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もふもふの人間兵器?にされてしまった悪役令嬢ですが、冷酷非道侯爵様に溺愛されています  作者: 矢間カオル


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37話

イザベラは不気味な笑みのまま、「できるでしょ?」 と問いかけたが、もうそれは、問いかけではなく、命令そのものだった。


ブランには、断るという選択肢は残されていない。


「わ、わかった。やればいいんだな。だが、殿下にどうやったらこの薬を飲ませられるんだ? 護衛もついているのに。」


「もうすぐ、舞踏会があるでしょう? そのときがチャンスだわ。ワインにこの薬を入れて飲ませれば良いのよ。」


「でも、怪しまれないか?」


「それなら、あなたも飲めばいいわ。」


いとも簡単にそう言うイザベラに、ブランは憤りを覚える。


死を招く怖ろしい毒を、俺にも飲めと言うのか?


「おい、そんなことをしたら俺も死んでしまうじゃないか。」


「うふふ、安心して。あなたには解毒剤を渡すから。」


イザベラは紙袋に入った薬を取り出し、にっこりと微笑んでブランに渡した。


「毒を飲んでも、この解毒剤を三十分以内に飲めば、毒は中和されて無毒になるの。」


その言葉に、ブランはほっとする。


それならそうと、初めに言ってくれれば良いものを・・・。


「・・・そうか、わかった。・・・なんとかやってみるよ。」


「ふふ、期待してるわね。」


そう言うと、イザベラは部屋から出ていった。


オフィーリアは、二人の会話を聞き、あまりの恐ろしさにブルブルと震えが止まらない。


だが、イザベラが一人になってから放った独り言に、もっと大きな衝撃を受けた。


「キャ、キャーン!(そ、そんな!)」




イザベラとブランの会話を盗み聞いてから一週間が経った。


今日は舞踏会の日だ。


オフィーリアとオスカーが寝室の窓から朝空を見上げると、気持ち良いほど晴れ渡っている。


「オスカー様、いよいよ決戦の日が来ましたね。」


「ああ、準備は整った。」


オスカーはオフィーリアを抱き寄せ、その手をギュッと握る。


「ここまで来れたのも、オフィーリアのお陰だ。本当にありがとう。今日もお前に頼ることになるが、決して無理をしないでくれ。」


「オスカー様、きっと全てが上手くいきます。私に任せてください。」


オフィーリアは力強くそう言うと、オスカーの手に自分の手を重ねた。




一方、ホワイト伯爵家では、ブランの父は貴族の誰とも会いたくないと言って舞踏会の出席は取りやめたが、ブランは王太子に別れを告げてくるからと一人で出かけた。


いつもならイザベラをエスコートするのだが、借金まみれの自分を王太子に憐れんでもらう必要があったので、今回は華やかなエスコートはせずに、目立たず一人で静かに会場に入った。


会場でしばらく待っていると、セオドアがオスカーと他の護衛を引き連れて入場してきた。


会場にいる人々は、割れんばかりの拍手でセオドアを迎えたが、ブランはこれから自分がすべきことに心臓が高鳴り、拍手どころではない。


この一週間、何度も何度も練習した。


言葉もしぐさも、鏡を見ながら何度も練習してきたのだ。


必ず、やり遂げて見せる。


ブランは、ドキドキする心臓を落ち着かせるように自分に言い聞かせた。


そして、静かにワインが置かれているテーブルまで移動して、セオドアを待った。


舞踏会が始まると、談笑をしている者、ダンスをする者と、参加者たちはそれぞれ好きなように楽しんでいる。


セオドアは、会場をゆっくり歩きながら、時々立ち止まっては、貴族たちとの談笑を繰り返している。


セオドアが、ブランのそばまでやってきた。


ブランは、ワイングラス二つにワインを注いだ。


「殿下、狩猟大会では優勝おめでとうございます。」


本来は目上の者から声を掛けられるのを待つべきなのだが、ブランは話のきっかけを作りたくてあえて自分から話しかけた。


「ああ、ブランか。この度は大変だったな。鉱山の崩落事故が起きるとは。」


「殿下にご心配いただけるとは、誠に恐悦至極に存じます。本来ならば、とてもこのような華やかな場所に参加できない状況なのですが、今日は殿下にお別れを言いたくて、恥を忍んでこの場にやって参りました。」


「お別れとは?」


「ホワイト家は殿下もご存知の通り、いまは大変な状況に陥っております。ですから、もう、このような華やかな場所には来ることはできないでしょう。ですから、殿下に最後の別れの杯を交わしていただきたいのです。私を哀れと思ってどうかお聞き届けください。」


