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もふもふの人間兵器?にされてしまった悪役令嬢ですが、冷酷非道侯爵様に溺愛されています  作者: 矢間カオル


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61話

一緒に王都に帰らないかと言うオスカーの提案に、ジオルグは、目を丸くして驚き、しばし言葉を失ってしまった。


「あの・・・、何かおかしなことを言っただろうか?」


オスカーもまた、ジオルグのその態度に驚く。


「あっ、いえ、失礼しました。まさか、あなたから、そのような誘いを受けるとは思っていなかったので・・・。」


慌ててジオルグは弁明したが、続けて核心の一言を放った。


「あなたは、私のことを嫌っていたでしょう?」


「うっ・・・」


オスカーは、自分の心を見透かされていたことを改めて痛感する。


「正直に言うと、初めはそうでした。ですが、あなたに接することが増えて、その考えが変わったのです。これまでの失礼な数々、本当に申し訳なかったと思っています。」


オスカーはジオルグに対して頭を下げた。


「いえ、どうか頭をお上げください。あなたの立場、心情を考えると、私を嫌うことは当然のことだと思います。私はそれだけのことをしてきたのですから・・・。」


ジオルグに促されて、オスカーが頭を上げると、ジオルグは視線をオスカーに合わせて、そのまま話を続ける。


「それなのに、このように謝罪をしていただけるなんて、こちらこそ、本当に申し訳なく思っています。」


そう言って、今度はジオルグが頭を下げた。


オスカーがジオルグに対して、まったくわだかまりがなくなったと言えば、嘘になる。


だが、これまでのジオルグを見て、話しを重ねているうちに、自分が抱いていたわだかまりが、とても些細なことにように思えてきた。


過去の私情に埋もれて、先を見る目を失うことの方が、もっと懸念すべきことなのだとオスカーは思う。


ジオルグの能力と才能は、この国の未来に必要だ。


それだけじゃない。


どんな状況にあっても沈着冷静に対応する精神力、どんなに酷い拷問にも屈しなかった強い意志、グレゴリーの誘いを断ってバルマンを選ぶ忠誠心、オフィーリアのために中和剤を完成させた責任感。


どれをとっても、手放すのは惜しい逸材なのだと思う。


国王陛下のためにも、ジオルグを王都に連れて帰りたい。


「では、一緒に王都に帰っていただけるのですか?」


オスカーの真剣な表情に、ジオルグは優しい笑顔で答えた。


「あなたにそう言っていただけて、本当に心から感謝いたします。ですが、前にも申しましたが、私は、ランベルジオスのバルマン王に忠誠を捧げた身。あなたと一緒に王都に帰ることはないでしょう。」


おそらく、その答えが返ってくると思っていた。


聞く前からわかっていたことだが、本の少しでも可能性があるのならと思って聞いてみたのだが、ジオルグの意志は相変わらず固い。


ジオルグらしいな・・・。


ふっと、オスカーに笑みがこぼれた。


二人のやり取りを黙って聞いていたオフィーリアであったが、この話が終わったようなので、別の話題を持ち掛けた。


「ジオルグさんは、これからどうするのですか?」


「私は顔が割れてしまいましたので、諜報活動は止めようとおもいます。以前から、バルマン国王陛下に、身体がきつくなったら戻って来て錬金術師で身を立てるようにと言われていたので、そうするつもりです。」


「そうですか・・・。我が国にとって、大いなる損失ですね。」


オフィーリアは、心から残念そうな顔をする。


「ルイス侯爵様だけでなく、お嬢さんにも、そのように評価をしていただき、ありがとうございます。」




翌朝、オスカーは、王都に帰るための馬車を用意した。


往きは馬で来たが、回復したてのオフィーリアのために、復路は馬車で、ゆっくりと帰る予定である。


オフィーリアたち三人は、馬車に乗る前に、ジオルグに最後の別れの挨拶をした。


「ジオルグさん、こうやって生きていられるのもあなたのお陰です。本当にありがとうございました。これからもお元気でいてください。」


「薬のこと、いろいろ教えてくれて、ありがとうございました。すごく勉強になりました。」


テオは、実験室でジオルグの手伝いをしていたが、オフィーリアが息を吹き返してからの十日間は、症状に応じた薬草の使用方法、体力増強のための薬膳など、いざと言うときのために役立ついろいろな知識と実践を学んでいた。


「ジオルグ、世話になった。今までありがとう。あなたを王都に連れて行けないのは残念だが、もし、王都に来たくなったらすぐに連絡してほしい。迎えに行くから。」


「ありがとうございます。皆さんもどうかお元気でいてください。」


一通りの挨拶が終ると、ジオルグは懐から四角い封筒を取り出した。


「申し訳ございませんが、この手紙を国王陛下に渡していただけませんか?」


「ああ、良いだろう。それではお元気で。」


オフィーリアとオスカーが乗った馬車は、テオの操縦で動き出した。


オフィーリアは、窓を開けて身を乗り出し、ジオルグが見えなくなるまで手を振っていた。


「さようなら、ジオルグさん。」


窓から身を乗り出しているオフィーリアのプラチナブロンドの髪が、風に吹かれて揺れている。


光の加減でオフィーリアの髪色が白っぽく見えた。


「・・・ん?」


きれいな青い瞳を一心にジオルグに向けて、笑顔で大きく手を振るオフィーリアを見送りながら、ジオルグはふと、既視感を覚えた。


「どこかで見たことがあるような・・・。ああ、そうか・・・。」


ジオルグは記憶の糸を手繰り寄せ、偶然に二度も出会った白い子犬を思い出した。


お嬢さんは、あの可愛い白い子犬に似ているんだ・・・。


にこにこと手を振るところは、俺に尻尾を振っていた子犬にそっくりだ・・・なんて言ったら、きっとお嬢さんは頬を膨らませて怒るんだろうな・・・。


そんなことを考えながら、ジオルグも馬車が見えなくなるまで、オフィーリアたちを見送るのだった。

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