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もふもふの人間兵器?にされてしまった悪役令嬢ですが、冷酷非道侯爵様に溺愛されています  作者: 矢間カオル


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60話

指しか動かせない私に気付き、オスカー様は私の両手を強く握ってくれた。


伝わってくる体温が、なんだかとても懐かしい・・・。


「オフィーリア、俺はここにいる。目を開けてくれ!」


目の前にいるオスカーが、突然叫んだ。


どうしてそんなこと言うのかしら・・・。


私は今、オスカー様の目の前にいるのに・・・。


いいわ。オスカー様、私の青い瞳をしっかり見てください。


オフィーリアは、これ以上は無理と思えるほど、目を大きく大きく見開いた。




「オ、オ、オフィーリア!」


オフィーリアが目を開くと、そこにオスカーの顔があった。


すぐ目の前にあるオスカーの赤い瞳から、ぽたぽたと零れ落ちる涙が、オフィーリアの頬に落ち、温かく肌を濡らしている。


向かい合って立っていたと思っていたのに、自分はベッドに横たわっていて、生えていた翼はなくなっていた。


「えっ?私・・・どうして?・・・」


オスカーに握られていた両手は、そのまましっかりとオスカーに握られている。


「オフィーリア、お帰り・・・」


オスカーの言葉で、オフィーリアは全てを思い出した。


そうだ、私は、鳥になった後、急に苦しくなって・・・。


あのとき、ジオルグの重く暗い声が聞こえた。


―恐れていたことが起こったようです― 


そこから先はよく覚えていないけれど、おそらく私は、今まで死の淵を彷徨っていたのだ。


もしかしたら、本当に死んでしまうかもしれなかった・・・?


「オ、オスカー様・・・、わ、私・・・」


それ以上の言葉を発することができなかったが、オフィーリアは、死の淵から蘇ったのだと悟った。


あの世とこの世の境から、オスカーの元に帰って来たのだ。


オフィーリアの青く美しい瞳からも、涙が溢れだし、ほろほろと目尻からベッドに流れ落ちた。


「オフィーリア、もう大丈夫だ。」


オスカーはオフィーリアの半身を抱き起こし、抱きかかえるようにして優しく背中を撫でた。


「もう、大丈夫だよ。オフィーリア・・・」


「オスカー様・・・」


夢の中では動かなかった腕が、今は思うように動かすことができる。


オフィーリアは動くようになった腕を、オスカーの背中に回した。


「オスカー様、私・・・帰ってこれたんですね。」


「ああ、そうだよ。」


オスカーの大きく温かい胸にすっぽりと包まれて、安心したのか、オフィーリアの目から、再び大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちた。


