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もふもふの人間兵器?にされてしまった悪役令嬢ですが、冷酷非道侯爵様に溺愛されています  作者: 矢間カオル


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97話外伝 悪女イザベラ、側妃への道22

「そうだ、私自ら世話をしてやると言っているのだ。」


エイダンのこの言い方は、半ば強制的のように思われ、会場内が一瞬ざわついた。


アンドレアスの表情が曇り、しばらくその場に跪いたまま沈黙が流れる。


会場の端から、アンドレアスの一挙手一投足すべてに視線を注いでいたルーメリアの顔にも不安の色が宿る。


沈黙を破り、アンドレアスが顔を上げた。


「殿下のご配慮、感謝いたします。ですが・・・」


「おや? そなたは私の褒美を受け取れぬと言うのか? そなたが望むのなら何でも授けようと言っているのに?」


「で、殿下?」


アンドレアスは、自分の言葉を遮り、望むものは何でも授けると強調するエイダンの言葉の裏に、ピンと何かを感じた。


「殿下、恐れ多くもお尋ねいたします。その言葉に二言はございませんか?」


「誓おう。私の言葉に二言はないと。」


「それでは、それでは・・・、恐れ多くも申し上げます。第二側妃様のルーメリア様を、どうか・・・、どうか、私にお与えください。」


その瞬間、ヒッと息を呑む微かな音がした。


ルーメリアが発したその口を両手で押さえ、今にも泣きそうになっている。


「何? ルーメリアだと?」


「そうでございます。」


エイダンは、会場の端で口を覆っているルーメリアに視線を移す。


「ルーメリア、アンドレアス卿がこのように言っておるが、そなたはそれでも良いのか?」


「で、殿下!」


ルーメリアはタッと床を蹴ると、アンドレアスの隣に跪いた。


「殿下、恐れ多くも私からもお願い申し上げます。どうか・・・、どうか私をアンドレアスの伴侶としてくださいませ。」


跪く二人を前に、エイダンはとても満足そうな顔をした。


「よし、わかった。アンドレアス卿、そなたに褒美としてルーメリアを授けよう。挙式は一ケ月後とする。それまでに新居を準備しておくが良い。ああ、それから一つ言っておくが、ルーメリアはまだ乙女である。夫婦とは言っても、私とは名ばかりであった。だから、そなたが真の夫になれば良い。」


「で、殿下・・・、誠に、誠に感謝いたします。私アンドレアスは、このご恩に報いるため、殿下に生涯命を懸けて忠誠を尽くすことを誓います。」


「殿下、私も臣下の妻として、夫と共に殿下に一生涯の忠誠をお誓いいたします。」


「そなたたちの誓い、真に受け取った。」


イザベラがパチパチと拍手をすると、会場内の皆がそれに続き、割れんばかりの大きな拍手が湧き上がった。


アンドレアスとルーメリアは皆の拍手に包まれる中、手を取りお互いを見つめ合うのであった。




今、イザベラとエイダンは鷲宮の応接室で向かい合って座っている。


人払いをしたこの部屋には、二人しかいない。


イザベラはスズラン宮の侍女の紺色の制服ではなく、鷲宮に着いてからジオルグが用意してくれたドレスの中から緑色のドレスを選んで着替え、エイダンを前にして、背筋を伸ばして少し緊張した面持ちで座っている。


姿勢の良い座り方と華やかなドレスのデザインが、イザベラの美しさを一層引きたてている。


メイドが淹れてくれたお茶の芳ばしい香りを楽しんだ後、エイダンがまっすぐにイザベラを見つめた。


「イザベラ、そなたの計画通りになったな。実に見事であった。」


「お褒めに預かり恐悦至極にございます。」


「今は二人だけなのだから、そんなに堅苦しくならなくても良いのだぞ。」


それなら・・・とイザベラは足を組み、普段の砕けた感じになった。


いや、そこまで砕けなくても・・・と思ったエイダンであったが、それは口にしないことにした。


だが、イザベラも、エイダンの一瞬見せた表情で、やり過ぎたと判断する。


「あっ、どうもすみません。」


結局、イザベラは足を組むのを止めて、元に戻した。


「ははっ、イザベラは面白いな。」


「いえ・・・、そんなことは・・・」


なんだか気まずさを感じつつ、イザベラはエイダンに向き合った。


「今日は、クラリッサのことで話しがあるのだ。そなた、クラリッサをどうしたい?」


クラリッサは、嫉妬に駆られて邪魔なイザベラを何とかして欲しいと父親であるキャプラ侯爵に頼んだ。


それを受けて、キャプラ侯爵は使用人にイザベラを誘拐させたのだが、父娘二人とも、殺す気はなかったと証言している。


「私の目的は、アンドレアスに手柄を立てさせることだったから、クラリッサがどうなろうと関係ないのです。襲われるのはクラリッサでもシエンナでもどっちでも良かったわけですし・・・。ただ、私が嵌めたせいで、彼女が王妃の座を奪われるのは何となくね・・・。煽ったのは私だし・・・。」


「つまり、クラリッサを罰することには消極的だと言うことか?」


「そうそう、それです。本当は私を殺す気があったとしても、本人がなかったって言ってるんだから、それ、信じてあげてもいいかなって・・・。」


「ふむ。それを聞いて安心した。私も二人の息子の母親を、罪人にはしたくないのだ。今回の件に関しては、王城内で騒ぎを起こしたということで終わらせようと思う。そなたの寛大な心のお陰だとクラリッサには言っておこう。」


「じゃあ、それでお願いします。」


イザベラは、ちょこんと頭を下げた。


「ところで、イザベラはこの機会に王妃になりたいとは思わなかったのか?」


「うーん、王妃って、責任が重いですよね。子どもの頃から王妃教育なんて受けてるらしいし。だから、私には無理だって思ってます。あっ、でも、孤児院の視察だったら、私にもできますよ。」


「ふふっ、そなたの思いはよくわかった。さて、次はそなたのことだが、第二側妃に空きが出たから、そなたは望み通りに側妃になれる。ルーメリアがスズラン宮を出たら、そなたがスズラン宮の主になれば良い。そなたとの婚儀は、アンドレアスとルーメリアの婚儀が終わってからにするつもりだ。」


エイダンの言葉を黙って聞いていたイザベラであったが、急にもじもじし始めた。


「あの・・・そのことなんですが・・・、私、本当に側妃になれるんですか?」


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