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ダイアリーより綴る譚  作者: しゅんゑ
魔獣掃討編
29/41

何気ないひと時を入れるのは王道だと思う

僕はいつもの教室の隅で心地よい朝日を浴びながら、外を見てただぼーっとしていた。

ショッピングモールの一件以降、休日はずっと「斜陽」を読みながら、彼女のことについて考えていた。

不登校っていう事実にはさほど驚いてはいない。人にはそういう時期が必要だと思うからだ。僕が本気で驚いているのは、去年までは、あんなに元気があって明るかったのに、実際に合ってみて。数か月間であそこまで痩せて、あそこまで悲しい顔をするように廃れていたことを見たからだ。

人間の心理を読むのは非常に難題だ。どのような経緯でああなったのか、分からない。そういう経験を踏んだことがないからどうやって接すれば良いのかもわからない。

僕はただ何もできず指をくわえているだけだ。

「おっはー!」

頭をふわふわさせていると、背中に伝わる衝撃とともに、どこかかわいらしい声が聞こえてきた。扶郎がふざけて変な声を出していると思い、僕も振り向きながら陽気な声であいさつする。

「おはよん。」

俺は振り向きざまに、ハイタッチからの握手に持ち込む流れで手を差し出す。

そして―――掴んだ。

しかし、次の瞬間、僕が掴んでいたのは、ごつごつとした男の手ではなかった。

柔らかくて豊満な「何か」であった。

そして目の前に広がる大迫力の「何か」。

さらに、このかわいらしい声。

―――僕は今とんでもないことをしているのではないかと緊迫する。僕は思考する。次に僕がしなくてはいけないことを。それは電光石火の土下座一択だ!。(ここまで0.001秒)

 僕はひとまず「何か」をがっしり掴んだ後、素早くポーカーフェイスを発動し、わざとらしさを一切出さないように一芝居を打つ

「今日は早いな扶郎・・・って!はっ!」

僕は自分に相手は扶郎だと暗示をかけて、しゃべりかる。

そして、気づいてなかったような面と声色で、情けなく「はっ!」という。そして、即座に手を離した。

相手が立っていて僕が座っている関係上、僕は見上げなければならないのだが、「何か」で顔がよく見えない・・・が、なんとなく誰かは想像つく。

「あ、なんか、急にごめん。」

目の前に立つ空嵩さんは赤面を見せて苦笑しながら、そっと僕と距離を置いて手を合わせてペコッと謝る。

「い、いや。まじで、ごめん。佐久間かなって思って。まじごめん。」

僕も誠実さを全身に出して、椅子から降りて、床に頭をこすりつけて、全霊をかけて土下座にて謝る。自分が犯罪者にならないように。

「私は平気、平気・・・」

空嵩さんはますます赤くなる頬をみせながらペコペコする。僕も負けじと頭を下げる。

「いやごめんー。」

僕が一瞬顔を上げると、彼女は気を取り直した面持ちをもって、僕に話しかける。

「大丈夫だって。だから頭上げて。」

あまりに彼女が必死に頭を上げるように促すので、僕も仕方く謝罪を繰り返しながら、頭を上げて椅子に座る。

「それよりも、私、一つお願いしたいから風凪君のところに来たんだけど・・・」

「その要件というのは・・・?」

「あと、二週間後でテストじゃん。私勉強全然できなくてさ。だから手伝ってくれない?」

あーたしかに。テストは六月の中旬で、今は六月二日。そろそろテスト勉強しないとまずい時期か。僕は年がら年中暇だから悪くないかもな。目の保養になるし。

そして、まあ聞くまでもないが、なぜ僕なのか聞くとするか。

「いいんだけどさ。僕なんかでいいの?友達と勉強すればいいんじゃない?」

そういいながら僕は空嵩さんといつもつるんでいる、登校してきて間もない友達集団の方をさす。

「いや。私の友達頭悪いからさ・・・風凪君って首席だったじゃん。だから知恵を貸してほしいなーって。」

相場はそれが理由か。高校一年生の時もそんな理由で、クラスの男子に勉強会に誘われたこともしばしばあったからな。その時も僕は優しいから快く引き受けたけど。

「なるほどね。ちなみに誰が行くの?」

「えーっと、紫陽ちゃんと結良ちゃんかな。」

ちなみに二人とも女子だ。

「まって。男子って・・・?」

「誘ってないけど・・・」

「ごめん。さっすがに厳しいっす。」

僕は言葉を聞いた瞬間反射で断った。

「えー!まあさすがに女子三人と男子一人は心苦しいかもね。」

空嵩さんは僕の断りを快く受け入れてくれた。

僕は思った。女子一人とならともかく、女子だらけのユートピアに男子を一人だけ放り込むというのはハイリターンだが、ハイデメリットが過ぎる。これで誘えると思っているのなら男心というのをまるで分っていない。

