表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダイアリーより綴る譚  作者: しゅんゑ
魔獣掃討編
41/41

ヒンナ変 其の一

「がはっ!」

ここは、どこだ?今いつだ?何が、起こった?

「いった・・・」

力を入れようとすると痛みが走って立ち上がれない。

ひとまず整理しよう。

まず、僕は魔獣を倒そうとしてドイツに来たんだよな。それで、『例の物』、毒の魔獣が持っていたライフルで撃とうとしたら・・・

そうだ、光だ。光の柱が魔獣の後ろに立って、ここら一帯を飲み込んで、僕も巻き込まれて、今に至る、か。というか、ライフルはどこにいった?まあ、いいか。

というか服がぼろぼろだし。ヤレヤレ。

そう、落胆しながらも僕は寝たまま辺りを見渡そうと、目だけ動かした。

「ガチ、か。」

見渡す限り、世界は赤黒い焦熱の海に沈んでいた。ひび割れたアスファルトに散乱する瓦礫の下からは、無惨に押し潰された者たちの骸と、黒焦げになった何かが散乱していた。覗かせている。

―――そして何より、吐き気がするほど濃密な、この魔力の濃さだ。大気そのものが呪いのように重く、肌にねっとりとまとわりついてくる。

そんな最悪な状況下、遠くで何かが、動いた。

「まさ、か。」

ここからじゃ僕の魔力感知が届かなくて詳細はつかめないけど、魔眼ならいけるかも。

「魔眼!」

手動だからわざわざ声に出さなくていいけど、なんかかっこいいからつい口に出しちゃうよね。

そう思いながら動いているものを見ると、案の定、魔獣だった。しかし、様子がおかしい。

「右腕が、ないのか?」

まああれほどの威力のものを至近距離で食らったんだ。無理もない。

「とにかく、花に・・・」

そして、ソウルコネクトをしようとすると、激しい音が轟く。

「なんだ?」

そう思って魔力感知を発動させた瞬間、目の前に魔獣が立っていた。

テレビで見たような甲冑は上半身が砕けており、焼けている。

魔獣はしゃがみ込んで僕の目をまっすぐに見つめる。なまはげのような仮面の右半面は割れており、そこから覗かれる魔獣の目にはハイライトがなく、と息が荒い。まじまじと見ると気が狂いそうなほどの、爛れたおぞましい顔。恐らくあの光の影響だろう。