涙はしばらく止まることはなく、オフィーリアは、オスカー様、オスカー様と何度も名前を呼び続けて泣きじゃくった。


オスカーはオフィーリアが泣き止むまで、ずっと背中を撫でていた。




「隊長、買い出しに行ってきました。・・・って・・・、オ、オフィーリア様!」


テオが部屋に入ってくるなり、目を丸くして喜びの声を上げた。


オフィーリアは、オスカーに手渡されたコップで水を飲んでいる最中だった。


「オフィーリア様、助かったんですね。良かった。本当に良かった。」


「テオ、心配かけてごめんなさい。もう、大丈夫だから・・・」


そう話すオフィーリアの顔は血色がもどり、泣きはらした目は少し赤くなっている。


安堵がこみあげて、テオも涙で目がにじみ、涙は今にも溢れそうだ。


「ジオルグさんにも、伝えてきます。」


しばらくすると、松葉杖をつきながらジオルグが部屋に入ってきた。


その後に、指で涙を拭いながらテオも続いた。


「ジオルグさん、ありがとうございました。私、あなたのお陰で死なずにすみました。」


「中和剤が間に合って良かったです。」


「ジオルグ、私からも礼を言う。本当にありがとう。」


オスカーが今まで、ジオルグに対して懐疑的であったことを、ジオルグ自身も感じていた。


そのオスカーに改まって礼を言われたことに、多少驚くと同時に嬉しさも込み上げてくる。


「お二人の、お役に立てて良かったです。」


次にジオルグは、オフィーリアに話しかけた。


「では、診察しましょうか?」


ジオルグは、オフィーリアの脈拍、瞳、舌、体温、体の調子など診察を終え、十日間ぐらいここで養生してから王都に戻ることを勧めた。


オスカーもオフィーリアも、ジオルグのまるで医者のような働きに驚いたのだが、養父が医学に精通しており、その仕事を手伝っていたことを聞き、納得した。




オフィーリアが目覚めて初めて食べた料理は、ジオルグが作ってくれた少し変わった粥であった。


遠く海を越えた東の国で食べられる薬膳と呼ばれる料理だと、ジオルグは説明していたが、滋養強壮にとてもよく、病み上がりにぴったりの食べ物なのだそうだ。


「はい、アーンして。」


オスカーが、粥をすくったスプーンをオフィーリアの口元に近づける。


恥ずかしいけど、オフィーリアは、言われるままに口を開け、食べさせてもらう。


ずいぶん前にも同じことがあったが、あの時は病気ではなかったし、恥ずかしかったのですぐに遠慮したのだが、今回はオスカーがあまりにも嬉しそうに食べさせてくれるので、断るのも申し訳なく、そのまま食べさせてもらった。


それにしても、ジオルグは料理が上手い。


出される料理はどれも美味しく、栄養のバランスもとても良い。


いったいどこで料理を学んだのだろうと、オフィーリアは不思議に思う。


ジオルグに聞いてみると、文献に書かれていたレシピ通りに作っただけだと言う。


いやいや、レシピ通りに作ったからと言って、誰もがこんなに美味しく作れるものではない。


相当料理のセンスが良いのだろう・・・。


いつしか、オフィーリアがジオルグを見る目に、尊敬の眼差しが追加された。




オフィーリアの看病の合間を縫って、オスカーはジオルグといろいろな話をした。


そして、話をするたびに、ジオルグのあらゆる分野での造詣の深さに驚かされた。


医学的な知識が豊富なことは、オフィーリアのことでよくわかっていたが、オフィーリアにかかわった事柄以外にも、薬草、傷の手当など、知っておいた方が絶対に良いと思うようなことも話してくれるので、オスカーは話の途中で思わずメモをとったほどである。


錬金術の話になると、ジオルグの語りはさらに深くなり、オスカーは錬金術には詳しくないが、それでも、ジオルグの腕は、国内でも五本の指に入るのではないかと思えた。


また政治経済にも詳しく、前王ランドルフが崩御してから、どれほどこの国が発展したのかもよくわかっている。


ランドルフの悪業によって両親が死に、自身も命に関わる大火傷を負って、養父と一緒に隣国ランベルジオスに亡命した経緯も話してくれたが、そのような逆境にもめげずに立ち直り、意志を貫こうとした心の強さに頭が下がる思いがした。


国王陛下であるグレゴリーが、ジオルグを部下に迎えたいと言い出した際は、何故、アイザックを殺した凶悪な罪人を?と理解に苦しんだが、今ならわかる。


これほどまでに優秀な人材ならば、部下に迎えたいと思うのも当然のことなのだろう。


例え敵将であっても、自軍にとって必要かつ優秀な人材であると見込んだなら、是が非でも自軍に引き入れようと交渉するのは世の常だ。


良い人材を引き込むことは、上に立つ者の努めでもあるのだろう。


陛下は初めから、ジオルグの能力と才能を知っていたのだ。


今更ながらオスカーは、グレゴリーの情報力と洞察力に感嘆するのだった。




オフィーリアの身体はジオルグの薬膳のお陰もあって、見る見るうちに元気を取り戻し、六日を過ぎた頃には日常生活が送れるようになった。


食事も皆と同じものが食べられるようになり、七日目には、じっとしているのは申し訳ないと言い出して、部屋の掃除をし始めた。


九日目の夜、王都へ帰る準備も終わり、リビングのソファに座ってお茶を飲みながら皆でくつろいでいるときに、オスカーがジオルグに一つの提案をした。


「ジオルグ、いえ、マティアス・ルード男爵、あなたも一緒に王都に帰りませんか?」 

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