とはいえ、代替案も出さず断るというのはイケメン男子の名がすたる。彼女たちは頭のいい人を捜し求めているらしいから、頭のいい女子を身代わりにするか。

僕はとある人物の顔が浮かんだ。

「高篠さんはどう?」

「え、神楽ちゃん?」

「そう。多分僕よりも高篠さんの方が教えるのうまいよ。」

「そうなんだ。じゃあ、風凪君の代わりに神楽ちゃん誘ってみるね。」

「いいんじゃね。」

僕がそういうと、かわいらしい笑顔で「ありがとう」と言いながら登校してきた友達集団の中へ向かっていった。

ふうー。危なかった。かわいいの耐性を持っている僕じゃなかったら、あの笑顔と「何か」で普通の男子はイチコロよ。いやー思春期のときに栄花のかわいいを浴びててよかったぁー。栄花に感謝よ感謝。


ギーンゴーンガーンゴーン

昼休みのチャイムが鳴った瞬間、教室はまるでスイッチが入ったみたいに騒がしくなる・・・なんかデジャブを感じる。

ちなみに僕もその騒がしいの一員だ。というのも、べちゃべちゃしゃべっているからな。

「なんか、みんなスカート短くね?」

扶郎が弁当を片手に持ち、もう片方の手で女子の足を指さす。

「たしかに、それはそうかもしれない。っが!みんな靴下が長いのがナンセンスだな。」

僕は双眸を細く、鋭く、静かに扶郎の視線の先に注いだ。スカートが短くなっても、長い靴下をはいていれば見える面積が小さくなって意味がなかろうにと、僕は顎に手を当てながら黙考した。

「いやいや、旦那。靴下が長いのはいいじゃないですか。なんたって、生足がちらついて、なお高揚するではないですか。」

僕は驚く。

「感心したぞ。そこまで考えを巡らせているとは。なるではないか。」

僕がゆっくりとうなずくと、扶郎はもう無理だといわんばかりに、吹き出した。

「ハハハハ!もうっ、無理!きんめぇー。」

「ほんとだよ。クソきもちわるいわ。」

僕と扶郎はお互いに肩をすくませながら席に座り、弁当を広げた。そして、扶郎はスマホを取り出し、何かを調べるそぶりを見せた。

「何調べてんの?」

僕が疑問を投げかけると、扶郎は画面をポチポチしながら言った。

「今ヨーロッパヤバいらしいって話。」

「あーそれね。毎日のようにテレビでやってるから嫌でも耳にするわ。」

僕は興味なさそうにふるまう。

「それで、今ネットでこんな動画が流れてるってわけ。」

「なにそれ?」

僕がそういうと、扶郎はスマホの画面を僕に見せる。

「ほらこれ。」

スマホに映し出されたのは家が燃えている動画だった。辺りがぼうぼうと激しい光を出しながら燃えている様子を見るに、この動画があるところは魔獣が起こしている火災の地域だろう。炎が魔力で満ち溢れている。

だけど、「ほらこれ。」といわれても、それだけしか情報がないのだが、何が言いたいのだろうか。

「つまりどういうこと?」

僕がそう言うと、扶郎は無言で動画の再生バーを右にスライドし、左にスライドさせた。画面はコマ送りのように木造の家が燃えている様子が映し出られていった。建物全体が業火に包まれ、、燃えながら崩れ、その後もずっと燃え続けている様子。空は黒煙に包まれているが、日が昇り、また日が落ちているのを見ると、どうやら一日経っているようだ

「この動画、定点カメラで撮られたもので、そのデータは火災が起きている所から離れた所に送信されたから拡散されているんだけどさ。この動画の時間がほぼ二十四時間。この動画は何かが変なんだけどさ。分かる?」

「え?急に問題?」

「まあまあ。とりあえず、何が変なのか答えてってば。」

しゃーねーな。いっちょやったるか。とはいってもまあ普通に考えて四時間って長くね?ってことを考えれば一瞬でわかるわ。あと判断材料として、まず扶郎がコマ送りのように再生バーを右往左往させたこと。

「ヒント・・・いる?」

「いや。そんなのいらんだろ。さすがに。」

「うそつけって。じゃあ試しに言ってみろよ。」

僕は涼しい顔で自信満々に言った

「ずーっと燃えているってことでしょ?さすがに一日燃え続けているのに威力は変わらない。木造建築だからとはいってもこれは不可解すぎる。」

「簡単だったか。さすがに。その通りで、木造建築が威力変わらず燃え続けているのはおかしいって、海外ではかなり盛り上がっているらしいぞ。」

扶郎はスマホをしまい、弁当を食べ始める。僕も弁当を食べ始める。

それにしても燃え続ける炎か・・・これは魔獣のなんらかの技なのか、そういう魔力属性なのか。とにもかくにも、あの頬には触れない方がよいという新しい情報が入ったんだ。ラッキーってことにしておこう。


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