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もふもふの人間兵器?にされてしまった悪役令嬢ですが、冷酷非道侯爵様に溺愛されています  作者: 矢間カオル


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47話

グレゴリーに、王太子を殺したいと思ったことがないのでは? と指摘され、ジオルグは考える。


その通りだ。


あの薬もイザベラに頼まれたから渡したが、誰に使うかまでは聞かなかった。


決して自分がセオドアを殺したいと思ったわけではない。


だが・・・とジオルグは思う。


「やはり、私はあなたからの誘いは断るべきだと思います。私に殺す意志がなくとも、実際に王太子が命の危険に脅かされたのですから。」


「そうか・・・。この事実は、私しか知らぬのだから、誰もそなたと毒を結び付ける者はいないのだが・・・。そなたは惜しい人材だ。もう一度考え直さないか?」


「いえ、私は隣国ランベルジオスの国王に忠誠を誓った身なのです。あの方がいなければ、私はとうの昔に死んでいた。私は最後までバルマン王に忠誠を尽くしたいと思います。」


「そなたの意志は固いのだな。」


グレゴリーは小さくため息をつく。


そのとき、ノックと共にアレックスの声が聞こえた。


「お話し中、失礼いたします。新しい情報が入りました。」


グレゴリーの許しを得てアレックスが部屋に入り、グレゴリーの耳元でその情報を伝える。


それを聞いたグレゴリーは、大きく頷いた。


「では、私は引き続き、部屋の外で護衛を続けます。」


アレックスが出て行ったのを見届けると、グレゴリーはジオルグに向き直った。


「たった今、入った情報だ。イザベラが罪を認めた。」


昨夜ブランは、毒薬ではない、冤罪だと、罪を認めようとしなかったが、イザベラの裏切りを知ってから、ブランは態度をガラリと変えた。


毒薬は、イザベラからもらった。


借金をなくす代わりに、王太子セオドアを殺すように頼まれた。


俺の方こそ被害者だ。


だから俺は悪くない。


そう証言を繰り返し、取り調べ官を呆れさせている。


イザベラは、連行された当初は、ブランとは関係ない、毒なんて知らないと一貫して言い張っていたが、ブランが真実を語りだし、おまけにウッド伯爵まで全てを語り出したため、イザベラは白を切り通せなくなってしまった。


「ブランに毒薬を渡したのは自分だと認めたよ。だが、薬は、名前も知らぬ男から買ったと言い張っているそうだ。おそらく、そなたの名前は死んでも言わぬつもりだろう。」


「イザベラはどうなる?」


ジオルグは哀れなイザベラを思い浮かべ、グレゴリーに問う。


「たとえ未遂に終わったとしても、この国の王太子を殺害しようとしたのだ。極刑は免れまい。」


極刑・・・


イザベラは、生まれてからウッド伯爵に引き取られるまで、不幸を絵に描いたような人生を歩んできた。


引き取られてからの四年間も、貴族令嬢らしく生きようと、苦労も多かったに違いない。


しかし、ウッド伯爵の養女となり、やっと人間らしい生活ができるようになったのだ。


きっと彼女なりに幸せを感じたのだろう。


柄にもなく、恩返しをしたいなどと思うほどに・・・。


もしイザベラが、ウッド伯爵を助けたいなどと思わず何もしなければ、彼女の望み通り、エイダンの側妃になれるはずだった。


俺のこともそうだ。


イザベラは俺との関わりを一切話す気はなく、きっと墓場まで持っていくつもりだ。


それが、彼女が俺にできる精一杯の恩返しだと思っているのだろう。


だが・・・


このままでは、イザベラは、極刑となり、命を失う。


せめて、命だけでも助かれば、彼女のことだ、まだ望みはある・・・。


何か、イザベラを救う手立てはないのか?


