授業前に寝る友人を「いたずら」してみた。
「おいっす~……」
「おいっす~、てかなんか、テンション低くね?」
僕の友人が教室に入り、自分の隣に座るや否や、机に突っ伏す。その様子を見ながら、バイトか何かで疲れたんだろう、と察する。
「バイトで疲れた」
「ああ、なるほど。だから疲れてるのか」
「そっ。授業始まったら起こして」
と言うと、友人は寝息を立てながら机に突っ伏した。
──この時間、暇だなあ。授業が始まる二分前だけど、さっさともう帰りたくなってきたし……。せや!
妙案を思いついた僕は鞄から「何か」を取り出す。その何かを机の上に出し、「何か」にくっついていた銃口を先生が見えないように上手く工作する。
──よし。これで万事オッケーだ。
そう思い、僕は引き金を引いた。教室に、バアン、という音が思い切り響いた後、誰かが教室で倒れる音がその後に続いて重く、低く響く。その誰かに僕は目線を向けて、にやり、と口角を上げた。
──「いたずら」、成功。
と思った後、僕は隣で寝ている友人に声を掛けようとした。……が、なぜか周囲に見知らぬ人達に囲まれており、いつの間にか背後を(さっきまで寝ていた)友人に取られていた。
「お前ッ……! いつの間にッ……!!」
「残念だったよ……。お前とは良い関係性を築けそうだったのに……」
と言って、友人は周囲の人達に「連れて行け」と促す。その促し通りに、僕は両脇を見知らぬスーツ姿の男性たちに抱えられる。
「待てよッ!」
「あっ?」友人が目を細めた。その目線は今までの友人とは違う目つきだった。
「なんで……なんでお前はッ……!」
「なんで……って。お前は立派な「犯罪」を犯したんだ。これには処罰が必要で、それ相応の罰を受けてもらう」
「そんな……友人だからといって」
「友人だから? そんなの、関係無いね。俺には俺の仕事を全うするだけだ」
「……こんなの、嘘だ」
「嘘? そうだよ、嘘だよ。俺と、お前との関係性、が」
「はっ……?」
突然のことに思わず僕はきょとんとさせる。その様子に相手は思わず忍び笑いを漏らした。
「面白いな、お前ってやつは。そもそも俺はお前の友人になった、覚えはない」
「……ってことは、最初からこの僕を逮捕するつもりで……」
「ああ。そうだ」
「……チッ」
小さく舌打ちを鳴らした。これ以上感じることのない屈辱を、今、感じている。
暫く静かな時間が流れると、友人だった相手は「連れて行け」ともう一度顎でしゃくった。周囲の男性たちに連れて行かれるまま、僕は背中を小さくしたまま、屈辱感を胸の内に秘めながらその場を去った。
──僕の、華やかな大学人生は、どこで間違ったのだろうか。
いたずらは程々に。