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プロローグ
燃え盛る炎、鼻につく血の匂い。
血だらけの世界の中、空だけが黒く染まっている。
「信理様!ご無事でいられますか!?」
「…何かあったのか」
何かあったのか、なんて言わなくても本当は分かっていた。
血だらけの鎧、傷だらけの顔。鎧の大きさが、目の前の男の強さを表している。
「もう無理です!我が同士、確認しただけで百人は…」
―だから言ったんだ。
そんな哀れなことは止めておけ、と。
切れた唇から血が流れる。
「…っ一時退散だ」
「で、ですがー」「速くしろ!!」
「っ…は!」
―だって、仕方ないだろう。
今は、戦わなければ生きてゆけない。
綺麗事で済むならば、とうの昔に…
視界が、揺れる。
暗黒と赤が交差する世界から逃げ出す。
急げ、急げ…
外から中から、何もかもから聞こえる音。
これは私を守るのか、堕とすのか。
「― !」
最後に聞こえたのは赤く汚れたものだったはずなのに。
おかしいかな、随分と昔、闇に消えた光の音だった気がした。