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不思議な女の子と手紙というのが王道でした。

「・・・起立、気を付け、礼。それじゃまた明日―。」

先生が「明日」を言い終わる前に、教室はまるでスイッチが入ったみたいに騒がしくなる。何かデジャブ感じるな。まあいっか。僕は今日そっこーかえってやることがあるんだよね。うっきうきよ。

「ちょっといい?」

後ろから声をかけられた。声の流れ的に僕に話しかけていると思う。

そしてこれは女子の声。これは服をつねられ恥ずかしながら「放課後、体育館裏にきて」といわれ、告白されるイベントキター!と思ったが彼女いない歴=年齢の僕にそんな展開来ないか。

そもそもつねられてないし、なんだよクソ。とコンマ数秒のうちに思考し振り返ると、案の定振り返ると幼馴染の露崎栄花がいた。

「はぁ、どうしたんだよ。」

「何でそんな悲しそうな顔してるの?変な期待させちゃった?」

う、図星☆

「くっそー、むかつく。」

「顔にも声にも出てるけど大丈夫そ?」

ぎゃばー!こいつ、中学まではかわいい程度だったのに高校に入ってから煽り火力増してんな。

まぁ、そっちがそれならこっちもかましたらぁ!

「いま、何かに迷えるエセ王女様よりかはましだね。」

「あっそ。」

「流すなー!」

「そんなことよりちょっときて。」

そういうと、栄花は僕の腕をグイグイひぱって連れ去られた。このやろう本当に悪い奴だなぁー。


ついてきたけど非常階段まで来たんだが・・・ここって、玄関から一番遠いから人来ないんだよな。

「で、階段まで来たけどどうしたんだ?」

「これ。」

渡されたのは手紙・・・これはもしや。

「下駄箱とかに入ってた感じか?」

「とりあえず中見て。」

どれどれ、どんな奴が狙ってるんだ?もしかして、扶郎のやつやりおったか?って、あれ?これは・・・

「『風凪鳳花にわたせ』ってかいてあるのですが、あっていますか。」

「そう。朝登校したらそれが入ってたってわけ。」

なるほどね。

「これは・・・どういうことなんだろうな。」

手紙には風凪鳳花かぜなぎおうか、僕に「わたせ」としか書いていない。匂いも嗅いでみたが異常はない。横書きに改行なしに一直線に書かれている。そのほかいろいろ調べてみたけど異常はないな。しいていうなら・・・

「これ、手書きにしては字がうますぎるね。」

「さすが、高校入試首席君。早いね。」

ゲへへ、ここで、COしちゃうか。そう、僕、まあまあ頭いいんですよ。いままで、中二をこじらせたいキリ陰キャ高校二年生だと思ってたみなさん、お疲れ様です。舐めないでくださいね。ガハハ。

「首席と言ってもケアレスミスが奇跡的になくて全教科満点だっただけだし、調査書点なんて簡単に取れるじゃん。」

ここで照れると相手の思うつぼ。ここは栄花を小馬鹿にするように謙遜しつつも自慢する。

これが相手の気持ちと自分の気持ち、両方とも傷つかない会話の高等テクニック。

とはいっても、本当のこと言ってるからナチュナルなんだよね。

「それがナチュラルだから彼女出来ないんだよ。」

「いや、なんでだよ。」

しかも、図星ってるし。こいつ人の心読めるんかって。

「そんなことより、この手紙、筆圧も文字の太さも大きさも同じなんだよ。」

んー流されたけど、今はそれどころじゃない。

「そうだな、そんな芸当ができる人はこの世にいないと思う。」

やっぱ口に出すとやっぱ身の毛がよだつな。ちょっぴり怖い。でも、一番怖いのは・・・

「大丈夫か、栄花。顔色悪いぞ。」

涙目になってる栄花か・・・うーん、かわいいけど、心配の方が勝つ。なんともいえないな。

「大丈夫なわけない。だって、自分あてじゃない正体不明のものが自分のところに来てるんだよ。その手紙の謎に気づいても、そんな意味の分からないことを友達に話してもあしらわれるだけだよ。」

僕はしばらく彼女のことをみつめてやった。

「頭ポンポンしてやってもいいぞー」

声かける言葉を熟考しても意味ないから最初に浮かんだものを言えばいいよね。

「死ね。」

「すみません。」

ストレートすぎて悲しい。もうちょっといいかたあるよね。

「でも、ちょっと安心した。」

「惚れちゃったりは・・・」

ここでこういうことを言うのはテクいな、われながら。

「風凪、いまこういうことできる男子ってすごいをなって自己満したでしょ。顔に出てるよ。」

「っスー、いやーそんなことはないんですけどね」

「フッ」

僕はあたふたしていても気づけるのだ。栄花の口角が少し上がったことをね。まあ、元気になったならいいか。

「それでさ、手紙に心当たりとかってない?」

「あるわけないよ。分からないことが多すぎるんだよな。」

いつ、だれが、なぜ、どのように手紙を書いて栄花の下駄箱に入れて栄花経由で僕に渡そうとしたのか。マジむずいな。

「でも、もう栄花は心配しなくていいな。」

「どうして?」

「栄花の下駄箱に手紙が入っていた理由は、たぶん・・・いや絶対、栄花しか僕に渡してはいけなかったから。そして、その仕事は終わったからもう栄花は心配しなくていいの。」

てことは、僕がやばそうなんだけど・・・まあ大丈夫っしょ。きっと多分おそらくね。

「なるほど。たまには頭回るんだね風凪。ありがとう。」

最後にあざとく感謝すれば前言撤回になって思ってるんだなぁー。

「なんのなんの。なんか変なことに巻き込んですんませんねぇ。ホント!」

こっちも皮肉り返したる。

「私は大丈夫。あとは任せるけど、何か困ったことがあれば連絡して。あとそれ持ってて。」

「え、ああわかった。」

そういって僕は栄花から手紙をもらった。すると栄花は立ち上がった。。

「じゃあ私、先帰るから。ばいばい。」

「うん、それじゃまた。」

手を振ると、玄関の方へ去っていった。

「さてと、俺も帰るとするか。」

内心めっちゃ怖い。でも、それよりも心が躍る。

なんで、僕にそんな手紙を残したのか。

もしかしたら、この日常に何か、何かが起こるんじゃないのか。そう思うと次第に笑みがこぼれる。

手紙を握り締めて僕は家へと帰った。この時、あんなことが起きるなんて僕は知る由もなかった。

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