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もふもふの人間兵器?にされてしまった悪役令嬢ですが、冷酷非道侯爵様に溺愛されています  作者: 矢間カオル


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92話外伝 悪女イザベラ、側妃への道17

イザベラがエイダンと腕を組み、王城内での最も美しいとされる庭園を歩いたというニュースは、王城内にアッと言う間に広がった。


当然、正妃クラリッサも、第一側妃シエンナも知るところとなる。


「く、く、悔しい! 何よ、平民の分際で。聞くところによると、お針子してたって言うじゃない。そんな女が殿下の隣を歩くなんて・・・。絶対に許せないわ!」


シエンナはあまりに強くハンカチを両手で引っ張りすぎて、ビリッとそれを破いてしまった。


「初めて見たときから、危険な匂いを感じていたわ。とうとうこんな日が来てしまった・・・。このままにしてはおけない。殿下の寵愛があんな女に移るなんて・・・、絶対に許さないわ!」


正妃クラリッサは、趣味の油絵を描いている最中に、この話を聞いた。


握る絵筆に無駄な力がみなぎる。


そしてみなぎり過ぎて、筆がポキッと折れてしまった。


スズラン宮は静かなもので、セレニアが心配そうにルーメリアを見ているのだが、ルーメリアはまったく焦った様子もなく、いつも通りである。


イザベラも、ドレスの直しと、ルーメリアの身の回りのお世話と、いつもと同じ仕事を忙しそうに続けている。


セレニアはイザベラとエイダンがどんな話をしたのか、知りたくてうずうずしていたのだが、淑女たるもの、他人の秘め事を詮索するものではないとルーメリアに釘を刺されていたので聞けなかった。


それからしばらくすると、スズラン宮にエイダンが訪れた。


ルーメリアに用があるのではなく、イザベラが目当てであることは、誰の目にも明らかで、イザベラは、話しがあるなら、前回と同じく庭園を散歩しましょうと誘った。


「殿下、わたくしを訪ねてくださいましてありがとうございます。」


「イザベラ、前回そなたが話していたことだが・・・。」


「続きを聞きたいのですね。」


「そうなのだ。そなたが言う、私にしかできないこととは、いったい何だろう? あれからいろいろ考えてみたのだが、皆目見当がつかないでいる。」


エイダンは、イザベラが思っていたよりも真面目な性格に思えた。


それに、嫌がる女は抱かないという姿勢も好感が持てた。


そんな彼だからか、父王という大き過ぎる壁を、越えたいのに越えられない苦悩を持つ彼が不憫にも思える。


「殿下は、アンドレアスに、最大の恩を売ることができるのですわ。その恩は国王陛下に対する忠誠よりも、もっと大きな忠誠心を生むことになるのです。それこそ、一生かけて殿下に命を捧げたくなるような・・・」


「恩を売る? 私の護衛騎士に取り立ててやっただけでも、大きな恩を売ったことになるのでは?」


「いえいえ、それだけでは足りません。もっともっと大きなものです。ですが、まだそれには時期尚早。もう少しお待ちくださいませ。」


「中身は教えてくれぬのか?」


「お知りになりたければ、またわたくしを誘ってくださいませ。」


淑女の礼をして去ろうとするイザベラの腕を、エイダンはグイッと掴んで引き止めた。


「で、殿下・・・?」


「イザベラ・・・、また会おう。」




エイダンが、スズラン宮の侍女と仲睦まじく二回も庭園を散歩し、二回目は去ろうとする侍女の腕を掴んで離さなかった・・・


このニュースは前回同様、王城内に瞬く間に広まった。


正妃クラリッサも第一側妃シエンナも、前回に増して焦りが生じていた。


「たかだか平民が、殿下の心を掴むなんて許せない。」とクラリッサが思えば、シエンナは「最近陛下のお渡りがないのは、イザベラが原因なの? なんて邪魔な女なの?」と怒りが収まらないでいた。




二人の怒りの矛先が自分に向かっていることを感じたイザベラは、次の行動に出た。


ジオルグに会いに鷲宮に出向いたのである。


鷲宮に着くと、いつものように出迎えてくれる執事は、ジオルグが帰って来ても待ってもらわなければならないと言う。


「実は、先客が先ほどからご主人様の帰りをお待ちなのです。」


「あら、そんなこと? じゃあ、出直してくるわ。」


イザベラが出ようとすると、先客が待っている応接室のドアがガチャリと開いた。


「その声は、イザベラか?」


声の主は、エイダンだった。


「で、殿下? どうしてここに・・・?」


「私は構わないから、イザベラを中に入れなさい。」


エイダンの許しを得て、イザベラは応接室に通され、一緒にジオルグを待つことになった。


「少し込み入った話をするから、二人にしてくれないか?」


エイダンは、応接室にいる侍従や護衛を部屋の外に出した。


エイダンの込み入った話って・・・何なの? 


