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もふもふの人間兵器?にされてしまった悪役令嬢ですが、冷酷非道侯爵様に溺愛されています  作者: 矢間カオル


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87話外伝 悪女イザベラ、側妃への道12

翌日、イザベラは休みをもらい、こっそりとジオルグに会いに鷲宮に赴いた。


「いらっしゃいませ。イザベラお嬢様。」


執事が恭しく腰をかがめて挨拶をしてくれる。


「ジオル・・・、お父様に会いに来たの。今いるかしら?」


「今は国王陛下に謁見中ですのでいらっしゃいませんが、もうすぐ帰ってくると思います。どうぞ中でお待ちください。」


イザベラが通された部屋は、洒落たデザインのドレッサーやクローゼット、きれいな模様の花瓶、淡いピンクのカーテン、ふかふかの絨毯など、若い娘が喜びそうな家具や調度品が置かれている部屋だった。


イザベラが目まぐるしくぐるぐると部屋の中を見回していると、執事が声をかけてきた。


「この部屋は、ご主人様がお嬢様のために用意したお部屋でございます。戻ってきたら案内するようにと、仰せつかっておりました。」


「そ、そうなの?」


ウッド伯爵のイザベラの部屋も貴族らしくてなかなかのものであったが、この部屋の方が、もっと高級感を感じる。


いったいジオルグって・・・何者? 


― 俺にもいろいろあってな・・・―


なんて言ってたけど、本当に何があったの? 


ジオルグが戻ってきたら聞いてみようと思うイザベラであった。




さて、肝心のジオルグはどうしているかと言うと・・・


現在、王宮のバルマン国王の書斎で、二人きりで話しをしている最中である。


いつものようにジオルグが諜報員から得た情報を伝えた後、バルマンは話を変えた。


「で、今、エイダンはどうしておる? また暴走などしておらんか?」


「はい。今のところは、もうすぐ行われるウエタリス王国の歓迎の儀の準備で忙しくしております。」


「そうか、それなら良いが・・・。ジオルグ、あいつが暴走しないように、しっかり手綱を握ってくれよ・・・。」




バルマン王にしっかりと信頼されているジオルグであるが、七年前にランベルジオスに戻ってきた際は、鷲宮ではなく、王都の町に住んでいた。


養父メルビンが薬屋を経営していた家を、現在の住人から買い取ったのである。


薬棚も実験室もまだ壊されておらず、十分に使えそうなので、少し相場よりも高い金を支払って購入した。


その家でジオルグは、薬草を仕入れて売ることと、錬金術の技術を売るという二足のわらじで生計を立てていた。


ジオルグの父親が開発した鉄を強くする方法をさらに改良し、強度を増すことに成功したジオルグは、その鉄の製造法を伝授することで金を得ていたのである。


ところが、ジオルグが王都に戻ったことを知ったエイダンが、何度も何度もジオルグを王太子宮に呼び出すようになってしまった。


呼び出す理由は、ジオルグの意見が聞きたいというものから、愚痴を聞いて欲しいと言うものまで、日によって違っていたが、こう再々では仕事に支障が出る。


ジオルグはほとほと困っていた。


エイダンにしてみれば、ジオルグの頭脳は知恵と知識の宝庫であり、権力に媚びない姿勢も信頼するに値するものだと高く評価していた。


何でも相談したくなるのは必然だったのである。


ところが、ある日、国王バルマンからも呼び出しがあった。


ランベルジオスに帰って来た際に、既に挨拶は済ませている。


いったい何事かと思って王宮に行くと、バルマンの書斎に通された。


バルマンは人払いをして、誰もいなくなったのを確認した後、「ジオルグ・・・」と小さな声でジオルグの名を呼んだ。


日頃朗々と張りのある声で語っているバルマンらしくないその声に、ジオルグは背筋が凍る思いがした。


絶対に誰にも聞かれてはならないのだと、バルマンの声と態度は言っている


俺は何かしたのか・・・?


ジオルグの額に冷や汗が流れた。


「ジオルグ、単刀直入に聞くが、アデルバードの王太子誘拐事件に、エイダンが関わっていると聞いたのだが、それは本当か?」


「・・・」


ジオルグはしばし無言を貫いたが、心の中は激しく動揺していた。


殿下は絶対にバレないようにしたと言っていたではないか・・・、なのに、何故陛下は知っている?


だが、バルマンに忠誠を誓った身であれば、真実を答えなければならない。


「陛下、殿下が盗賊と会う際に、髪色も髪形も変え、目の色も声色も変えたと聞きました。何故陛下はご存知なのですか?」


「そうか・・・。やはり真実であったか・・・。エイダンはそこまで用心していたのだな・・・。だが、最後の詰めが甘いのじゃ。」


「詰めが甘い?」


「王太子を誘拐した盗賊だが、その内の一人が、仲間に情報を持って来た貴族は、王太子殿下と同じ匂いがすると言ったそうだ。エイダンと同じ香水を使っている貴族男性など五万といるから、皆鼻にもかけなかったらしいが・・・、私はそれを聞いた瞬間、どっと冷や汗が出た。」


仲間すら鼻にもかけなかったことを、鼻にかけた唯一の人物が陛下だったと言うことか・・・。


ジオルグは、背中にもたらりと冷や汗が流れるのを感じた。


「幸い、その男は犯行の日に体調を崩したとかで現場に行かず、アデルバードに捕まっていない。もしも掴まっていたらと思うと・・・」


愚息であっても、やはり親子である。


バルマンの心配は尽きないようだ。


「そこまで変えたのなら、何故香水まで気を配らぬのか・・・。エイダンが関わっているなどと、ほんのわずかでも思われてはならぬのだ・・・。まったくあいつは詰めが甘い!」


「仰る通りでございます。」


「そこでだな、ジオルグ。あいつはそなたのことを信頼し、何かと頼りにしている。心酔していると言っても良いだろう。この際、正式に王太子専属の相談役という役職を与えたいと思う。そしてもし、愚息が暴走しそうになれば、必ず止めて欲しい。そして包み隠さず、私に報告して欲しいのだ。」


ジオルグにとって、なんとも光栄な話であるが、外国人で、しかも男爵位の身分であることを考えると、あまりにも身に余る話だと思われた。


「たいへん有難いお話だと思うのですが、私は現在王都の町に居を構え、仕事をしております。それに男爵位程度では王太子専属の相談役になるのは難しいと思うのですが・・・。」


「ああ、そのことなら心配いらない。二十年以上使われていない鷲宮に住むが良い。そなたは鉄を強くし、我が国に多大な貢献をしている。その褒美だと思えば良いのだ。そなたのために実験室と薬品倉庫も作ろう。さすれば、いつでもエイダンのもとに行けるであろう?」


ジオルグは、有無を言わせない圧をバルマンから感じるのだった。


男爵位が嫌なら、身分を高くしてやろうというバルマンの申し出は、丁寧にお断りした。




それから間もなくして、一人の盗賊がランベルジオスから忽然と消えた。


死んだのか、どこか遠いところに旅立ったのかもわからない。


いつしか彼を知る人の記憶からも、徐々に消えていった・・・。




ジオルグが鷲宮に住むようになって、ますますエイダンに呼び出される回数が増えた。


エイダンが鷲宮に来ることもある。


だが、男爵位程度の身分の錬金術師が王太子に寵愛されていることを、快く思わない貴族もいた。


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