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ダイアリーより綴る譚  作者: しゅんゑ
魔獣掃討編
36/41

戦いの火ぶたを切る前の話は必要だろ

ワンチャン猫ちゃんこのエピソードに次のシーンを付け加えるかもです!!!

「ヒャッホォォオオオーーーー!」

現在時刻?現在地?そんなの知らないね!今はただ、この暗闇の中、道路を目印に瞬魔で駆け抜けるだけじゃい!

―――といっても、これを見ているみんなのことを思い、筆者である私が、しっかりと、状況を説明しようと思う。

今現在の日付は、日本時間とドイツ時間ともに六月三日。そして、時刻は日本時間十二時、ドイツ時間五時。鳳は、羽田空港で無賃乗車をし、フランクフルト空港到着後、高速バスでランプツィヒ中央駅まで無賃乗車。その後高速道路の「アウトバーン・ベルリン方面」をつたい、瞬魔と「魔鎧」を絶え間なく発動させ、時速百キロメートルで移動中である。

さて、ここで初登場の「魔鎧」について説明しよう。「魔鎧」とは、さんざんっぱら言ってきた、『あの方法』で、圧縮した魔力を身にまとい、霊体を保護する技である。ちなみにこのわざと技名は花が考案した。

そして、魔鎧を応用させて、自身の周りに、魔力で、前方に丸い頭を、後ろにいくにつれてスッと細くなる、涙のような形状にさせ、空気抵抗を最も小さくさせる。

雑かつ絶え間なく、瞬魔のための圧縮された魔力を作り、魔鎧を維持しているため、魔力消費量がとてつもないが、これもまたチートスキル「天吸」でどうにかしている。

『―――あ、あ、あ、あ、今、どんな感じ?』

『あー、こちら鳳。気分アゲアゲで高速道路を北上中。どうぞー。』

はあ、やっと花は学んでくれたようだ。何をって?急にソウルコネクトを使わない、というごく普通のマナーをね。

このソウルコネクトの突然性を例えるなら、寝てるときに、取り忘れてたエアポッツが急に爆音で緊急速報を流すレベルっていえば伝わるだろうか。それぐらいソウルコネクトは使い勝手が悪いのだ。

これをさっきまでやられていた僕の気持ちを思うと、可哀そうだと思わないか?

今回は小さめの「あ」を連続してくれたから驚かなかったという話だ。

『今の時間を伝えるな。日本時間は十二時五分で、ドイツ時間は五時五分。そっちは今どこら辺?』

十二時五分ってなんでそんな微妙なタイミングで連絡してきた?まあいいや。てか五時ってこんな暗いのに・・・いや、たしかに、言われてみれば明るくなってきてる気が。

そして、今ここはどこだ?標識・・・おっあったー。

『えーっとねえ・・・』

ドイツ語でよく分からんのだが。おそらく、「ICC 100」って書いているあたり、そろそろ環状線か。

『今、環状線の近く。下道に出るところ。』

『了解。下道出たら連絡して。』

『ふぁーい。』

さすがに魔獣が来る十分前ぐらいには着きたいからもうちょいスピード出すか。

それにしても緊張するなー。容姿がどんなんかじゃなくて、事前準備が無駄になるかもしれんっていうプレッシャーと、単独で対峙するっていう孤独感がひしめき合って・・・

もちろん死に対する恐怖もずっとあるけど、まあ、魔力に出会った時から落ち着かなくて生きた心地してないから慣れてそこまで意識することはなくなったかな。

とりま、ちゃっちゃと目標ポイントまで行っちゃいますか。

「それにしても、さっきから車見てねえな。」

ここ一時間ぐらい?高速道路なのにずっと車の気配がないんだよね。まあそりゃそうか。今から三十分後にはここも荒廃になるんなからな。

「ま、そんなことさせねえけど。」

うへへへ!ついに言っちゃったぜ!この頼もしい最強キャラが言いそうなセリフランキング五位ぐらいのセリフを!いいねぇ。興奮してきたー!ガハハ!

「この調子でブンブン行くデイデイ!」

「ふー、着いた・・・のかな?Technische Universität Berlin・・・ベルリン、工科大学かな?まあ名前はどうでもいいか。とりあえず、こんなデカい大学があるってことは、いよいよ首都の中心部か。」

屋上へ飛び上がり、周囲を俯瞰する。もうすぐ壊滅的な被害が出るというのに、地上にはまだ人の気配がパラパラと残っていた。

避難を拒んで家族と怒鳴り合っている者。混乱に乗じて空き巣を働く火事場泥棒。ドイツ国旗を掲げ、未曾有の災害なんて嘘だと叫ぶデモ隊。

「強盗、居残り、現実逃避・・・地獄の三択だねえ。」

ドイツの治安部隊も、すでに被害があるところ出払っているのか、もはやここは法の届かない空白地帯だ。

「死んじゃうってのに、馬鹿なのかな?」

そう冷ややかな目で点在している人に目をやる。

いやね、僕だってなるべく犠牲は減らしたいさ。

というかそのために、はるばる、命をかけてここまで来たんだぜ?

それに、ここに残っているのは自殺願望を持つ人か悪党だけだ。

なら、そんな人たちを助けるという手段をとるのは相手にとって、世界にとって、僕にとって、

「非効率極まりない。」

僕がかっこよくそう告げた瞬間、僕の頭に「声」が響く。

『鳳。下道に出たら連絡しろって言ったよね?』

『ウェイト! っびちゅりしたあぁぁ!』

何度!何度、何度、何度、何度、何度、何度!何度、言えば気が済むんだこの「自主規制」野郎! 心臓が口から飛び出してベルリンの空に消えるかと思ったじゃないか。

『「びっちゅり」って何?』

こいつ、人の噛み方に呑気にツッコミやがって。くっ殺されたいのか?

『お前が急に繋ぐからだろうが!こっちが時速百キロで走ってたら、今ごろ魔力操作ミスって地面にめり込んで死んでたぞ?』

『元はと言えば鳳が悪い。下道まであと少しと言いながら、いつまで経っても連絡がないから心配したんだけど。』

あ、やべ。そういえばそんな約束したっけ。普通に忘れてた。

『いやー、意外と道がスムーズでさあ。すまんね……』

ソウルコネクトに呆れ返った花の深いため息が響く。

そういう失礼なのを相手に聞かせるのってだいぶアレな人だよね。

『まったく。・・・で、今どこ?』

『ベルリン工科大学。ここ、魔獣の通り道になるのか?』

『工科大学か・・・』

―――間がある。

恐らく花が向こうで、スマホを使って調べているんだろうな。

『なら大丈夫だ。現在十二時二十分。最新の予測では、魔獣の炎はベルリンの国会議事堂へ一直線に向かっている。そこから「例の物」の照準を合わせておいて。』

『え?国会議事堂?・・・あそこか? 遠くね?』

暗いし、遠くてあんま見えないけど、ガラス張りのドームが見えるから場所は特定できた。というのも、ドイツの国会議事堂は屋上が巨大なガラス張りのドームだからな。博識だろう?

『そのための「魔眼」でしょ。』

そんな自画自賛を切り裂くような放任主義!呆れてまうで。

『せやな……。了解、やってみるよ。』

『いい? 戦闘を開始する前には「絶対に」連絡してよ。』

『へいへい。』

僕は大学の屋上に腰を下ろし、静かに精神を集中させる。そして、魔眼を作成する。その視界の先、朝焼けに染まるベルリンの空が、不自然な陽炎に揺れ始めていた。


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