ブランの哀れを誘う演技とセリフは、とても断りにくい雰囲気を、この場に作り出していた。


そばにいる貴族たちは、セオドアが承諾するのかしないのか、興味津々で見ている。


「そうか。わかった。」


セオドアは、ブランの願いを叶えてやることにした。


「では、こちらを。」


ブランはテーブルに置いていたワイングラスを二つ手にとり、一つをセオドアに差し出す。


だが、セオドアはすぐに受け取らず、少し悩んだ顔で、差し出されたワイングラスをじっと見ている。


「毒なんて入っていませんよ。何ならこちらと交換しましょう。」


ブランは、もう一方のワイングラスを差し出した。


セオドアは、それを受け取って言う。


「では、これからの君の幸運を祈って・・・」


ブランもセオドアもグラスを軽く掲げ、セオドアが言葉を続ける。


「乾杯・・・なんてしないよ。」


セオドアが、ブランのグラスを奪い取った。


「で、殿下?」


ブランは、一瞬、何が起こったのか理解できなかったが、セオドアが、両手にグラスを持っている。


毒入りのワインを奪われてしまったことがわかり、真っ青になった。


「オスカー、こちらへ。」


セオドアは、後ろに控えているオスカーに声を掛けた。


「はい。殿下。」


「このワインに、毒は入っているか?」


セオドアは、オスカーの胸元から顔を出している白い子犬に、ワインの匂いを嗅がせる。


人の嗅覚では判別できない匂いでも、子犬に変身したオフィーリアなら、ほんのわずかな違いでも判別することができるのだ。


「キャン」


「そうか。毒が入っているのか。それならこっちはどうかな?」


セオドアは、もう一方のワインも、子犬の鼻先に近づけた。


「キャン」


「ふむ。どちらにも毒が入っているようだ。」


ワインを奪われたことに、一瞬狼狽えてしまったブランであったが、このままではいけないと、反撃に出る。


「殿下、お言葉ですが、毒なんて入っておりません。犬に判別させるなんて、言いがかりもいいところです。」


「毒専門の検査員に調べさせたらわかるだろう。オスカー、すぐにこのワインを検査員に渡してくれ。この会場に待機させている。」


「はい。かしこまりました。」


オスカーがセオドアから二つのグラスを受け取ろうとした瞬間、ブランが一つを奪い取り、一気に飲み干した。


「あっ!」


「えっ?」


周りにいた皆が驚きの声を上げる。


「だから、毒なんて入ってないって言ってるでしょう? ほら、私はぴんぴんしている。これがどうして毒だなんて言えるのですか?」


「何ならもう一つの方も!」


ブランはオスカーが持っているグラスを奪いとろうとしたが、オスカーがさっと避けたので、それはできなかった。


「貴様、証拠を隠滅する気か? すぐにブランを拘束しろ。」


オスカーの一声で、護衛騎士たちがブランを捕まえるために動いた。


ブランは騎士が動くよりも早くしゃがみ込み、ポケットに入れていた解毒剤を誰にも見えないように飲み込んだ。


「何をしている。立つんだ。」


いきなりしゃがみ込んだブランを、騎士たちは引っ張り上げた。


騎士たちに腕を掴まれ、連れて行かれながらも、ブランは叫んでいた。


「毒なんて入ってない。これは濡れ衣だ!」


騒然とした中で、セオドアはイザベラを見つけると、ツカツカと歩み寄った。


「イザベラ、あなたもだ。」


それまで、少し離れた場所で、まったく関係ない振りをしていたのに、いきなり名前を呼ばれてイザベラはドキリとする。


「はあ、ちょっと、何言ってるのよ、じゃなくて、何言ってらっしゃるのですか?」


「あなたは重要参考人として話を聞こう。イザベラ嬢を連れて行け。」


「ちょっと、私は関係ないわ!ブランが一人でやったことでしょ。止めてよ。触らないで。このくそ野郎!」


イザベラを連れて行こうとする騎士たちに、暴言を吐き暴れて抵抗したが、騎士の力にはかなわず、結局イザベラも連れて行かれた。


この一部始終を、ウッド伯爵は少し離れた場所で見ていた。


イザベラまで連れて行かれてしまった。


次は私か? 


いや、イザベラは、私は何も知らない方が良いと言ってくれた。


失敗しても私には関係ない、そういう約束だ。


大丈夫だ。


あれは、あいつらが勝手にやったことなんだ。


だが、ウッド伯爵の思いも虚しく、騎士が近づいてきた。


アレックス近衛騎士団長とオスカーだ。


その後ろにはセオドアもいる。


「ウッド伯爵、御同行願います。」


アレックスの口調は丁寧だが、いつにも増して威圧的だった。


「私は関係ない。あれはブランがやったことだ。私は何も知らない。」


「いえ、そのことではございません。ウッド伯爵、あなたにスパイ容疑がかかっております。今からウッド伯爵家の家宅捜索を行います。その場に御同行していただきたいのです。」


アレックスはそう言って家宅捜索令状を見せる。


「な、何だって? スパイ容疑? いったい何のことだ。」


「それは家宅捜索をすれば答えが出るでしょう。」


アレックスは、半ば強引に引きずるようにしてウッド伯爵を連行し馬車に乗せた。


それに続き、オスカーもセオドアも他の騎士たちも会場から出た。


舞踏会会場は、立て続けに起こった連行騒ぎに騒然となり、セオドアが会場から出た時点で舞踏会はお開きになった。




ウッド伯爵邸に着くと、家宅捜索が始まった。


騎士たちは、文書を探すために各部屋に分かれて捜索している。


オスカーは懐に入れていたオフィーリアを床に降ろした。


「オフィーリア頼むよ。」


「キャン(私に任せて)」


オフィーリアの捜索活動が始まった。

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