ほっこりしていきましょうby神楽
「・・・―の、・・・みません。」
なんだこの天使みたいな声は。何を言っているのか分からないけど、心地いい。
匂いも、かわいい女子みたいだ。こんな夢で一生を過ごしたい。
「すみませーん。」
どんどん、声が鮮明になっていく。そして、意識が戻り始める。ここは現実か。
まずは超高速で状況整理。最後の記憶から辿る。
四時限目が終わり、疲れと眠気で机に突っ伏し、雨雲が広がる空を眺めて目を閉じて―――。
そして今に至ると。
つまり、今まで寝ていたと。なるほど。
「・・・ん?ああ、ごめん寝てた。」
これがベストアンサーとみた。
というのも、僕は高校一年生の時に暇すぎて昼休みに狸寝入りに勤しんでいたところに、業務的なことで僕に用があった人に、呼ばれたとき、バッて起き上がって、そいつと話した後に、その一分後ぐらいに遠くから「狸寝入りしててさあ、キモくね。」と。いわれたんだよ!
・・・ざっけんなよ。人の勝手だろ!
ってことがあったので、机の上で腕に顔を埋めているときは、しっかりと「寝てたって」というのがテンプレであり最高だと、思うようになったのです。まあ、今回に関してはガチで寝てたから本当のことなんだけどね。
「で、なにかよう?」
そういいながら相手の顔を見ると、なんとそこには高篠さんがいた。
高篠さん本人は覚えてないけど、あんなことやこんなことが前あったから、ちょっと距離感みたいなやつを感じてねえ・・・一言でいうと気まずい!
「え、あー。そのー。」
僕が高篠さんと目を合わせると、高篠さんは目をそらすかのように外の風景を見た。
なんで、もじもじしているの?なんか、前も同じ事やっていたよな。
とりあえず、前みたいなハニトラかもしれんから、魔力感知やっておくか。
「ん?どうしました?」
そういいながら僕は魔力感知を発動させた。結果は白。さすがにか。
で、前はハニトラだったけど、今回そうやって頬を赤らめている意味が本当に分からんのだが。
高篠さんって、人と話すの苦手じゃないと思うけどな。
もしかして、ガチ告白か?いやーマジか。ちょっと、顔熱くなってきたー。
「あ、あ、え、あ、」
視線が泳いでいるし、口元が引きつっているし、頬だけじゃなくて、耳まで赤くなっているし・・・
なんやこれ。僕もドキドキしてきた。これが・・・恋?
「えーっと、一回落ち着こう。」
焦っている女子に対しては、まず宥めさせる。これがモテる男の所作ってもんよ。ガハハ!
「は、はい。」
高篠さんが胸をなでおろしていると、僕の席に向かって豊満なアレをぶらさげながら、僕に近づいてきている人影を確認した。
「どうも。」
僕が先に挨拶をすると、挙動がおかしい高篠さんが後ろを振り向く。
「謝るの遅くなってごめーん。」
目の先には、手を合わせて謝りながら僕の席に来るた空嵩さんがいた。
あまりしゃべったことなかったけど、この人って結構陽気なんやな。
「いや、大丈夫大丈夫。そっちこそ大丈夫そ?」
あ、やべ。気おされて爽やか系イケメンにするの忘れてた。
まあ、面倒くさいから別にいいんですけどね。
「うん、平気平気。」
おでこを見せながら言っているけど、たんこぶになっとるやん。まあ本人が気にしていないならいいけど。
そう思っていると、空嵩さんが高篠さんの方を見て、何かに気づいたかのような顔をして、僕の耳に何かをささやいてきた。
「あっ・・・なんか取り込み中でしたか?」
「え?今?」
今気づいたんかい。びっくりして声に出ちゃったよ。
あと、アレが僕の腕についているし囁きASMR助かるし。今の時間だけループしてほしい(切実)。
「えーっと。私はいいですよ。また、後で伺いますから。」
蚊帳の外にいる高篠さんがしゅんっとした顔で話しかけてきた。やっと、落ち着いてくれたか。
というか、高篠さんはいいのに。空嵩さんが割り込んだのが悪いんだし。
そう思っていると、空嵩さんが苦笑して、
「いや、いいよいいよ。私が邪魔したのが悪いんだし。」
ほら。空嵩さんも同じこと言っているよ。
「いえ、本当にいいです。それでは。」
「ちょっま!」
僕が引き留めようとしたが、それよりも早く高篠さんが踵を返して廊下の渦に飲まれていった。
「なんか・・・ごめんね。」
「空嵩さんのせいじゃないからいいよ。」
「どんなこと話してたの?」
「いや、わからん。」
いや、そうよ。ガチでなにを言いたかったんだろう、高篠さん。
あとで来るらしいけど、放課後は忙しいし、多分明日ってことやろ。
「あ、そうなんだ~。」
その、初々しい恋を傍観して、たまにその恋進展させるようなおばあちゃんみたいな目やめろ。
高篠さんとはそんなんじゃないし・・・いや、そんな時もあったか。中身は違ったけど。
「てか、風凪君ってそんな感じで喋るの?」
「え、うん。え?」
まあ朝のやつは、イケメン高校生役を演じていたからな。って今言うと、ガチでキモがられると思うから死んでもいえんけど。
「いや、ごめん。なんか変なこと聞いちゃって。」
「あ、はい。」
適当な相槌。いいね。
「じゃあ、そろそろ。」
「じゃあね。」
そういって、友達のもとへ行く空鷹さんを見届けた。
なんか、一気に疲れたな。なんでや。十分ぐらい寝ていたのに。
・・・あ、そっか。まだ飯食ってねえや。
「さてと、飯食うか。」
僕は机に、朝の手抜き弁当を広げ始めた。




