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ダイアリーより綴る譚  作者: しゅんゑ
魔獣掃討編
37/41

信じるためには化けの皮をはがさなければならない

ヤレヤレ、なんで鳳は連絡を入れないのだ。俺はそう思いながら、スマホで魔獣の進路を確認する。衛星からの映像しかないのが惜しいが、国際連合が緊急会議を開き、各国が単独でヘリや車で中継することを禁止するという取り決めがされているから仕方がない。

ちなみに、今俺と栄花は、駅前のカフェで休むとともに昼飯を食べようとしている。カフェ、と言ったが、これが良いソファを使っておりまして。座り心地がとてもいい。

「女子といるときにスマホばっか見てる男子は嫌われるわよ。」

俺が、ソファを満喫しながらスマホを見ていると、栄花が筒に入っているストローを取り、その先を弄びながら、刺すような視線を向けてくる。

「と言いつつも、栄花だって今さっきまでスマホ使ってたじゃん。」

「女子はいいの。」

「なんだそれ。」

まったく、勝手な理屈だ。

「てか、コンビニが病院の隣にあるって神だったね。」

「そのおかげで傘、濡れずに買えたもんなあ。」

俺は窓の外を見やる。濡れたアスファルトが、街の灯りを歪に反射していた。

「メニューどれにする?」

「アイスティーとホットサンドでいいかな。」

「・・・なんか『栄花はどうする?』みたいに会話を広げる努力とかないの?」

呆れたような溜息。なぜ、恋仲ではない俺たちが恋仲のようなシーンを作らなければいけないのだ。ヤレヤレ。

「じゃあ、栄花はどうする?」

「コーヒーと、ふわふわパンケーキで。」

「おっけい。」

俺はレジへと向かい、淡々と注文する。

そして、席に戻る。栄花はスマホを見ていた。本当にどの口が言っていたのだか。

そっちがいいのなら俺もスマホで最新の情報を鳳に与えるとするか。

「―――あのさ、赤松の話からなんだけどさ。」

栄花はスマホに目を落としながら静かに言う。そして、俺の返答を待つかのように口を閉ざす。

「はい、赤松からの話で?」

栄花は口を開くが、思うように言葉が出ないのか、少し、時間が経つ。

一体何を話そうとしているんだ?

「なんです?」

そういい、俺はスマホをしまう。何か、大切なことを言おうとしているんだ。これぐらいは礼儀でしょう。

栄花は大きなため息をして、口を開く。

「あのさ、この際だから言うんだけどさ。中学生の頃のことって、覚えているの?」

全てを、考えろ。今、この一瞬で。

今回の赤松の件と中学時代のことを踏まえると、さすがにあの出来事について問われているということで間違いはないか。つまり、栄花はあの出来事を覚えている。

それを踏まえ、では、なぜ、この質問をしたのか。

普通、「人間」が、トラウマを思い出せば何かしらショックがある。そのショックを見せない限り、いくら親しい友達であっても、そのトラウマを思い出したということに気づけない。

また、鳳は確定であのことを知らない。ということは、鳳が肉体を操作しているときはそういうショックを人に見せていない。

つまり、「鳳花」に直接聞いているのであれば、その質問者は鳳花とあまり面識がない人だということになる。

しかし、質問者は幼馴染。

栄花は鳳があの出来事を覚えていないことはさっきの話から分かる。

それなのに、栄花はあの出来事に関することを質問してくる。

よって、“栄花は鳳と俺を識別している”ことが大確定する。

「え、お、覚えてない・・・というか何それ?」

俺はわざとらしく、しらを切る。

やはり、俺の見立てはあっていたということだ。

「あ、そう・・・」

栄花は寂しげな顔を浮かべ、再びスマホに視線をやる。

俺も満足げな顔を浮かばせて、再び情報を確認する。


―――しばらく、とはってもたった数分後。

スマホで時間を確認する。

十二時三十一分。

そろそろ、か。

『き、き、き、来た。』

「き」が連続した理由は恐怖なのか思いやりか。恐らく、前者であろう。

とりあえず、魔獣と交戦する合図がきた。

『リラックスして、本能に身を任せて打て。周囲の人間を気にするな。反動を気にするな。ただ、まっすぐ相手だけを思え。』

『了解。』

そして、脳内に静寂が訪れる。

「ごめん、ちょっとトイレ行く。」

俺がソウルコネクトを終了したのと、タイミングよく、立ち上がろうとする栄花。

「栄花。」

彼女を、俺は言葉だけで引き留める。

「何? 早くいきたいん・・・」

俺は栄花の言葉を遮るように、酷く落ち着いて、己を信じて、栄花の方に右腕を伸ばし、手を広げる。

「―――くどい。」

声を、冷たく響かせる。

そして、彼女の眉間めがけて“魔力弾を撃ち込む”。

パン!

空間に、金属音が轟く。

青紫の軌跡と紅蓮の火花。

「フッ。」

やはり、魔力は美しいな。

「思い切るね。」

栄花は微笑しながら再び席に座る。

「仮面劇は終わりだ。」

俺はいつでも魔力弾を打てるように右腕をそのまま栄花に向けたまま告げた。

「・・・ま、さすがにバレるよね。」

栄花がふっと肩の力を抜く。その瞬間、彼女の魔力が膨れ上がる。

俺たちレベルではないにしろ、この魔力量。そして、鳳と俺の目を欺くほどの魔力を隠す技量。すさまじいな。

そう感嘆していると、同時に脳内に声が響く。

『撃つ。』

鳳が攻撃を開始した、か。

しかし、俺は返答をせずに、心が痛むが、栄花に冷たい視線を向ける。

「一つ質問いいか?」

「いいよ。」

俺は一回、深呼吸をして問う。

「栄花の意思で、化け物の協力者になったわけじゃないよな?」

静かだ。まるで時が止まったかのように。栄花はピクリと反応したきり、何も言わない。

いや、たった数秒か。

「一個、答えてあげる代わりに私からも一ついい?」

ついに、栄花が口を開く。

「ああ。」

俺はなんなく承諾する。

「君は、鳳花のなんなの?」

それは俺にとって非常に、難しい問だった。


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