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Episode 1. 一目惚れ ②

サイラス様は誠実なお方なので、このまま、お別れの方向で何かしら連絡が来ると、薄々思っていたのですが、


翌日の午後、


「あなたの彼氏、地雷に一目惚れされて辺境伯邸に呼ばれたって本当?」


思ったよりはやいスピードで物事が進んでおりました。


「どこからその情報を?」


「辺境伯家次女様。あなたを心配してたわ。」


新しいカフェに目がない友人は、情報通でもありました。


「辺境伯邸に呼ばれたのは、初耳ですが、昨日、カフェで、お互いに一目惚れをしていたような。」


これは、そのカフェの焼き菓子です。

と情報とともにお菓子を渡すと


「ありがとう。だけど、そうじゃない!というか、不吉ね!このお菓子。」


意識がはっきりしない中でもしっかりお菓子を買っていたようで、宿舎で呆然としながら眺めていたのがこのお菓子でした。


「嫌いな方に渡してもよろしいかと。味はとても良いですが。」


ある意味、呪いの品ですから。


「食べ物に罪は無いわ!暫く行けそうにないから大事に食べるわよ。せっかく買ってきてくれたんだもの。


それより、お互いに一目惚れ?ブライス様にはあなたがいるのに?」


お菓子を大事そうに抱えて、お菓子に似合わない毒を吐く彼女。


「見た目はとても可愛い小動物って感じの方でしたね。私と違って。」


「そーゆー問題?じっくり育てた愛情よりも、一目惚れ?まぁ、辺境伯に呼ばれたら、拒否できる方の方が稀ね。


別れ話がこじれたり、何かあったら私に相談なさい。お茶数回で解決してあげるわ。」


そろそろ仕事に戻らないと。と、頼もしい言葉を残していった彼女は、王女殿下の侍女をしているだけでなく、大のお気に入りなので、本当に頼もしいのです。


そんな彼女の言葉を胸に、仕事に全力を尽くし、余計なことを考えないようにして数日、サイラス様からの連絡は何もありませんでした。


まぁ、周りでは「辺境伯家養女の婚約者になるために勉強を始めた」や「文官を辞め、辺境伯家に雇われた」「文官の彼女を捨てて、逆玉の輿にのった」などと、様々な噂話が飛び交っていました。


連絡も取れていないので現状は分かりませんが、どれも似たような内容な為、私は捨てられたのでしょう。


王女殿下の侍女の彼女からも

「連絡ないみたいね。ただ、別れる方向で考えなさい。あれは、もうダメね。というかクズ!辺境伯とクズから慰謝料取れるようにもできるわ。なんでも言って。」

と、可愛いお菓子と共に手紙が来ました。


婚約者ではなく恋人という立場だったため、こちらが引けばいい話なのでは?と思いつつ、こちらからの連絡に返信が無いため、更に連絡を待つこと数日、何故か私が辺境伯邸に呼ばれました。


なぜ?と言う疑問とひとりで高位貴族の元を訪れる恐怖で感情はめちゃくちゃですが、きっとサイラス様からの別れ話でしょう。


辺境伯邸までの馬車も用意されてしまっていたので、このクソ忙しい中ですが、1日休ませていただいて、辺境伯邸に向かいました。



そして、応接室に通されると


「サイくんと別れてください!」


待ち構えていたように、何故かあの少女から別れろと言われました。


サイくんとは?と一瞬、思考停止してしまいましたが、サイラス様とはもうそんなあだ名を呼ぶ仲になったのですね。


「ルル、話は座ってからだ。君、座ってくれ。」


少女からの口撃に驚いていたところに、辺境伯が同席しているという更なる驚きの追加。それに、サイラス様は少女に腕を抱きしめられながら、満更でもない顔で幸せそうというカオス満載な空気でお腹いっぱいです。もう帰りたい。

けど、座るしかない。


「うむ。改めて、クリュッグだ。娘のルルと、サイラスの事はもう知ってるな。


ルルが彼と結婚したいと言っているので、君にはサイラスと別れて欲しい。


なに、タダとは言わん。小切手は用意してある。君の収入10年分くらいだ。これだけあれば文句ないだろう。


別れるな。これに署名を。」


有無を言わさない空気、流石は辺境伯です。

別れるのに収入10年分くらいって...

