないらしい。ほんで、これを霊体と僕たちは呼ぶことにした。それで、外を人がいるところで霊体の状態で浮遊してもだれも気付かなかったのだ。
しかも、改札をスルーしても止められることなんてなく、そのまま無賃乗車できた。言い方悪いけど。
二つ目は、霊体とき、どんなに大きな声を出しても、花以外の人間には聞こえないということだ。
これも、電車内で、試しに大きな声で優里さんのドライフラワーを歌っても、誰も反応しなかったのだ。というか、これで皆聞こえていたらホラーでしょ。
ってことでね。僕はソウルコネクトを使って話さなくてもいいということなんだよね。助かるわー。
「おはよう。」
後ろから声をかけてきたのは扶郎、ではなく我がクラスの学級委員で美人かつ、運動神経バツグンで頭もいい高篠神楽さんではないか。
僕は今、花が乗り移っている体の三人称みたいな視点で見ているから、近づいてくるのは分かっていたんだけど、まさか僕目当てだったとは。(正確には僕の体だけど)どの部活に入っていなければ、クラスの要も担っておらず、普段話さない僕に用があるだなんて。何事!
「あ、おはよう。」
「どうしたって聞け。」
「どうした?」
アハハハハ!安価できとるのおもれぇー。ノリいいの最高すぎでしょ。まあ、そもそもね、僕風の接し方っていうのがあるから支持するのは仕方がないということだ。
「昼休みに図書室来られるかなー、なんて。」
彼女は恥ずかしながら喋る。この話声は、周りの声がうるさいおかげで皆には聞こえない。
フリーズ、この言葉に尽きる。今、一瞬にして脳が溶けた。今までの愚考が掻き消されたかのような心中に堕ちていった。
「え、いいけど・・・なんで?」
そこで間髪入れずに花は受けごたえした。
「ちょいばかー!」
『え?だめだった?』
「まずはさあ・・・」
「えーっと、ちょっと話したいことがあって・・・」
高篠さんは僕の話声を遮るかのように花に話す。
まあ僕の声が高篠さんに聞こえないから仕方がないけどさあ。
ちょっとね、空気を読んでほしいかな。
「具体的に聞いてー」
「あー、分かった。じゃあ昼飯一緒に食べながらにする?」
「え、いいんですか?」
「うん、いいよ。」
「ありがとう。じゃあまたね。」
そういって、彼女は教室から出て行った。なんだったんだ。
すごい。なんだこいつは。女子相手に手慣れすぎている。
だって、花ってまだ人と話したことあんまないよね。なのに、昼飯一緒に食べる?と聞けるこのコミュ力・・・圧巻やわ。
というか、なんで、安価無視したん?
「ちょっと、兄さん。安価無視は良くないよ。」
『いや、わざわざ高篠さんがしたい話を濁していたのにそれを台無しにするのは愚かだよ。』
「まあーそりゃね。」
『俺は君が学校にいるときいつも見ていたから彼女との関係は承知しているのだけど、どゆこと?』
「いや、しらん。」
『だよね。』
ちなみに、高篠さんはフレンドリーというか、社交的なおとなしい人だから、普通の感性を持ち合わせている男子からは結構モテている。対等に話すなんて恐れ多いことなのだ。あの話ぶりといい、図書室という、本棚で仕切られている部屋。絶好のコ・ク・ハ・ク☆ポイントではないか。どうしよー!
『そろそろ授業始まるし、一旦ここまでだ。』
「はーい。」
花は席を立って自分のロッカーへ足を運んだ。
あ、扶郎が近づいてきてる。多分驚かせようとしているんだと思うけど、魔力感知に引っかかっているからばれとるで、花に。
「よっ!」
「あ、おはっ。」
ほらね、案の定驚かなっかたわ。ほんでイントネーションどした?
「おは!ほんでおどろけ!」
そういいながら二人はロッカーから国語の教科書を取り出し始めた。
うーん、“おどろけ!”のイントネーションを“おは!”のイントネーションにあわせてて“きもい!”
「驚いたけど一瞬で平静にしろって脳に指示を出したから驚かなかった。つまり、驚かない。」
「いや、驚いてるし支離滅裂!」
「なんやこいつ。」
花君は手のひらくるりんくるりんぱっぱかな。
「None you coll two?」
「いってねえよ。」
なにを聞かされているのだろう、僕は。
そして二人とも、教科書を取り出すと自席に戻り始めた。
「とにかくだ、お前、図書室昼休み女子。しねい!」
げっ、きかれていたか。
「げっ、聞かれていましたか。」
アハハハ!同じ反応やめろて。
「それだけだ!がんばれい!」
「押忍!」
そして、二人は自分たちの席に座った。みんなもぞろぞろ自分の席に座り始めた。
客観的にみるとなんか一つの生物みたいだな。この教室って。
『って、感じいいかな?』
「僕よりも僕するのやめろて」
『ハハハ!それほどでもないよ。』
別に褒めたつもりで言ったわけじゃないけど・・・まあいいや。
「そろそろ授業始まるから、ガンバ!」
「―――っと、作者は小田定信なのだが、この人は・・・」
一時間目、チョークのカッカカッカと音を鳴らしながら国語の先生が授業をしていた。
申し訳ないけど、この人の授業、タメになるんだけどめっちゃ退屈なんだよなあ。
僕だけ校内探検しようかな?てか、行っちゃお!