僕を殺すなんてこと、造作でもないと思わせるほど、殺意のオーラが体を撫でる。

「カスデザワシノタナア。」

喋った。が鳴り声で。

なんて言ったのかがわからないし、意味も分からない。

「・・・」

僕は何も言えなかった。

普通に言語がわからないというのもあるけど、それ以上に恐怖で喉から言葉が出ない。

立ち向かいたいけど、怖気ついて、身動きができない。

「カスロコ、ラカウロダキテモタナア、アマ。」

魔獣がそう喋ると、腰に携えていた日本刀のような武器を片手で抜き、大きく振り上げる。

その刀には紅蓮の炎がまとっている。

「くっそ。」

「ダバラサ。」

刀が鳳の首めがけて振り落とされた。

しかし、次の瞬間。刀は地面に突き刺さっていた。

「カニガスサ。」

鳳は瞬魔を発動させて素早く右に避けたのだ。

「便利だな。これ。」

鳳は痛みに耐えながらも立ち上がる。

そこに魔獣の追撃が走る。

「ダリワオ。」

「はぁ!」

魔獣が刀を鳳めがけて切り上げるが、当たる寸前に鳳は再び瞬魔で後ろに下がる。

だが、魔獣はそれを読んでいたかのように踏み込み、高速で鳳を横半分にしようとする。

「ヒッ!」

鳳は高笑いするように、瞬魔を魔獣と自身の間で発動させて、魔獣を吹き飛ばした。そして、地面に着地する。

「ロダソウ!」

魔獣は空中で体制を立て直しながら目を見開く。

「なに、言ってるのか分かんね・・・ブハッ!」

鳳は得意げに笑って見せようとしたが、血を吐いて倒れる。

「骨が・・・」

そう、鳳は肋骨が三本折れ、鎖骨と大腿骨にひびが入り、いたるところで出血をしている。

必然、すでに気合だけでは立とうにも立てず、限界が来ていた。

「ダウヨノキズカウユイエデルマ。テンナダルツヤアヲクョリマニシナリガナツノトイシマタ。ネスデウヨキハタナア。」

「るっせえ・・・」

鳳は倒れたまま魔獣の周りに瞬魔で発生させた。それと同時に、天吸で魔力量を回復し、自身を固定するようにまがいを発動させ、瞬魔と魔力放出で魔獣と距離を取る。

「ネスデクソブクョリカウョシウョシ。」

「マジか。」

魔獣は瞬魔をかいくぐり、即座に鳳を追いかける。

そこからは名前のごとく鬼ごっこ。

速度は拮抗する。

どこに向かっているのか分からない。ただ、後ろからくる恐怖から逃げている。

「ハァッ、ハァッ・・・!」

鳳は絶え間なく『天吸』を発動させ、瞬魔と魔鎧を発動させる。

ワンテンポ遅れれば魔獣に刀を刺されて殺される。

孤独感と絶望感が鬩ぎ合って鳳の心を蝕む。

「―――!」

血でにじむ視界の端に、瓦礫の山に半分埋もれた『それ』が映った。

爆発で吹き飛んだはずのライフルだ。その銃身は鈍い銀色の光を放っていた。

「見つけた・・・!」

鳳は滑り込むようにライフルを掴み取る。弾薬はない。だが、今の僕には『魔力』がある。

即座にライフルの機構へ魔力を流し込み、銃口に即席の魔力弾を形成した。振り返りざま、咆哮を上げて迫る魔獣の腹部に一発、顔面に一発。

轟音。

「グフッ!」

魔力弾は魔獣の仮面を砕き、その前進を一瞬だけ躊躇させた。

「もういっちょ・・・!」

鳳が再び、ライフルを手に取り、魔獣の顔面向けて構えた。

だが、魔獣は甘くない。

魔獣は賭けに出た。

追いつけないと悟り、急に停止し、日本刀を僕の脚めがけて投擲したのだ。

「――っ!?」

鳳は即座に瞬までよけようとしたが、遅すぎた。回避は間に合わず、鋭い刃が僕の大腿部を貫き、その勢いのままアスファルトに体ごとぶつかる。

「ガハッ!」

 体勢を崩し、倒れた僕の視界を、魔獣の巨大な影が覆う。

「―――セヤモヲノモノエマノメ。ヨミカルナウノンゼ。ムイレフ!」

魔獣は魔術を発動させ、鳳に炎を浴びせる。

「う、あっ!」

鳳がもがいた瞬間、逃げ場のない連打が注がれる。鎧に包まれた拳が、鳳の魔鎧を削り、意識を刈り取らんばかりに打ち据えられる。

「がはっ・・・、あああああ!」

血反吐を吐きながらも、僕は冷徹な計算を止めなかった。

鳳は、地面に深くめり込まれながら魔鎧をさらに展開し、ライフルを移動させて、地面に深く刺さるようにする。

そして、魔鎧の出力を弱め、その分とありったけの魔力をライフルに注ぎ、あえて密着状態を作る。そしてライフルの銃口を、魔獣の剥き出しになっている胸部へと押し当てた。

