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ダイアリーより綴る譚  作者: しゅんゑ
魔獣掃討編
34/41

ダブル主人公なら相方の話をするのが王道でしょpart2

「・・・いやー、この問題クソすぎだろ。」

古典の授業が終わり、休み時間。

扶郎が教科書を俺の席にたたきつけ、手を握りしめながら愚痴をこぼす。

「それな。僕もそれ思った。」

俺も同様に、広げられたページである、古今著聞集「飲食」に指を突き付けながら愚痴をこぼす。

「こいつが、勝手に家に盗みは言って灰食べたのに気付かずほにゃらら・・・正直言って俺は憤慨中だ。」

「僕たちに人の心がないとかじゃなくて、この作者?に人の心がないって話。頭沸いてんのか。この『自主規制』。」

「えー、言い過ぎぃ!」

「いや、これは言い過ぎではありますん。」

「どっち??」

俺は立ち上がり、扶郎とともに、ロッカーへ向かう。

「でさ、その赤松って人について聞いたんだけどさ。まず、一言言っていい?」

ロッカーを開けようとした扶郎が、何やら腑に落ちないといった風に眉根を寄せてこちらを凝視してきた。

なんで、そんな顔をする?鳳のやつ、俺が『例の物』を作っているときに、何しでかしたんだ?

「な、なんだ?」

俺は警戒し、少しだけ腰を低くして彼の機嫌をうかがう。

「いや、Eの友達に聞いたら、その赤松って人、女子やん。俺男子だと思ってたから、何気なく聞いたら、『お前のこと好きなの?』とか冷やかされて、散々な目に遭ったぞ。」

・・・はあ、マジか鳳。なぜそんな最も基礎的で重要な情報を共有しなかった。

対象が男子か女子かでは、聞き込みのハードルも周囲の目も変わってくるだろうに・・・

俺は今ごろ空港で優雅に過ごしているであろうもう一人の自分を、心底恨めしく思った。

「それは、すまん。抜けてたわ。」

本心からではないが、一応、奴の尻ぬぐいとして軽い謝罪を口にする。

「はあ、しっかりしてくれよなああああああああああ。」

そして、扶郎は発狂した。

「おっ、気が狂ったか?」

次の瞬間、扶郎が突然天を仰いで発狂した。周囲のクラスメートが一瞬こちらを見るが、すぐに「いつものことか」と視線を戻す。

これまでの彼の奇行をいちいち記述していなかったが、これは彼にとっての日常茶飯事、いわば生きるための準備運動のようなものだ。ちなみに、鳳もたまにこれに近いことをする。

「まーじで、もう勘弁よ。」

扶郎は一息つきながらそう言った。

「すみません。」

俺が謝ると、扶郎は声を潜めた。

「で、その赤松・・・さん、なんだけど、友達からの第一印象は暗いだそうです。」

「ほう。」

「第二印象は変なやつだそうです。」

「ほう?」

思わず漫画でよくある顎に手を当て、首ををかしげるポーズをとってしまった。いろいろ言いたいことがあるのだが。

「ん?なんで、語尾が上がった?」

扶郎はそう問いながら、次の授業の教科書を取り出す。

「いや、第二印象なんて言うのかっていう疑問と、変な奴だっていう情報に対する疑念によるものです。」

そして、俺も次の授業の教科書を取り出す。

「第二印象って普通にいうくね?」

「あ、聞きたいのはそっちじゃないです。聞いた僕が悪かったよ。」

「なんやねん。」

「なんやねんじゃないだろ。」

「で?変な奴って情報だろ?なんか赤松さん、相当人を遠ざける・・・というより気嫌いしてたみたいでさ。不登校になる前、だから四月の自己紹介のとき噛みすぎてみんなが笑った時に、何も言えなくなってそのまま着席したらしいよ。」

「ま、じか・・・」

いじめと呼ぶには些細なことかもしれない。だが、赤松が繊細で人前に出るのが極端に苦手な少女だとしたら、それは彼女の心に致命的な亀裂を入れたはずだ。

―――いや、だとしても、それだけで自ら命を絶つまで追い込まれるだろうか・・・

疑問は残るが、一つの大きな足がかりを得たのは確かだ。

「なんとなくわかったわ。ありがとう。」

次の授業は教室移動が必要なため、俺たちは人であふれている廊下に出る。

「大切なことだから何度でもいうが、重要な情報をあらかじめ伝えておけよな。あと、ジュース奢れし。」

それは、鳳に言ってください。あと、鳳が帰ってきたらおごらせますよ。

「了解、いつかな。」

「はい、指切り。」

扶郎はそういいながら小指を出す。

「あいよ。」

俺も小指を出し指切りげんまんをする。

―――子供かよ。

俺がそう言おうとした矢先ふいに扶郎の動きが止まった。

「ん?待て待て。あの影は・・・栄花さんだ!」

「栄花?ああ、たしかに。よく気付いたな。」

数十メートル先、がやがやとした人混みの中に、確かに彼女の姿があった。

「神の気配は神々しいからな。すぐにわかっちゃうんだよ。」

「神って・・・まあいいや。てか、呼んでやろうか?」

「殺すぞ。」

「冗談ですよ。」

扶郎の過剰な反応を適当にあしらう。

だが、その時だった。ふっと、遠くにいる栄花の視線がこちらを射抜いたのを肌で感じた。

扶郎は彼女の姿を見ているだけで満足しているようだが、彼女の視線は明らかに、こちらに視線を送っている。

絡まれるのは面倒だから、早くいくとするか。

「早くいくぞ。」

その視線を振り払うように、俺は歩速を上げた。

「急に?」

「ほらほら。」

「へいへい。」

背後で扶郎が間の抜けた返事をするのを聞き流しながら、俺はさっき聞いた話を反芻する。

赤松の自己紹介での失敗。それが彼女にとってどれほど決定的なものだったのか。

そして、この情報を今、鳳に伝えた方がいいのか。俺は悩んだが、結局何も伝えないことに決めた。


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