ドアをすり抜けて、教室を出た。背徳感が少しあるけどめっちゃ興奮するう!あー、化学室準備室に行こうかな?それとも栄花のクラス見ようかな?
『あー、そういえば、二日前の怪物の件。いろいろ分かったことがある。』
「うわっ!」
急に花からソウルコンタクトが来てびっくりしてしまった。思念が前触れなくン王に流れ込んでくるから、本当にびっくりしちゃうよ。これどうにかできんのかな。
『まずは僕のステータス画面を開示するから来てくれないかい』
『はーい。』
僕が教室出る前に行ってほしかったわ。まったく、詰めが甘いんだか。
「ただいまー」
『じゃあ見せるね。』
『はい・・・はい?な、なに』
『個体名:風凪鳳花 種族:魔人
生命力:一五〇〇/一五〇〇 魔力量三〇〇/三〇〇 魔力属性:無属性
スキル:中・魔力操作 並・魔力感知 低:魔力放出 天吸 ソウルコネクト』
花の言葉に困惑している僕をさしおいて、花のステータス画面が目の前に出てきた。
「え?僕も見れるの?花のステータス画面。」
『あー言ってなかったか。ステータス画面を人に見せるにはステータス画面右上にある人マークを押せばいいんだよ。』
「そんなんあったんだ。」
えーっと、ステータス画面の右上右上・・・
『いや、みんなは知らなくても君は知ってるでしょ。』
「メタやめろて。」
『本題に入ると、魔力操作が並に達するとなんか魔力の波長を読み取れるようになったんだ。』
あーなんか戦闘中にもいってたな。手紙の波長がなんとか。
「なんか手紙がどうとか言ってたね。
『まあ待て。その手紙の話もするが、あとでだな。それで、魔力の波長によって、魔力属性が判別できると思うのだけど・・・これが全く分からない。そもそも俺たちは無属性以外に何があるか分からない。まあそれはさておき、その波長の乱れで、その魔力を持っている人の強さと誰の魔力かがわかる。乱れが小さいほど強く、大きいほど雑魚だということだ。』
「わかったぜ。」
んー、なるほど、なるほど。こういう説明パートは、実践しながら覚えるに尽きるということで、今は気に病まなくていいか。
『君も魔力感知の熟練度をあげてからのほうが分かる思うよ。』
同じこと思っててワロタ。
「・・・となるが、これはどんな場面だ。えーっと、佐久間。」
「うえ?は、はい!」
情けない声が教室を響かせると、くすくす声が聞こえてきた。佐久間は教室の中央にいるからめっちゃ注目が集まっててウケる。
「アハハハハ!あいつ絶対寝てただろ。」
「えー、あー、寝てました。すみません。」
案の定だな。まったく、真剣に授業うけようぜ。
「はあー、まったく、じゃあ代わりに・・・風凪。」
「は、はい!」
おっと、ここでまさかの僕たちに当たるか。
「お前・・・きいてなかったくね?先生の話。」
「わかりません。」
またもや情けない声が教室を響かせると、くすくす声がだんだんゲラゲラ声になってくる。
もっとも僕はゲラゲラ声のひとつだけど。ガハハ!
「全く・・・じゃあ高篠。」
おー。高篠さんが次は当たるんだ。なんか奇遇?なのか。ちなみに高篠さんは一番廊下側の真ん中ぐらいにいるから、一番窓側後ろの僕からはちょっと見えづらい。
「はい。次郎が家族と別れたらどうなるのか、また、大人とは何なのか、思いを馳せている場面です。」
「その通りです。二人はちゃんと先生の話を聞くこと。」
「「すみませーん」」
「バカすぎ。」
『説明していたから仕方がない。』
「アハハハ。」
ふと、高篠さんの方を見ると、花の方を見ていた。
これが恋する乙女ってやつなのか?勘違いにすぎないかもしれんが。
これは花に言った方がいいのか?いーや言うね。
「高篠さん見てるよ。」
『え?』
僕がそういうと、花は高篠さんの方を見る。高篠さんは花の視線に気づいたのかにこっとして前に向きなおす。これは、やばい。かわいすぎて、昇天する。
『なんだったんだ。今の。』
「ふうー。あんなきれいな少女漫画みたいなシーン一生見れないよ。」
『うーん。そうなんだ。』
「いや、すまん。集中したいはずなのに声かけちゃって。乙女心を養うためにはやむを得んかった。」
『では、下校中に説明するから。校内探検行ってもいいよ。』
「え?本当?じゃあ行ってきまーす。」
やっと、校内探検にいけるで!