イザベラは少し緊張した目でエイダンを見る。


「ジオルグが養女を迎えたと聞いていたが、やはりそなただったのだな。初めてそなたに名前を聞いたとき、もしかしたらと思っていたのだ。そなたはやはり、あのイザベラだった・・・。」


「あのイザベラとは?」


「ジオルグが側妃にと、私に勧めてきた令嬢の名前だ。」


ドキッとした。


七年前に終わった話だ。


まさか覚えていて蒸し返されるとは思っていなかった。


「あの話はなかったことになったが、もし、そなたが私の側妃になっていたら、今頃ツバキ宮かスズラン宮に住んでいたのだな・・・。」


しみじみと語るエイダンの緑の瞳は、どこか遠いところを見ているようだ。


「あ、あの・・・、で、殿下はどうしてジオルグ、いえ、お父様に会いに来られたのですか?」


「ああ、ちょっと相談ごとがあってな。そうだ、前回もそなたに助けられたが、今回も何か知っているかな?」


「と言いますと?」


「アルブラゼン王国の王太后に贈り物をするのだが、彼女の情報がほとんどなくてな。ジオルグなら何か知っているかもしれないと思って相談に来たのだ。」


「相手が女性でしたら、宝石などが無難なのではないですか?」


「それはそうなのだが・・・。今回父上から直々に私が頼まれたのだ。せっかくの機会だ。無難で済ませるよりも、私だからできるそれ以上の何かを贈りたいと思っている。」


贈り物一つとっても、この人は、真剣に考えている。


この人は、父王という壁を越えたくて仕方がないのだ。


そのために、必死になって考えて、でも、空回りすることもあるのだろう。


助けてあげられるものなら、助けてあげたい・・・。


イザベラは手を顎に当て「んー」と考えた。


「アルブラゼン王国・・・ですよね?」


イザベラは女子刑務所仲間のサリーのことを思い浮かべた。


世界を股にかけて商いをしている彼女の話は、実に面白かった。


アルブラゼン王国はこの大陸の一番北にある小さな国で、金の埋蔵量が多いから、とってもお金持ちの国なんだそうだ。


冬はとても寒くて、地面が雪に覆われると、移動するにも馬車は車輪じゃなくてそりを使っているんだとか・・。


慣れないから、商品を運ぶのもたいへんだったって言ってたわ。


王太后様の話も聞いたような・・・。そうだわ、思い出した。


遠い目をして思い出していたイザベラが、エイダンに真摯に向き合う。


「王太后様はお年を召していらして、冬になるとお部屋に籠っているそうです。それでボケ防止にパズルをして過ごしているって聞きました。いろんなパズルで遊ぶことが趣味だそうですよ。」


サリーが各国のパズルを集めて持って行ったら、王太后が大喜びで買ってくれたって言ってたわ。


「なるほど、それは良いことを聞いた。だが、パズルを集めるのが趣味なら、贈っても同じものが重なってしまうかもしれぬな。」


「ああ、それは大丈夫です。王太后様は、一度完成したパズルは孤児院や学校に寄付するそうですから。その方が同じものを手に入れても、いつも新鮮な気持ちで遊べるからボケ防止には良いのだそうです。」


「そうか、イザベラは頼りになるのだな。良い情報に感謝する。宝石に各国のパズルを添えて贈ることにしよう。」


「ふふっ、お役に立てて良かったですわ。」


「話はもとに戻るが・・・、そなたはジオルグが側妃にと薦めてきた女性であろう? ジオルグは、その令嬢は私好みの女性だと言っていた。」


殿下の好み? 


それってつまり、私の顔が殿下のお好みの顔だってこと? 


そう言えば美人が好きだって言ってたわよね・・・。


「ジオルグが側妃にと薦めてくれるほどの女性なのだから、実は会ってみたいと思っていたのだ。結局は会えずにあの話はなかったことになったが、今、こうして会えた。これも運命なのかもしれぬ。イザベラ、側妃は空きがなくてもう無理なのだが、そなたが望むなら、私の愛人にならないか?」


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