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もふもふの人間兵器?にされてしまった悪役令嬢ですが、冷酷非道侯爵様に溺愛されています  作者: 矢間カオル


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81話外伝 悪女イザベラ、側妃への道6

制服製作部署とルーメリアが住む側妃宮との間は距離があるので、二人は馬車に乗って移動した。


イザベラは、平民ならこれくらい歩いて行くよね・・・なんて思ったが、口にするのは止めた。


ルーメリアの住む側妃宮は、壁にスズランの彫刻が施されていて、別名スズラン宮と呼ばれている。


並んで建てられている第一側妃の宮はツバキ宮、王太子宮は獅子宮である。


それぞれ、宮殿の名前がわかるように壁に立派な彫刻が施されている。


スズラン宮の前に馬車は停まり、セレニアはイザベラを宮殿の中に案内した。


初めて見る側妃宮の中は、華やかで高級そうな調度品の数々がバランスよく配置されており、その中でも、イザベラは、応接室に置かれていたスズランの形をしたランプの可愛らしさに目を奪われた。


もしあたしが側妃になっていたら、このランプは自分の物になっていたかもしれないのに・・・ふとそんなことを思ってしまった自分を否定する。


今さら側妃なんて・・・、無理よ、無理!


「イザベラさん、座って待っていてくださいね。」


セレニアに言われた通りにソファーに座って待っていると、セレニアが若い女性を連れてきた。


「ルーメリア様でございます。」


セレニアがもったいぶって紹介する。


その物言いに、早く挨拶しなさいという意思が込められているのがわかる。


「側妃ルーメリア様にご挨拶申し上げます。イザベラと申します。」


イザベラは、カーテシーの姿勢はとらず、ペコっと頭を下げてわざと平民ぽく挨拶をした。


目の前にいるルーメリアは、まっすぐに腰まで伸びたサラサラの金髪、ぱっちりと開いた緑の瞳、透けるように白い肌に対照的な艶やかなピンクの唇、どれもバランスよく美しい。


着ているドレスは流行おくれの古臭いデザインだけれども、その優雅な物腰から元王女だということにも納得する。


「イザベラさん、来てくれてありがとう。」


イザベラがしげしげとルーメリアを見つめていると、彼女の方から声をかけてくれた。


「あっ、すみません。じっと見ちゃって・・・。」


「あら、そんなこと気にしなくても良いのよ。それよりも、まずはお礼を言いたいと思っていたの。あなたが作ってくれたコサージュもレースのフリルも、とても素敵でよくできていたわ。ありがとう。」


「え、ええ? お礼を言われるほどでは・・・、ど、どうもありがとうございます。」


素直に礼を言うルーメリアに、イザベラは驚いてしまった。


元王女だと聞いていたのに、下っ端のお針子にこんな風にお礼を言うなんて・・・ と思っていたら、次はもっと驚かされた。


「それから、ごめんなさいね。セレニアが無理を言ってしまって・・・。わたくしは、ドレスはこのままでも良いって言ったのですが・・・。」


「お、お嬢様、お嬢様がそんなだから、いつまでたっても・・・」


「セレニア!」


「あっ、申し訳ございません。つい出過ぎたことを申してしまいました。」


ルーメリアは、イザベラに謝罪をしただけでなく、セレニアが言いかけていた言葉を一言で制した。


そんなルーメリアを見て、イザベラは想像していたのとはずいぶん違うと驚いたのである。


セレニアがハンカチ片手に話した内容だけで、勝手に想像していたルーメリアは、自分の境遇に嘆き悲しむだけで自分からは何もせず、もっと暗い雰囲気のわがままなお嬢様だと思っていた。


だが、目の前のルーメリアは、平民のお針子にも明るく気さくに話しかけ、侍女の暴言をぴしゃり止めることができる芯のある女性だった。


「せっかくここまで来たのだから、わたくしのドレスを見てくれますか? 直すのが嫌だったら断ってくれてもかまいませんわ。」


ルーメリアに案内されて、次に入ったのは衣裳部屋である。


部屋の中は、ドレスが取り出しやすいようにコの字の形にハンガーラックが並べられ、ドレスが隙間なく吊り下げられていたが、イザベラがざっと見てみると、生地は上質のものを使っているが、どのドレスも流行おくれの古臭いデザインばかりである。


おそらくルーメリアの母が、若い頃に作ったドレスなのだろう。


「ふふっ、どれも古いデザインで驚きましたか?」


ルーメリアがイザベラの心を見透かしたように話しかけてきたので一瞬戸惑ったが、ここは正直に話した方が良いと思う。


「え、はい。生地は良い布を使っているようですが、最近流行のものはないようですね。」


「ですから、私、お嬢様のために、あなたの腕を見込んでお願いに行ったのですわ。あなたが作ったコサージュも、レースのフリルもとても素敵なものでした。お嬢さまは断っても良いと仰いましたが、イザベラさん、私、あなたにぜひお願いしたいのです。」


正直言って、ドレスの直しは重労働である。


だが、ドレスの直しを内職にしてきたイザベラの職人魂に火が点いた。


自分が直したドレスを、こんなにも気に入ってくれたのだ。


他のドレスもやってやろうじゃないの。


「わかりました。お引き受けいたします。あっ、それからお二人とも、あたしのことはイザベラって呼んでください。」


「まあ、ありがとう。イザベラさん。ではなくて、イザベラ・・・ですよね。」


ルーメリアの顔が、嬉しそうに綻んだ。


その横でセレニアがほっとした顔を見せている。


「ではイザベラ、お嬢様のために明日から出勤はスズラン宮に来てください。作業場はこちらで準備しておきます。」


翌日から、イザベラのスズラン宮通いが始まった。


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