朝の出来事をいれてもギリ王道
薄いカーテン越しに差し込む朝日が視界いっぱいに広がる。
外からは小鳥のさえずりと遠くを走る車の音が混ざり、鼓膜を振動させる。
部屋の空気が一瞬きらめいたように感じる。
「ふー。」
とりあえず一息つく。目覚めるときはいつもこうだ。
修学旅行とか家族旅行に行ったときでも、むにゃむにゃして起きたり、はっとして起きたりせず、すぅーっと目を開けてゆっくり起きる。
普通はどうなのだろう。僕みたいなタイプかむにゃむにゃタイプかはっ!って起きるタイプか。まあでも個人差って言葉だけで片付けられる。今は多様性の時代なのにね。ガハハ!
意外と夢とは覚えていないものだ。だって、今夢を見たかすらも覚えてないんだもの。はっ!って起きるタイプは夢でなにかあったに違いないね、と常々思っている。
あと、むにゃむにゃタイプは、ガチの時とぶりっこの二パターンに分けられるよね。知らんけど。だって、ガチの時以外でむにゃむにゃ音出しながら起きるってどんな時やねん。って考えるとぶりっこのパターンに限られるよね。これは完全なる主観的な固定観念だけどね。ガハハ!
それでは、朝の思考も終わったわけだし、まずは・・・どうしよう。
「お、おきたのかい?」
この声は・・・僕、というか花ですやん!
「ふぇ?ああ、起きたです!」
あー、いろいろ思い出してきたわ。なんか死んだり、魔力あったり、変な怪物が襲ってきたり、そいつを殺したりね。あの後のことは覚えていないけど・・・多分気を失ったのかな。
あれ?おれ骨折れてなかった?あと脇腹大丈夫?って、なんか固定されてるし、傷はあるけど止血と縫合されてる!なんで???
「おはよう。まったく、心配したぞ。」
「あの!この腕って?あと脇腹!」
「あー、骨折れてたし筋繊維ぐちゃぐちゃで直すの大変だったんだぞ?」
「え?すごくね?どうやったの?」
「いろいろ頑張っただけ。」
「えぐ。」
まあどうやって治したかは知らんけどとりあえずありがとうということで、お礼をした。
ところで!今っていつ?どれくらい寝てたんや?
「てか、すみません。僕ってどれくらい寝ていました?」
「二日ぐらいだった気がする。」
なるほど、二日か。なーんだ長くなくてよかった・・・って、
「いや!がっこーう!」
おもわず裏声が出てしまった。失敬失敬。って、思ってるのに!
「笑わんといてください。」
体をプルプルさせながら笑っている。もう!笑うなよ!
「いやー、すまない。久しぶりに相対した言葉がそれとはね。」
「このガキー!」
「すまないすまない。」
体がまだプルプル震えていますけど。まったく、これだから冷笑系男子は。
「まーそんなことよりさ、学校は?どうしてるん?」
話ながらベッドから降りてテーブルに向かった。それにあわせるように花もテーブルに向かった。
「いやー、もちろん登校しているさ。さすがに無口だけどね。」
ハハハと笑いながら花が座り、その前に僕も座った。僕と全く同じ顔を目の前にして会話するって、なんか・・・怖いねえ。
「え、でも授業とか友達とか大丈夫だった?扶郎とか栄花とか。」
「いや、なめられタラ困っちゃうね。」
「なんでやねん。」
おもわず間髪入れずに突っ込んでしまった。癖だね。
「俺はね、君の体の中からずっと見ていたんだよ。」
わっつ?????????いや、え?つまりそれって・・・
「え、あの、まじだったら僕のあれこれとかも見てたし・・・」
テーブルに手を当てて、みを乗り出した。それほど僕には大切なこと!羞恥心は本当に嫌だからね。
「あー、そういうプライベート的なところは目つぶってるから大丈夫なんだけど、問題そこ?」
「いやそうでしょ。」
僕の体の中から見てたってことは僕の性格とか話しぶりとか分かってるってことか。知らんけど、ほんまに。
まああとどんな感じで見ていたのかを知りたいけど・・・あとでいいかな。今はそれよりも聞きたいことがある。
「えーっと、聞き忘れてた?って感じなんだけど、君っていつ僕と分裂したの?」
たしか、二重人格って心が不安定のときに外部からの強い刺激が加わってなるって聞いたことがあるけど・・・記憶ないんだが。
「うーん。」
「うーん?」
「ヒミツ。」
じーっくり熟考してると思ったら出てきた言葉がヒミツとは。
やり手ですよ。なかなかの猛者焦らしプレ・・・んん!あっぶね。アウトワード出るとこだった。
「いや、なんでや。」
「まだいう時ではないかなって感じ。」
花はうつろな目をして喋る。どこか悲し気で、切ない雰囲気。
らしくないし、気になるけど・・・まだふれてはいけないのだろう。
「てか、もう学校だから行くよ。ついてく?」
「え?あ、そっか。もちろんだよ。」
そう思えば、もう時間か。雨雲が広がっているから気づかんかった。
確かに早く行かないといけないか。
「じゃあ用意するからしばしまたれよ。」
「はーい。」
そうして、花は制服を着たり、荷物をつめたりし始めた。
さてと、僕は何をしようかなってところなんだけど、やっぱステータスの確認か。
ほいっと。
『個体名:風凪鳳花 種族:魔人
生命力:一〇〇〇/一一〇〇 魔力量二九〇/三〇〇 魔力属性:無属性
スキル:低・魔力操作 劣・魔力感知 天吸 ソウルコネクト』
おおー。生命力と魔力が回復している!しかも生命力上限とスキル増えてる!熱いねえ。
これって、普通の人よりも強いのかな?なんか、前よりも力がみなぎっている気がする。
あと、今後のためにちょっとそれぞれのスキルについてみてみようかな。
えーっと、スキル詳細はどう見るんだっけ・・・
『低・魔力操作:魔力を操る能力。
劣・魔力感知:魔力を感知する能力。
天吸:魂を持たない魔物質から魔力を吸収し、魔力量を満たす能力。吸収する範囲は半径六八メートル。
ソウルコネクト:魂が同じもの同士はどんな状況でも魔力がある空間であれば、意志だけで通信できる能力。』
へえー、なるほどなるほど。つまり・・・後半二つバカ強くね?魔力切れになりそうになったら回復できるし情報をやり取りするのも秘密裏にできるってこと?オレTUEEEEE系主人公きたこれー!
てかさ、魔物質って何?そもそも、この情報はどこから?もう、わっかんねえよ。
まあいいのですよそれは。次はね、遊ぶのじゃー!いやー、魔力弾とか魔法とか使ってみたいものだわ。
「・・・っしと。もう、行くよー。」
「え、もうー?今から遊ぼうとしたのに。」
「駄々言わないで行くよ。」
「はーい。」
もう、そんな時間かよ。まあいいんですけどね。じゃあ僕も重い腰を上げますか。
「あ、というか、昼飯準備した?」
僕はいつも自分で弁当を作っているのだ。だから、料理がうまいんだよね。なめんなって。これを見ている諸君!
「もちろん、つくっているさ。」
「なら、いいや。」
んんーしごでき!やっぱ有能やな。ほんとに冷笑系有能執事といったところか。ガハハ!
ドアノブに手を伸ばし、先に花が出ていく、そして僕も続いて出ていく。
鍵を花がしめている途中で、僕はふと思った。
ところで、あの謎の手紙は一体どこへ行ったのだろうか。




