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もふもふの人間兵器?にされてしまった悪役令嬢ですが、冷酷非道侯爵様に溺愛されています  作者: 矢間カオル


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93話外伝 悪女イザベラ、側妃への道18

エイダンの、いきなりの愛人にならないか発言に、一瞬イザベラは口をあんぐりと開けてしまった。


もし目の前に鏡があったら、ずいぶんと呆けた顔に呆れてしまったであろう。


だが、すぐさま心は忙しく動き始めた。


愛人にならないかって? 


もともとルーメリア様に会いに来たら、あたしの魅力で虜にしてやろうなんて思ってたけど、あまりにも展開が早すぎない?


いくらあたしの顔が好みだからって、まだ数回しか会っていないのに?  


イザベラは突然舞い込んだ幸運に、ドギマギしてすぐには返事ができなかった。


だが、一度心に決めたことは、脇目も振らずに実行するのみ!


今、イザベラが望むのは、愛人の座ではないのだ。


エイダンとわざと目立つ場所で二度も散歩をしたのには、イザベラなりの理由があった。


道半ばで、愛人と言う名の甘い誘惑に負けてはいけない・・・。


「殿下。もし、殿下がわたくしを抱きたいのであれば、愛人では足りませんわ。わたくしを側妃にしてくださいませ。」


「いや、さっきも言った通り、側妃には空きがないのだ。今のところ、父上に側妃は二人までと決められているからな。」


「ないのなら、空きを作れば良いのです。」


「作るって・・・、いったい何を考えている?」


「お耳をお貸しくださいませ。」


イザベラは、誰にも聞かれぬように、とても小さな声でエイダンの耳にそっと囁いた。




エイダンが帰ってしばらくすると、ジオルグが戻って来た。


「イザベラ、久しぶりだな。俺に何の用だ?」


「ジオル・・・じゃなかった、お父様に作って欲しい・・・作っていただきたいものがあるのですわ。」


どうもジオルグの顔を見ると、昔に戻ってしまうと苦笑する。


「そうか、何を作れば良い?」


イザベラは作って欲しいものを詳しく説明した。


「だがイザベラ、これってかなり危険なことだと思うのだが・・・、本当に大丈夫か?」


「きっと大丈夫だよ。だって、ジオルグ・・・じゃなかった、お父様が協力してくれるんだから・・・。」




それから一ケ月後、イザベラは王太子宮の執務室を訪ねた。


ドレスも髪飾りも、ジオルグがイザベラのために用意してくれていたものの中から、紫色のドレスとアメジストを散りばめた花の形の髪飾りを選んだ。


化粧も念入りに施し、イザベラの美しさがひときわ輝いて見える。


どこからどう見ても、とても平民の侍女とは思えない姿である。


エイダンは宮殿の警護の者に、イザベラが来たら案内するようにと予め伝えていたので、迷うことなく執務室に到着できた。


「おお、イザベラか。待っていたぞ。」


「殿下にご挨拶申し上げます。うふふっ。」


エイダンは護衛騎士や侍従がいることも気にせず、イザベラに歩み寄り手を握る。


「アルブラゼン王国の王太后が大喜びであったと報告が来た。これも全てそなたのお陰だ。さあ、約束通り、王太子宮を案内しよう。皆の者、しばし休憩とする。」


エイダンはイザベラと仲睦まじく腕を組み、王太子宮の廊下を歩き、大広間や応接室など、案内して回った。


当然、この様子は王太子宮に勤める使用人も目にするところとなり、王太子宮に一緒に住んでいる王太子妃クラリッサにも即座に伝えられた。


「妃殿下、大変でございます。今、殿下がスズラン宮の侍女と宮殿内を歩き回っております。」


「何ですって? 今、殿下は執務中よ。それを放り出してイザベラと一緒にいると言うの?」


「は、はい・・・、さようでございます。」


クラリッサが血相を変えて二人を探していると、仲睦まじく笑顔で見つめ合いながら歩いている二人を見つけた。


そして、イザベラが来ているドレスを見て驚いた。


何、あのドレス? 


平民が買えるようなドレスじゃないわ。


それにあの色・・・髪飾りもドレスも、イザベラの瞳の色じゃない。


きっと殿下がお与えになったのだわ。


クラリッサは悔しさに飲み込まれそうになるのを必至で耐え、できるだけ平静を装い二人に近づいた。


「で、殿下、今は執務中ではないのですか? イザベラさん、この時間に殿下をお訪ねになるのは非常識でしてよ。」


「おお、クラリッサか。イザベラのお陰でアルブラゼン王国との交渉が上手く行ったのでな、一つ願いを叶えてあげたのだ。」


「ね、願いとは?」


「ふふっ、クラリッサ様、わたくし、王太子宮を案内して欲しいと殿下にお願いいたしましたの。ねえ、で・ん・か?」


イザベラはエイダンの腕に回した腕を離すこともせず、余裕の笑みをクラリッサに見せた後、エイダンを見つめて甘えた声を出した。


「・・・・」


クラリッサは必死で抑えていたものがバチンと音を立ててはじけたような気がした。


悔しさを通り越し、怒り心頭でそれ以上声が出ず、身体全身がブルブルと震えだす。


「うふふっ、もうお話がないようでしたら、この場を離れてもよろしいですわね。殿下、行きましょう?」


「ああ、そうだな。まだ案内していない部屋があるからな。」


二人はクラリッサに見向きもせず、再び歩き始める。


「それでね、殿下・・・うふふっ。」


廊下に楽し気なイザベラの声が響く。


一人残されたクラリッサは、イザベラの後姿を見えなくなるまでじっと睨み続けた。


「私を馬鹿にして・・・絶対に許さないわ!」




この話はツバキ宮の使用人たちにもすぐに伝わり、第一側妃シエンナの知るところとなる。


「イザベラが王太子宮を見に来たの? しかも殿下が案内したって? 何故そんなことを? もしかしたら正妃の座を乗っ取るつもり? 第一側妃の私を差し置いて? そんなこと絶対にさせないわ!」


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