考え込むジオルグを、グレゴリーは黙って見ていた。


ジオルグが、ふと顔をあげると、グレゴリーと目が合った。


そのとき、一つの考えが浮かんだ。


「先ほど、王太子を殺したいと考えているのは、ウッド伯爵と側妃だと言っていたが、側妃はそれを認めたのですか?」


いきなりの問いにグレゴリーは疑問に感じたが、これには正直に答えることにした。


「側妃は認めておらんよ。ウッド伯爵の良からぬ噂を聞いたから忠告しただけだと言っている。ウッド伯爵は側妃に唆されたと言っているが、証拠は何もない。」


その言葉を聞き、ジオルグの目が光った。


「あなたに良いことを教えましょう。それと引き換えに、イザベラの極刑を取り止めて欲しい。」


その言葉にグレゴリーは、身を乗り出す。


「良いこととは?」


「側妃カーラの、王太子殺害依頼の証拠です。」


「何と、そんなものが存在するのか・・・。」


驚いたグレゴリーは、部屋の外で待機しているアレックスを呼んだ。


「アレックス、入ってきなさい。重要な話がある。」


「陛下、何事でしょうか?」


「マティアスが、カーラの悪事の証拠を教えると言うのだ。」


「何と、そんなものが・・・」


これには、アレックスも驚きを隠せなかった。


今まで、カーラが怪しいと思っていても、確実な証拠を見つけることができなかった。


それをいとも簡単に出せると言う・・・。


「良かろう。その話が本当なら、イザベラの極刑は取りやめる。私の名に懸けて誓おう。」


グレゴリーは、ジオルグの提案を受け入れることにした。


神殿を爆破したアイザックは、非常に疑り深い男で、殺人を依頼してきた客の証拠をある場所に保管している。


それを使って客を脅すことが目的ではなく、もしもの時には、その証拠が身を守ることになると考えてのことである。


昔、アイザックの身辺を調べている最中に、ジオルグが偶然見つけたアイザックの秘密だった。


だからカーラの手紙は、今もその場所に保管されているはずだ。


ジオルグは、手紙の在りかを教えた。


アイザックが第二の隠れ家として使っていた小さな家の場所を。


「あなたも苦労しているのですね。あの側妃はだめだ。あんな女が国母になったら、国が滅びる・・・。」


ジオルグは憐みの目でグレゴリーを見るのだった。




ガチャリと、ドアが開いた。


ノックもせずに、誰が入ってきたのかと皆が驚いてみると、ドアの前に立っているのは、もっと驚いた顔をしているオフィーリアとオスカーである。


「へ、陛下、それに騎士団長が、何故ここに?」


オスカーとオフィーリアは、慌てて跪いた。


「このような場所でお会いするとは思わず、大変無礼なことをいたしました。申し訳ございません。」


オスカーはジオルグの顔を知らない。


オスカーが見たグレゴリーとジオルグは、穏やかな雰囲気で対面しており、グレゴリーには笑顔さえ見えた。


そばにいるアレックスにも、敵に対する緊張感が見られない。


その様子から、国王グレゴリーと対面している人物は、敵ではないと判断した。


「お客様との会談のお邪魔をしてしまったこと、深くお詫び申し上げます。オフィーリア、外に出よう。」


オスカーが謝罪の言葉を述べて、オフィーリアと一緒に部屋を出ようとしたが、グレゴリーが止めた。


「何故ここに来たのか、言いなさい。」


その言葉に、オスカーは足を止め、グレゴリーに視線を向ける。


「恐れながら、申し上げます。私はジオルグに遭遇し、現在追跡中でございます。王都中に捜査網が張られたので、もしかしたら、この屋敷に隠れているかもしれないと思い、探しに来たのです。」


「ほう、何故、ジオルグがここにいると思ったのかね?」


何故と問われても、オフィーリアの提案だったからとは言いにくく、適当な理由を付けることにした。


「この家が空き家のようだったので、犯人が逃げ込むのにちょうど良いと思いました。しかしながら、陛下とお客様に失礼があったことを、深くお詫びいたします。」


二人のやり取りを聞いていたオフィーリアは、オスカーに囁く。


「あのお客様が、ジオルグです。」


「な、何だって!?・・・」


オスカーは驚いたが、ジオルグは今、国王の客人としてこの場にいるのだ。


捕まえるわけにもいかず、どう対応して良いのかわからない。


アレックスに救いを求める視線を送ると、しばらく待て、と無言の視線が返って来た。


「ふむ、そのお嬢さんは、何か知っているようだね。話してごらん。」


グレゴリーが、オフィーリアに声をかけた。


「恐れながら申し上げます。少し前のことですが、私の不注意からこの屋敷に入ることになりました。そのときに、こちらの肖像画のご夫人を、どこかで見たことがあると思ったのです。」


オフィーリアは、この屋敷で初めて肖像画を見た際、夫人が誰なのかは思い出せなかったが、墓地でジオルグに遭遇したときに、やっと思い出した。


髪の色も、目元、鼻筋、口元も、夫人とジオルグはそっくりなのだ。


真ん中に描かれていた子どもは、大人になったジオルグとは雰囲気が違っていたが、夫人と似ていることから、子どもはジオルグなのだと思った。


この屋敷が、ジオルグの家族の屋敷ならば、ここに隠れているかもしれない。


そう思って来たのだと、グレゴリーに説明した。


グレゴリーは、最後まで優しく微笑みながら、オフィーリアの話を聞いていた。


「オスカー、そなたは賢く良い伴侶を得たのだな。」


「もったいないお言葉、恐悦至極にございます。」


急に妻を褒められて、オスカーは恐縮する。


「ふふっ、そう硬くならずとも良い。ところで、オスカー、そなたに頼みたいことがあるのだ。」


王自ら、直接自分に頼みごとをなさるとは・・・


オスカーは、ますます緊張した。

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