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もふもふの人間兵器?にされてしまった悪役令嬢ですが、冷酷非道侯爵様に溺愛されています  作者: 矢間カオル


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83話外伝 悪女イザベラ、側妃への道8

「イザベラさんの言葉遣いなのですが、貴族らしくないと言うか・・・侍女は、もう少しその・・・」


なんだ、そんなこと? もっと違うことかと思ってドキッとしたわ!


イザベラは、背筋をピンと伸ばし、つま先から指先、視線に至るまで優雅な仕草に変えた。

「あら、言葉遣いでしたら、大丈夫ですわよ。わたくし、言葉遣いも勉強いたしましたの。」


言葉遣いもがらりと変えて、それはどう見ても、立派な貴族令嬢の姿であった。


イザベラは十四歳のときに孤児院からウッド伯爵家に引き取られてから二年間、毎日貴族令嬢らしく生きる教育を受けていた。


侍女とは名ばかりの実に厳しい教育係がそばにつき、乗馬用の短鞭片手に、言葉使い、所作、礼法、ダンスなど厳しくしつけられた。


間違えればピシッと短鞭が振るわれる中、イザベラは死に物狂いで教えられたことを身につけていった。


化粧の仕方に、夜会用と昼用の違いがあることを教えてくれたのも、その侍女である。

なんだ、そんなこと? もっと違うことかと思ってドキッとしたわ!


イザベラは、背筋をピンと伸ばし、つま先から指先、視線に至るまで優雅な仕草に変えた。


先ほどルーメリアに施した化粧は昼用の化粧なのだが、七年間化粧をすることがなくても、身についた技術はまだイザベラの頭に残っていた。


「まあ、イザベラ、本当にあなたってすごい人なのですね。私、驚きました。ねえ、お嬢様、お金の心配もなくなりましたし、この際ですから、イザベラさんに侍女の仕事を頼みましょう。」


ということで、イザベラはドレスの直しと、イザベラの身の回りの世話をする二つの仕事を引き受けることになった。


それに応じて、使用人の寮から、スズラン宮に引っ越すことになる。


「そうだわ、お嬢様。せっかくきれいにしてもらったのですから、今から視察の外出許可を申請しに行きませんか?」


セレニアは、ふと良案を思い付いたことに、嬉しそうな声をあげた。


一ヶ月の間に、イザベラが知ったことであるが、側妃も正妃も、ただ好き勝手に生きているのではなく、ちゃんとそれぞれに公務が割り当てられていた。


側妃なんて贅沢三昧で、社交にだけ力を注げば良いと思っていたイザベラにとって、それはとても意外なことであった。


正妃は王都の病院、第一側妃は救護院、第二側妃のルーメリアは孤児院の責任者として名を連ねている。


王都には三ヶ所の孤児院があるので、ルーメリアは定期的に孤児院を訪れ、視察を繰り返しているのだ。


「許可申請なんて、使用人に任せたらいいんじゃ・・・よろしいのではないですか?」


「お嬢様は、とてもきっちりとなさっていて、ご自分が関わる仕事を他の者には任せたくないのです。ですから毎回ご自分の手で申請書を提出なさるのですわ。」


「そうなのですね・・・。」


今までルーメリアと関わってきて、真面目な性格だとは思っていたが、自分が思う以上に、真面目なのだとイザベラは思った。


「今から行きますが、イザベラも一緒に行きましょう。侍女が私一人よりも二人の方が見た目にもよろしいかと・・・」


かくしてイザベラは、セレニアに紺色の侍女の制服を借り、ルーメリア、セレニアと一緒に行政部に出向くことになった。




行政部は、王城の敷地内にある大きな宮殿の中にあり、その宮殿はペガサス宮と呼ばれ、他にも財政部、人事部などの主要部門が入っており、働く人々の往来が他の宮殿よりも多い。


国の威厳を訪問者に見せつけるためか、入り口には、大きく立派なペガサス像、廊下には、イザベラでも知っている有名な絵画が点々と飾られている。


イザベラは、初めて見るペガサス宮が珍しく、視線をあちこちにぐるぐると見回しながらルーメリアの後をついて歩いていた。


廊下の中ほどで、急にルーメリアが立ち止まったので危うくぶつかりそうになったが、ギリギリのところで止まった。


なんとかぶつからずにすんで、ほっととしたのだが、ルーメリアはさっと廊下の端により、他人のために道を空けて頭を下げた。


イザベラも慌てて右に習う。


側妃であるルーメリアが道を空け、頭を下げる人物と言えば、それは国王か王太子以外にあり得ない。


チラッと目に入った男は、護衛二人と侍従一人を引き連れた身なりの良い男だった。


薄いグレーの髪色に緑の瞳の男は、年老いた国王よりもずいぶん若い。


つまり、この人物こそ、王太子エイダンであり、ルーメリアの夫なのであろう。


頭を下げてからは見えなくなってしまったが、エイダンは、こつこつと足音を響かせてルーメリアに近づき、彼女の前で止った。


「顔を上げよ。」


「ランベルジオスの太陽であられる王太子殿下にご挨拶申し上げます。」


ルーメリアの美しく凛とした声が廊下に響く。


顔を上げることを許されたのでイザベラも顔を上げ、ちらりとエイダンを見る。


細く締まった身体は、日頃鍛えていることが見て取れて、緑の瞳は宝石のように美しい。


肌の手入れもきちんとしているのか、触ると気持ちが良さそうなすべすべ感がある。


「そなたはルーメリアだな。元気にしておるか?」


「お陰さまで息災に暮らしております。」


「そうか・・・。それなら良い。」


会話はたったこれだけで、エイダンは去っていった。


夫婦なのに、たったこれだけ? もっと何かないの? 


イザベラが少しがっかりしてルーメリアを見たら、去り行くエイダンの後ろ姿を見つめるルーメリアの頬が、ポッと赤く上気している。


えっ?ええっ? 


もしかしてルーメリア様は、殿下のこと・・・好きなの?


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