「・・・これでお返しだ。」

至近距離での全魔力開放。

ライフルの銃身が砕け散るほどの衝撃が魔獣の胸を貫き、その巨体を後方へと吹き飛ばした。

「ソック!」

しかし、魔獣は寸前に刀を抜いて、鳳の右ひざを切り刻む。

「うぐっ!」

しかし、鳳は大量出血と痛みに気を取られず、その隙を逃さず、瞬魔を発動。激痛に歪む体を無理やり引きずり、体勢を整える。

「あれ?」

鳳は気づく。自身の左手が燃えていることに。

魔獣のもつスキル『絶対滅炎』は、自身の魔力で発生させた火を任意で消えないようにする。

しかし、鳳はあらかじめその対策を練っていた。

自分の魔鎧を焼く一度着火すれば消えないその炎に対し、焼かれた部分の魔鎧を皮膚のように剥がし、即座に新しい魔力を層として重ね直すことで耐え凌ぐというものだった。

「これは!直接ついてしまっている!」

そう、先の攻防で、魔鎧への出力を減らしてしまったため、魔獣の炎が体についてしまったのだ。

「ナタデニメラウガンセクサ。」

魔獣が邪悪な笑みを見せる。

「クソ!気にしてらんねえよ!」

鳳はさらに火力を増し続ける左手の炎を横目に、ライフルを構える。

そして、即座に瞬魔で瓦礫の山に隠れる。魔獣がおってくる気配はない。

両者ともに悟る。


「最大火力で殺す。」

「ルキシロコデクョリカイダイサ。」


鳳は、地面に大量の血が広がる中、大腿部の傷口の血を固めて止血しながら、ライフルに魔力を込めるのと同時に天吸で周囲の魔力を吸い続ける。これによって、限界までライフルの潜在能力を引き出すことができる。

魔獣は、冥級魔術ソル・ストライクを詠唱していた。ソル・ストライクは器である武器が耐えられるまで炎を貯め、さらに自身にも炎を循環させて身体能力を上げる魔術。使用する魔力量は調整できるものの、魔獣は生命活動に支障がきたさない量を込める。


『花。』

僕はソウルコネクトを発動させ、相棒を呼ぶ。

『え?鳳!お、おま。生きて・・・』

花が飛びつくように応答してきた。あー、心配させてたんだな。

『鳳、大丈夫か?』

『だいじょう、ぶだ。』

ならもう心配をかけるわけにはいかない。

『ああ、良かった。』

花が安堵のため息を漏らしているのが分かる。

『心配したんだぞ。』

目覚めたときにすぐ連絡しておけばよかった。そうすれば心配かけずにすんでいたのにな。

『でもな、花。ワンチャン、また心配をかけることになるかもしれんが、気にするな。』

仮に、僕が魔獣を殺したとしても、もう助からないだろう。生命力を消耗しすぎた。

生命力:四〇/一〇〇〇

『何を言って・・・』

『じゃあな。お前にすべて託すとするよ。』

覚悟は、まだ決まっていない。けど、そんなのお構いなしに、命を賭してもやらなければならないんだ。

それが、この力を授かった義務。

『そろそろだ。』

緊迫感が高まっている。魔獣周辺の魔力もだ。

『―――痛みはお前を突き動かす。』

『ああ。知ってる』

何度も言われてるわ。全く。

『生きて帰ってこい。』

願望じゃなくて命令、か。プレッシャーかけるなー。

「泣くのはまだだ。痛みは耐えろ。絶望にのまれるな。足掻け。信念を原動力に。」

そう呟くと、ふっと笑い、鳳は瓦礫から飛び出し、銃口を魔獣に向ける。

それを待っていたかのように、魔獣は宙に浮く鳳に向かって姿勢を整える。


「ボーン!」

―――ソル・ストライク


超速の弾と煉獄の刀が衝突する。

魔獣の日本刀は魔力質。さらに魔術で強化され、強力な硬さになっている。

その一方で、鳳のはなった魔力弾は、貫通力はあるが、脆く、加えて着弾時の反動が大きい。

当然のことながら、超速の弾は無残にも真っ二つに切られた。

「ここに来ての、瞬魔!」

鳳は魔力弾を瞬魔にしていたのだ。遠隔で限界まで魔力を圧縮し、その周りを薄い魔力で覆い放つことで、真っ二つになった魔力弾は炸裂する。

「ダマダマ!」

至近距離で超速の瞬魔を食らった魔獣は地面に押し戻され体勢を崩したが、すぐさま回転しながら体制を整え、跳躍する。今度は瓦礫を飛ばしそれを蹴って、魔力放出の魔力消費をおさながら、銃撃を食らわないように鳳の周りを高速に飛び回る

