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もふもふの人間兵器?にされてしまった悪役令嬢ですが、冷酷非道侯爵様に溺愛されています  作者: 矢間カオル


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36話

ホワイト伯爵所有の鉱山が崩落したニュースは、瞬く間に広がった。


ホワイト伯爵が新事業を立ち上げたことは貴族の間で評判になっていたこともあり、その利益にあやかりたいと、多くの貴族が出資していたので、関心の高さは尋常ではなかった。


人々の反応は、出資した金が戻って来ないと嘆いたり、ホワイト伯爵の今後の動向がどうなるかと、興味本位で騒ぎ立てている人がほとんどである。


人づてに伝わる情報は、嘘か誠かわからない噂までも、飛び交う始末だ。


当然オフィーリアのもとにも、その噂は届いていた。


オフィーリアの父親であるベイル伯爵も、実は出資者の一人である。


毎年出資しては幾ばくかの利益を得ており、それが縁でオフィーリアとブランの婚約を取り決めたほどである。


今回は例年より多額の出資をすると言ってたから、きっと今頃大騒ぎをしているはずだ。


しかし、オフィーリアが気になったのは、父親の嘆きよりも、イザベラのことであった。


噂の中に、一人の少女の話しがある。


少女がいなくなった直後に崩落が始まったが、その少女は忽然と消えてしまったと言うのだ。


見張り番の男たち二人がその少女を見ただけで、他の労働者たちは誰もその少女を見ておらず、少女の存在自体も知らないと言う。


噂が噂を呼び、崩落を知らせる神だったのでは?


崩落を招く悪魔だったのでは?


そんな言葉も、まことしやかに囁かれている。


オフィーリアは、噂の少女はイザベラなのではないかと思う。 


ジオルグとイザベラと一緒に馬車に乗ったあの日、イザベラはブランの鉱山を見に行くところだった。


何のためにわざわざ見に行くのだろうと思っていたが、今回の事件の下見だとしたら、納得がいく。


ジオルグはブランの鉱山を欲しがっていたけれど、事業を立ち上げるから売ってくれないと残念がっていた。


だけど、鉱山を手放さなければならないほどの事故があったら? 


その事故に、イザベラが関わっていたとしたら? 


いくら何でも、自分の夫となる人の事業の邪魔をする? 


違うわ。


イザベラがなりたかったのは、ブランの妻じゃない。


どこかの王の側室になること・・・。


だったらイザベラにとって、ブランは邪魔な存在になるわ。


それとは別に、側妃カーラは、イザベラの父であるウッド伯爵と会談したって聞いたわ。


もしかしたら、彼女はセオドア殿下の身に危険が迫るようなことをほのめかしているかもしれない・・・、アイザックのときみたいに・・・。


頭の中はごちゃごちゃだけど、もしも私が考えている通りだったら、全部つながるわ。


どうしよう。


このままだと、大変なことになってしまう。


オスカー様は、今仕事でいない。


きっと城でも、噂でもちきりだろう。


テオは? テオはいるかしら。


オフィーリアは庭に走る。


「テオ、いる?」


「はい。ここにいます。」


テオはシュッと木から降りてきて、オフィーリアの前で跪く。


「良かった。いたのね。連れて行って欲しいところがあるの。今、時間あるかしら。」


「はい。どちらへ連れて行けばよろしいのですか?」


「ブランの、ホワイト伯爵の屋敷です。でも、家の中に入る必要はないの。門の近くまで行ったら私が案内するわ。じゃあ、少し待っててね。今から秘密兵器で子犬になってくるから。」


オフィーリアは屋敷に戻り、マリーを呼んだ。


「マリー、今から子犬に変身します。だからこの箱の中身を私の顔にぶちまけてくれない?」


「ぶ、ぶちまけるんですか? それもお顔に?」


マリーが驚いて復唱する。


「そうよ。今までは自分で頭からかけてたけど、段々と慣れてきたみたいなの。だからもっと怖くないと・・・。だからお願い。水をぶっかけるように、・・・か、か、顔めがけてやってちょうだい!」


威勢の良い言葉とは裏腹に、オフィーリアの声と体が震えている。


「本当によろしいのですね。」


「いいわ。覚悟はできてる。」


「では、いきますよ。」


マリーはオフィーリアに手渡された箱を持って中身をぶっかけようとしたが・・・止まった。


「お嬢様、目を瞑ってしまったら効果がないのでは?」


オフィーリアは恐怖でブルブル震えて、目をギュッと瞑っていた。


「あら、本当だわ。うっかり目を瞑ってしまったわ。今度はちゃんと目を開けているから大丈夫。」


「それでは行きますよ。せーの!」


オフィーリアの顔目掛けて、蜘蛛の大群が宙を舞う。


「キャ――――――ン!」




テオはオフィーリアを服の中に入れて、ブランの家まで行った。


ホワイト伯爵邸に近づくと、門で怒りの声を上げている貴族がいる。


「いったい、どうしてくれるんだ。絶対に儲かるって言うから出資したのに、金は返してくれるんだろうな。」


「誠に申し訳ございません。この件につきましては後程詳しくご説明いたしますので、どうかしばらくお待ちください。」


対応している執事は、疲れきった顔で、何度も口にしているであろう言葉を繰り返している。


「クウーン(ブランの家もたいへんね。)」


「そのようですね。かなりな損害のようですから、これからどうなることやら。」


「クン?(私の言いたいことわかるの?)」


「ふふっ、なんとなくですが、わかりましたよ。」


テオってすごい!と思ったオフィーリアは、懐から出して欲しくてモゾモゾと動いた。


「出たいのですか?」


「キャン」


テオはオフィーリアをそっと地面に下ろした。


やっぱりテオってすごい!


