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もふもふの人間兵器?にされてしまった悪役令嬢ですが、冷酷非道侯爵様に溺愛されています  作者: 矢間カオル


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56話

ジオルグをテオに預けて自由になったオスカーは、少し前から塔の下の雰囲気が違っていることに気がついていた。


人は集まってはいるが、塔の中に入ろうとはしない。


戦いに敗れた仲間を見て、恐れをなして入ってこないのかもしれない。


だが、何やら怒鳴り声もする。


この違和感の正体を確かめるために、オスカーは鋸壁から顔を出し、下を覗いた。


すると、大柄の男がこちらに向かって何かを投げた。


それは、ものすごい勢いで、こちらに向かって飛んでくる。


「えっ? あ、あれは!」


オスカーの判断が正しければ、飛んでくる物は爆弾だ。


まずい、このままでは・・・


オスカーは皆の方に向きを変え、大声で叫んだ。


「みんな、ここから離れろ!」


逃げ場のない屋上であるが、少しでも、この場所から離れて欲しい・・・


そう思って叫んだ。


そして自身もこの場所から離れようと足に力を入れたとたん、激しい爆発音と共に、ガラガラと、足元が崩れ落ちた。


「オ、オスカー様!」


オフィーリアの目の前で、オスカーが足もとの石床と共に崩れ落ちていく。


「オスカー様、つかまって!」


慌ててオフィーリアがオスカーを助けようと手を伸ばしたが、指がほんの少しかすっただけで、オスカーを掴むことはできなかった。


「オフィーリア!逃げろ!」


その言葉を残して、オスカーは瓦礫と共に落下していく。


迷ったり、躊躇っている暇はない。


オフィーリアは、足に力をいれると、勢いよくオスカーに向かって飛び込んだ。


「オスカー様、私がオスカー様を守ります!」


空中を落下していくオフィーリアには、何故か、落ちていくオスカーの速度がスローモーションのように見えた。


これも人間兵器の力なのか、それとも死を目前にした人間の心の成せる業なのか、そんなことはわからない。


だが、ゆっくりと落ちるオスカーとの距離は、確実に徐々に縮まっていく。


私は、神殿の天井の重い瓦礫を両腕で支えた。


だったら、落ちる二人ぐらい、私の足で支えることができるかもしれない。


オスカー様、必ず私があなたを守ってみせます。


私には、もう、あなたがいない人生なんて、考えられない!


もう少し、もう少しで、オスカー様に届く・・・


オフィーリアは両手を広げ・・・届いた!・・・オスカーの胸にしがみついた。


「オフィーリア!」


「オスカー様、私があなたを守ります。足を下に!」


オスカーはオフィーリアの考えを瞬時に理解し、身体をひねって二人の足を地面に向けた。


その反動でオフィーリアの髪を束ねていた麻ひもが外れ、束ねていた髪が広がる。


「これで良いか?」


「はい。」


オフィーリアは、これから迫る着地に備え、足に力を込めようとしたが、それよりも早く、オフィーリアの服の背中のあたりが、ビリビリと破れる音がした。


「オ、オフィーリア!」


オスカーはその目ではっきりと見た。


オフィーリアの背中に生えた大きな白い翼を!


バサッ、バサッ


翼は宙を扇ぎ、二人は空中で止まった・・・。


オフィーリアのプラチナブロンドの輝く髪が、風に吹かれてサラサラとなびいている。


屋上にいる二人も、地上にいるタイロンたちも、驚きのあまり、言葉を失くしてあんぐりと口を開けてこの光景を見ていた。


だが、一番驚いたのはオフィーリアだ。


なんなの? これは・・・。


これも人間兵器の力なの? まさか、自分にこんな力が残っていたなんて・・・。


翼が発動したきっかけはわからなかったが、落ちたくないと、オフィーリアの強く湧き出た思いを叶えるように、翼は動いた。


それなら・・・


地上をみれば、タイロンやその部下たちがこちらを見ている。


わざわざ、敵の前に降りたくない。


だから今は、皆がいる屋上に戻りたい。


そう思うと、バサバサと翼が激しく動き、オフィーリアとオスカーを、上へ上へと押し上げていく。


「す、すごい! 私、空を自由に飛べるの? この力で、テオもジオルグさんも助けることができるわ!」


オフィーリアは、感動しながら、屋上へと上がった。


「す、すごい! 鳥人・・・これが人間兵器の力なのか・・・」


ジオルグは目の前で展開している信じられない光景に目を輝かせた。


仲間たちは、こんなにすごい薬を開発していたのか・・・。


だが・・・翼を広げているオフィーリアのことを思うと、ジオルグの心に不安が込み上げた。


オフィーリアとオスカーは翼の力で屋上に戻ったが、オフィーリアの足が床に着くと同時に翼がシュルシュルと引っ込んだ。


「あら、翼が引っ込んでしまったわ。皆をこれで助けられると思ったのに・・・。」


残念そうに呟くオフィーリアであったが、抱き合ったままのオスカーが、さらに腕に力を込めてオフィーリアを抱きしめた。


「オフィーリア、助けてくれてありがとう。お前はいつも、俺を危機から救ってくれる。だが、もう、これ以上は・・・」


「オスカー様の仰りたいことはわかります。でも、この力を使えば、皆を助けることができるんですよ。」


最後の言葉を苦しそうに言うオスカーの背中を優しくなでながら、オフィーリアはオスカーを説得しようとしたのだが、少し困ったような顔をした。


「私はこの力を使いたい。だけど・・・、どうして翼が生えたのかわからないんです。」


その疑問にジオルグが答えた。


「おそらく、お嬢さんが、宙に浮いたことが引き金になったのでしょう。」


「なるほど、それなら、私が、一人ずつ抱いてここから飛べば良いのですね。」


「なっ・・・、ダ、ダメだダメだ、絶対にダメだ!」


「えっ?・・・でも・・・」


オフィーリアなら本当にやりかねない・・・、そう思うとオスカーは青くなった。


「そんな不確かなことを、ここで実行するわけにはいかない。それに、もうこれ以上、お前の力を使ってほしくないんだ。服だって、もう・・・」


オスカーは、自分の上着を脱いで、オフィーリアの肩にかけた。


「あ、ありがとうございます・・・。」


オフィーリアは肩にかけられた上着を見て、初めて服の背中が破れていることに気付き、顔を赤らめた。


「隊長、ともかく、早くこの場から出ましょう。次の爆弾が投げられる前に下りないと。ここにいたら、爆弾の餌食になってしまいます。」


「ああ、そうだな・・・って、どうして次の爆弾が投げられないんだ?」


塔を爆破して塔ごと全滅させるつもりなら、続けて投げた方が確実だ。


だが、どこからも爆発音は聞こえてこない。


不思議に思ってオスカーは、塔の外へ視線を移した。


「ああ、助かったぞ。みんなあれを見ろ!」

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