「詰めが甘いよー!」

そう嘲りながら、二発目を撃とうと再びライフルに魔力を込める。

―――バキンッ!

刹那、重厚感ある金属音とともに、ライフルが火花を散らしながら崩壊した。

「はい?それはーどゆこと?」

ライフルに込めることのできる魔力量は一〇〇〇。先の射撃で込めた魔力量は二六〇〇。二倍以上も許容量を超えていたのだ。そのため、魔力回路は当然、魔力質自体が耐えきれなくなって壊れてしまったのだ。

「ヒヒッ!」

 武器を失った僕を見て、魔獣はもう怯むことはないと言わんばかりに瓦礫を蹴り飛ばして接近する。

「魔鎧!」

鳳は咄嗟に天吸で周囲の魔力を吸いながら全身に魔鎧を展開する。

しかし、それを気にしないと言わんばかりに、鳳の胸を貫いた。

「ブフ!」

その刃、心臓は避けたものの、肺を損傷させ、炎は胸を焼く。

鳳は密着した魔獣に瞬魔を当てる。魔獣はすでに価値を確信したのか、これ以上深追いすることなく、刀を鳳に刺したまま後ろに下がる。

「ダラナウヨサ。ゾタッカヨツハエマオ。」

魔獣は地上から賞賛する。それと同時に魔術がとける。そして、座り込む。魔獣も右腕欠損。腹部と顔面に二発、瞬魔による衝撃波、魔術の反動、魔力量低下により、死に瀕していた。

そのため、戦うことは死を意味しており、死にかけの鳳にこれ以上構って消耗したくないのだ。

「・・・死なねえ。」

しかし、鳳はいまだ空中いた。鳳は体が焼け、肺を貫かれ、激痛にもがきながらも、

「ところで。この火って、取り込めるのかな?」

不気味に笑う。

「ヲニナ?」

鳳は天吸を発動させる。その対象は自身に点いた炎と周りに散らばった炎。そして、座り込んだ魔獣めがけて、何発も魔力弾を発射させた。

「バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン・・・」

魔獣は、ただひたすらに逃げ回る。

「バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン・・・」

 感情をなくした機械のように、魔獣を追いかけながら際限なく、魔獣がこちらに来る隙を与えぬほど、ずっと撃ち続ける。

「グハッ!」

遂に魔獣に一発当たる。そして、身動きが遅くなったすきを見計らい、次々と魔獣に魔力弾を撃ち込む。

「お前の得意が看破されて、お前がもたらしたものも利用され、そいつらが全部自分の痛みに帰ってくる。」

撃ち込み続けながら地上に降りてきて、魔鎧で体を固定し、浮いたまま魔獣に近づく。

「僕は別に正義のためにお前と戦っているわけじゃない。僕は僕のために戦っているんだ。僕の周囲の人たちが困らないようにしたいんだ。だから、お前が僕の知らない何百万人を苦しめようが、僕はどうでもいいと思っている。」

肺の修復が終了して鳳はペラペラと内心を魔獣にぶつける。

「でも、これだけは思ってるんだ。」

鳳は痛みに耐えながら刀を抜き、魔力操作で魔獣の真上に刀を持ってくる。

「他に苦しみを与えるなら、自分もそれを受けないとおかしいって。」

そういって魔獣の心臓付近に刀を刺した。

「ゴハッ!」

そして、心臓をねじ切った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