かすかな声
俺は19歳でありながら、高校1年生というちょっと変わった立場にいる。そんな俺が、5歳年上の彼女と恋愛関係にある。
彼女と出会ったのは、月が美しく、蛍が静かに舞っていたあの夜の公園だった。
コンビニからの帰り道、ふと静かな声が聞こえてきて、公園を覗いた。そこにはベンチに座り、苦しそうに涙をこぼす女性の姿があった。
俺は思わず彼女に近づき、そっと隣に座って声をかけた。
「…あの、大丈夫ですか?」
すると彼女は驚いたように顔を上げ、「はいっ!!」と大きな声を上げた。
「えっ、誰!?…おばけ!? やだ、近づかないで!!」
俺が急に話しかけたせいで、彼女はどうやら俺のことを幽霊だと思ってしまったようだ。
その勢いに俺も驚いてしまい、慌てて両手を上げた。
「うおっ…!す、すみません!! 俺はただ…あなたが泣いてるのを見て、なんだか…自分の犬が悲しんでるみたいに思えて、放っておけなかったんです!」
つい、心の中の言葉が口を突いて出た。
「犬?」
彼女はきょとんとした顔になり、次の瞬間、ぷふっと小さく笑った。
その笑い声に俺はますます恥ずかしくなり、顔が赤くなるのを感じながら「…すみません」とつぶやいた。
「いえいえ、ただ…急だったので。笑っちゃいました。こちらこそ、ごめんなさい。」
「そうですか…じゃあ、お姉さんはもう大丈夫みたいだし、俺はこれで失礼します! 急に声かけて本当にすみませんでした!」
気まずさに耐えられず、その場を離れようとした俺の背中に、彼女の声が飛んできた。
「えっ…!ちょっと待ってください!」
振り向くと、彼女がこちらを見つめていた。
「あの…ありがとう。見ず知らずの私を元気づけようとしてくれたんですよね? それが…すごく嬉しかったんです。だから…ほんとに、ありがとう。」
彼女の純粋な言葉に、俺の胸に温かい何かが込み上げた。
「…いえ。どういたしまして。じゃあ、俺は帰ります。」
そう言って歩き出した俺の背中に、再び彼女の声が響いた。
「あの!!もしよかったら…明日も、この公園で会えませんか!!」
恥ずかしさで振り向けなかったけれど――
それでも、胸の奥が少しだけあたたかくなったのを、俺は確かに感じていた。
はじめまして領然と言います。初めて僕のストーリーを投稿するので色々とよろしくお願いします。