ブランの屋敷には、子どもの頃に何度も遊びに来たことがある。


だから、部屋の配置もよく分かっている。


敷地が広くないので、建物は通りとの距離が近い。ブランの部屋は二階の一番端にあり、窓から通りがよく見えていた。


オフィーリアは、通りを歩き、ブランの部屋に近い場所で止まり、耳をピンと立て、意識を集中する。


「ああ、また文句を言いに来た。これで何人目だ?」


この声はブランのお父様の声ね。


「あなた、私たちこれからどうなるのでしょう?」


これはお母様ね。


いつかは自分の義父母になるはずだった人の声を盗み聞くのは、なんとも複雑な気分だ。


「この家と領地を担保にして、銀行から金を借りてますよね。」


ブランの声だわ。


「借金を返せなくなったんだから、俺たちは住む家も、鉱山も領地も、何もかも銀行に取られて無一文になるんだ! それに、銀行だけじゃない。出資してくれた貴族たちには、どうすればいいんだ。」


ブランのイラ立った声が、大きく響いている。


「旦那様、イザベラお嬢様がお坊っちゃまにお話があるそうですが、お通ししてもよろしいでしょうか?」


来たわ! 思った通りにイザベラが・・・。


「イザベラは俺に話があるんだろう? では、俺の部屋に通してくれ。」


オフィーリアは、一言一句聞き漏らすまいと、さらに耳に集中する。


イザベラは執事に案内されて、ブランの部屋に入った。


ブランはイザベラを出迎える気力もなく、ソファに座っまま彼女を迎え、椅子に座るように言う。


「ブラン、今回のこと、たいへんだったわね。門でわめき散らしている貴族を見たわ。このままだと、路頭に迷うことになりそうね。」


イザベラは、ブランを憐れむ様子もなく、淡々と言う。


「路頭に迷う? ああ、確かにそうだな。あんな大規模な崩落を起こした鉱山は、これから十年間は何もできない。事業は失敗、借金を返す当てもない。だが、イザベラ、お前はそんなことを、わざわざ言いに来たのか?」


ブランの声に、怒りが上乗せされる。


「違うわ。あなたにとって朗報を伝えに来たのよ。」


「朗報だって? この状況を切り抜ける方法があるのか?」


ブランは身を乗り出してイザベラに問う。


「あるわよ。ただし、あなたの決断にかかってる。聞きたい?」


「あるなら教えてくれ!」


もう、どうにでもなれと言わんばかりの、ブランの口調であるが、イザベラは、相変わらず、淡々と話を続ける。


「私の父とキャスレル商会が、ホワイト伯爵の鉱山を、借金と同額で買い取っても良いって言うの。」


「なんだって? 借金と同額だって?」


「そう、鉱山は失うことになるけど、領地もこの家も残るし、銀行にも出資した貴族にも全額返せるわ。悪くない話でしょ? ただし、あなたがこれから話すことをしてくれることが条件だけど・・・。」


「いったいそれは何なんだ? 俺は何をすればいいんだ?」


ブランは藁をも掴みたい思いで、イザベラに問う。


「聞いてから断るなんてできないわ。やるかやらないか、覚悟を決めてくれる?」


「うっ・・・」


言葉につまり、一瞬戸惑いを覚えたが、婚約者のイザベラが、まさか命を投げ出せとは言わないだろう・・・。


「・・・わ、わかった。か、覚悟を決めた。お前の言うことは・・・何でもしよう。」


イザベラは、にっこり微笑むと、カバンから小さな小瓶を取り出して、ことりとテーブルに置いた。


「この薬を、王太子に飲ませて欲しいの。」


イザベラの美しい微笑みが、不気味な笑みに変わる。


「な、なんだって? もしかして・・・それは、ど、毒か? そんなものを飲ませたら、俺が捕まって死刑になるじゃないか。」


ブランの心の中に、落胆が広がる。


いくら何でも、死刑はご免だ!


だが、イザベラの口調は変わらない。


「これって特殊な毒でね。まだ誰もこの毒のことを知らないのよ。それにね。」


イザベラは、小瓶の蓋を開けてブランの鼻に近づけた。


「どう? 匂いがする?」


ブランはクンクンと匂いを嗅いでみるが、何も感じない。


「匂いがしない。」


「でしょう? この薬はね。無色で無味無臭なの。だから、何かに混ぜて飲ませても分からないのよ。それにね、飲んでから効くまで一週間から二週間かかるの。体が弱って最後は心臓が止まるのよ。だから、誰もこの薬のせいだとは思わない。みーんな病気で死んだと思うわ。どう? やれるでしょ?」

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