サイラス様を売った気分になりますね。


「...別れますが、お金はいりません。


署名はよく確認した上で後日送らせていただいてもよろしいでしょうか?」


すごく、王女殿下の侍女の彼女に相談したい...。

こんな空間で緊張してまともに文字も読めないので、一旦持ち帰らせて欲しいところです...。


「今書いてよ!別れてくれるんでしょ?」


「まぁ、まぁ、彼女は職業柄、慎重なんだ。

それに、別れてくれるって言ってるから、心配ないよ。彼女は嘘をつかないから。


ただ、しっかり書類を読んでからサインしたいだけなんだよ。な?」


長いこと付き合っていただけあって私の性格を分かっているサイラス様。たぶん、この空間に居たくないこともわかっているはず。


「はい。」


「わかった。明日の夕方、書類を取りに行かせる。それまでに署名しておくように。」


解決したのか、言い終わると席を立った辺境伯。本当に養女に入れあげてるんですね。


「明日にはサイくんの婚約者になれるってこと?」


「それはどうかな...。あとで、お父様に確認しようか。」


2人も私への興味を失ったようなので、居心地の悪い場所から逃げるように帰り、噂を聞き付け私を待っていた彼女に相談して、無事に署名をすることが出来ました。


サイラス様から何も言葉がなかったのが心のこりでしたが、この数日後、


「突然、別れることになってすまない。


君との日々はとても楽しかった。


ただ、真実の愛には勝てなかったんだ。


君にも真実の愛を与えてくれる相手が現れることを願っているよ。」


という、手紙とネックレスが密かに届きました。差出人不明だったのですが、きっとサイラス様でしょう。


真実の愛とは、一体なんなんでしょうね。





今回、とてもお世話になったので、彼女にも手紙とネックレスを見せたところ


「この手紙は燃やして、ネックレスは換金!そのお金で、盛大なお茶会しましょ!」


と、強く言われましたが、ネックレスはかなり高価なものみたいなので、生活に困った時まで保管しておくことにしました。



_____________



その後の彼らの事はあまり良く知らないのですが、王女殿下の侍女の彼女によれば、


結婚し、子供が産まれたものの、辺境伯が亡くなったあとは新当主に辺境伯の奥地の別邸に追いやられ、喧嘩が耐えず、幸せとは言えない生活を送ったそうな。



実は、この結婚、王女殿下からの強い要請で、離婚ができないような契約のもとで結ばれました。


一度、最上級の生活を知った養女は元の生活には戻れませんし、サイラスは文官を辞めてしまったため、辺境伯から貰った子爵位と子爵領を切り盛りするため身を粉にして働かなければならなくなりました。


逆玉の輿のはずが、事故物件に大変身。

文官時代に戻りたい。とサイラスはよく嘆いていたそうな。




そして、

私は、別の文官の方と結婚を前提にお付き合いをし、今年、無事に結婚をしました。


彼はとても誠実で、周りからも信頼されており、出世街道を爆速で駆け上がっています。本人は出世に興味は無いそうなのですが...。


サイラス様の言う真実の愛では無いかもしれませんが、お互い信頼し合えて、幸せな日々を過ごしています。


愛とは色んな形がありますね。


Episode 1.完結です。

お付き合い頂きありがとうございました。


もっとクソな彼氏と地雷にしたかったのですが、現在はこんな感じかなと。


現実世界がカオスすぎて、謎な忙しさで執筆ペースは亀さん並ですが、これからも、時間を見つけてちょこちょこ書いていこうと思いますので、応援よろしくお願い致しまする。


そして、よろしければ、評価やコメントもお願い申し上げ奉りまする(、._. )、

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