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異変をいれるのを王道と呼べ

「たっだいまーといってーもだーれもいない。」

玄関を思いっきり開けて思いっきり大きな声を出しながら家に入った。

けれど、安心してくれ諸君。

マンションだけどバイトがなくて十七時半に帰ってこれたから周りの部屋には誰もいない。

一人っ子だし両親は海外出張でいないから一人暮らし。

夢のような高校生活だろう。

まあ、ここで普通の高校生なら、友達を家に呼んでパ―ティしたり、彼女を招いておうちデートとか、あんなこととかするものだ。

しかし!僕レベルになると一人を充実する快感、これに夢中になる。実に素晴らしい。

あ、けっして友達及び彼女がいないわけではないからな。有無はノーコメントだが。

「アニメ見ようと思ったのになぁ。面倒くさいことになっちゃた。」

ポッケトから例の手紙を取り出して、再度異常がないかを確かめた。


「三十分くらいいろいろ試したけどこれはおもしろい。」

時計を見ると、時刻は十八時を過ぎている。

火であぶったり折ったり冷やしたり落としたり蹴ったり殴ったり水をかけたりしても、何も起きなかった。

そう、ぼろぼろにならずにね。

ぼろぼろにならないってどういうことだよ。まったく。

「とりあえず、服着替えて飯の準備するか。」

制服をロッカーにかけ、洗いものを洗濯機に入れて回し、寝間着を着た。

そして、エプロンを着てキッチンへ。

こういう人間でも料理は得意なのだよ。

「よし、今日はカレーにでもしようかな。」

そう思い、鍋をとろうとした瞬間、

「はぁ?」

窓を見てそんなことはないと自分に言い聞かせる。

絶対に幻覚だと自分に言い聞かせる。または夢だと。

5月の中旬にも関わらず”雪が降っている”なんてありえない。

面倒くさがりだが、幸いキッチンとベランダはたった六歩だ。

すぐ確認できる。

「これは、驚きすぎで言葉が出ないというのか。」

そう思いながら、キッチンから一歩踏み出す。なぜ、こんな時期に雪が降っている?

二歩目。なぜ、寒くもないのに降ることができる?

三歩目。なぜ、窓から手を出して確認しようとしない?

四歩目。なぜ、体がいうことをきかない?

五歩目。なぜ、ベランダに雪が積もってない?

六歩目。なぜ、家の周りにしか雪が降っていない?

思考よりも先にベランダに出ると、頭から熱いものがすり抜けるような感じがして、僕は気を失った。

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